こんにちは。お読みいただきありがとうございます。

“下書き”保存からの連続投稿で、しかも長いです。

 

世間では「5G」という言葉が独り歩きしている感がありますよね。つい先日、職場の人が「ついに5Gにしましたよ」と新しいスマホを見せてくれたのです。契約キャリアはauでしたが、彼曰く「auショップ以外ではなかなか5Gのマークが出てこない」と。そりゃ仕方ないだろうとも思いましたが、まだ見ぬ5Gの世界に対する期待をものすごく感じるのです。

 

でもね、よく考えてみると5Gは手段であって目的ではありません。この手段を使って手に入れる目的が現段階では今ひとつ見えてきません。つまり、5Gを使って何を実現するかが大切で、数GBの映像データをわずかな時間でダウンロードできるといわれても、その映像を観るためにかかる時間は変わりませんから、それなら4Gのストリーミング再生でいいのでは?と思ってしまいます。4Gの浸透とともにYouTubeや音楽のストリーミングサービスが台頭してきたように、私たちのこれまでの常識を覆すような、5Gでないと始まらない革新的な新しいサービスやメディアの出現が待ち望まれているのです。

 


念のために補足しておきます。一般的な仕事や勉強だったら最初に目的ありきで、それを達成するための手段を講じていくわけですが、最新のテクノロジーに関しては先に手段が確立されてその応用(目的)を後から考えるのが当たり前なのは承知しています。


 

さて、春日部市内で見つけた5G併設の基地局のことを先月書きましたが、ここで自分自身のおさらいと頭の中の整理も兼ねて、5G周波数や電波の割り当てなどについて書いてみます。こんなことに興味を持ちつつも根っからの文系でして、あくまでも趣味の延長なので細かい部分で間違っている部分があるかもしれません。

 

まず、5Gと呼ばれている通信方式が使用する周波数帯は、

  • 6GHz以下を使用する FR1
  • 24~52GHzを使用する FR2

の2つに分かれます。FR2は30GHzを越えると電波の波長がミリ単位になるので一般的にはまとめてミリ波と呼ばれます。対するFR1の中は3.6~4.1GHz、4.5~4.6GHzが各キャリアに200MHz(=0.2GHz)幅ないしは100MHz(=0.1GHz)幅が5G用として割り当てられており、これをsub6(サブシックス)と呼びます。1GHz=1000MHzです。たとえば3.6GHzは3600MHzです。

 

電波は目に見えませんが、電波には波長があります。波長の長さは

 

波長(m) = 300 ÷ 周波数(MHz)

 

の数式で算出できます。この数式はシンプルに丸暗記していいと思います。理解を深めるために触れておくと、300は電波や光が1秒間に進む距離の「30万km」を意味しており、30万kmを進む間に何回振幅するか(=周波数)、それを割ることでで割ることで、波1つ分の長さ(波長)が求められる仕組みです。イメージを板書してみるとこんな感じでしょうか。

(常日頃Excelを相当使い込んでいるのですが、SIN関数やPI関数は初めて使いました)

 

2Hzのときは波長が長い(15万km)

 

4Hzになると波長が短くなる(7.5万km)

 

上の数式で、なぜ30万kmが300になるのか?ですが、これも一応書いておきます。そんなことどうでもよいという方は少し読み飛ばしてください。

 

まず、この種の数式に数字を当てはめるときは、単位や桁をあらかじめ整理して揃えておく必要があります。

  • 求めたいのは波長の長さで単位はm(メートル)です
  • 30万km(300,000km)をメートルで表すと、300,000,000mです
  • 周波数はわかりやすくMHz(メガヘルツ)とします
  • 1MHz=1,000KHz=1,000,000Hzです
  • Hz(ヘルツ)は1秒間の振幅回数を表す単位です(1MHzは毎秒100万回の振幅)

これを前提として上の数式の桁を揃えるわけですが、分子と分母の桁からそれぞれゼロを6個消せばシンプルで計算しやすくなります。これで数式の分子は300になりますね。

 

