昨日のつづきから~~~~~です
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「お炒さーん!」
と、朝から馬鹿でかい声をだしたこの馬鹿は、近藤勲くんである。
「精悍(せいかん)な顔をしたゴリラ」という形容がぴったりの、
繊細さとは無縁の風貌。なんの仁徳あってか、沖田くんや土方くんらを従える、
風紀委員長の座についている男でもある。
教室に入った近藤くんは、まっすぐ志村妙の席に駆け寄っていった。
ちなみにこの志村妙、苗字から察せられる通り、新八の姉である。
「いやいや、お妙さん。今朝も一段とお美しい。紺のセーラー服が純金のドレスのように見えますよ。だっはっは!」
本人的には百点満点の口説き文句を披露する近藤くん。
しかし当の妙はファッション雑誌
(ちなみに特集は「必殺テク徹底紹介!チョイ不良オヤジからいかに金を引き出すか」)
を眺めながら、冷ややかにこう返す。
「朝っぱらから迷惑なテンションね、近藤くん。それから、なんべんも言ってるけど、『お妙さん』なんて時代がかった呼び方やめてくれない?ここでは私たち、高校三年生なんだから」
いや、ここではって!と新八は顔を引きつらせる。
姉さん、いきなる設定グラつかせるような発言やめてくれよ。
いろんな無理は承知で、この銀魂高校3年Z組、話が進んでいくんだからさ。
「いや失敬失敬!俺も本誌の『銀魂』の癖が抜けなくてね、だっはっは!」
って、お前もかよ!本誌とか言うんじゃねえよ!
頭を抱える新八をよそに、近藤くんはさらに妙に話しかける。
「ま、確かに高校生で『お妙さん』はあんまりですよね。では、どうでしょう。ここは一つ『タエタエ』という呼び方を採用してみては?」
「冗談言わないで。ていうか、殺すわよ」
妙は雑誌から顔も上げず、そう返す。
「だめですか。では、『タエリン』というのはいかがでしょう?」
「栄養ドリンクの成分みたいね。ていうか、殺すわよ」
「これもお気に召しませんか。では『タエたん』というのは?こう甘えた感じで」
「この世の終わりね。ていうか、殺すわよ」
「ダメですか。ではいっそ『タエンティン・タエンティーノ』・・・・・・」
ここが妙の限界だった。
「しつこいんじゃああぁぁぁ!」
怒声とともに立ち上がり、妙は雑誌で近藤くんの頭をぶん殴った。
バシッではなく、バカッという硬質の音がしたのは、妙が雑誌の角を使ったからである。
「ちょっ!痛っ!角!死ぬから!紙も凶器になるから!ぐああっ!」
哀れ近藤くんは、教室に入って血祭りに上げられましたとさ。
しかしまあ、新八もいちいち同情はしない。
妙と近藤くんのこのバトル。毎朝似たようなことが行われているのだ。
かと思えば、静かに自分の世界に閉じこもってる人もZ組にはいて。
例えば、神楽ちゃんの前の席にいる長髪の男子生徒、桂小太郎くん。
彼は今、一人で机に向かってなにかを書いている。
気になったので、新八はきいてみた。
「ね、桂くん。なに書いてるの?」
クイと新八に顔を向けた桂くんは、
「これだ」
と言って、机に広げたノートを新八に見えるように両手で持った。―
つづく
まぁまたつぎもよろしく