上の数式にあてはめると、たとえば800MHzの電波は0.375m=37.5cmの波長であることがわかります。周波数がGHzのときはMHzに換算して計算します。楽天モバイルに4G用として割り当てられている1.7GHz帯を上の数式に当てはめると、300÷1700=0.176m、約17.6cmであることがわかります。電波は目に見えないのでイメージだけでOKです。要は周波数が上がると波長が短くなるのがわかりますね。さらに重要なポイントですが、電波(電磁波)と光(光線)は同じもので、周波数をどんどん上げていった延長線上に光があり、その波長は単位がナノメートルというとてつもなく短いものです。我々が使う電波も周波数が上がっていくと、だんだんと光に似た性質を帯びて直進性が上がり、途中に遮るものがあるとその向こう側に届きにくくなります。外が明るくても壁で遮られた屋内は暗くなるのと同じですね。土砂降りの雨の日にBS放送を見ていると、ブロックノイズが入って映像を正しく復調できなくなったりしますが、あれも衛星からの電波が雲や雨粒に遮られてしまうからです。よく、プラチナバンドだから屋内でも電波が入りやすいなどといわれますが、800MHz前後の周波数は比較的遮蔽物を迂回して届きやすいことを表しています。1.7GHzと比べるとこの点でいくらか有利なのは間違いありません。

 

 

これはauの5Gエリアマップのスクリーンショットでして、私の住む川口市内の一部です。中心のピンク色の部分がsub6による5Gのエリアで、黄緑色のサークルは春以降にミリ波でサービスエリアになる予定だそうです。この場所はときどき通るのですが、住宅街で見られる10m強の鋼管柱に5Gのアンテナが併設されています。

 

ちょっと遠景ですがこれが基地局

 

すぐ南西に芝川という川が流れており、対岸のごく一部もエリアとして塗られていますが、ここまで直線距離で150mほどです。エリアマップはシミュレーターで作成されたものだと思われますが、現状ではこの程度の見通せる範囲しかカバーできないようです。

 

少し脱線しますが、電波の届く範囲を広げるには単純に電波の出力を上げる方法が浮かびます。たとえば出力10Wの基地局を50Wに上げる方法です。この例だと飛距離が5倍に伸びそうな感じがしますが、5倍になるのは電波の届く面積です。上のエリアマップの例で考えると、黄緑色のサークルの面積が5倍です。サークルの面積は〔半径〕×〔半径〕×πで求められるので、サークルの半径はルート5(=5の平方根)、つまり2.236倍にしかなりません。

 

本題に戻りますが、まるで往年のPHSの10mW基地局を思い出します。この規模で日本全国をくまなくエリア化していこうというのは難しい話で、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの各社は、自社に割り当てられている4G用の複数の周波数帯の中から、一部を5Gに転用してエリア化する計画を進めているそうです。楽天モバイルも4G用として唯一の割り当てられている1.7GHz帯(Band3)を5Gに転用することは不可能ではありませんが、そもそもの帯域幅が40MHz(送受信で各20MHz)しかないのでここを5Gと共用するのはどう考えても無理があります。複数の周波数帯の割り当てがあれば、それらを同時使って速度を上げるキャリアアグリゲーション(CA)と呼ばれる方法が使えます。楽天モバイルがプラチナバンドの割り当てを切望している理由の一つはこれだと思われます。

 

4G用帯域の一部を5Gに“転用”する作戦は面での展開は有利になりますが、5G本来の通信速度が期待できません。これは割り当てられている帯域幅が狭いためです。たとえばですが、4GでBand28と呼ばれる700MHz帯は758MHz~803MHz(下り)の45MHzの帯域を指します。この45MHzの幅を、ここでわかりやすく1MHzごとに45チャネルに区切って、1チャネルあたり10Mbpsの通信ができるものと仮定します(くれぐれも数字は出鱈目です)。45チャネルを全部束ねるとこの帯域で10Mbps×45ch=450Mbpsの最大速度が期待できる計算になります。一方の3.7GHz帯ですが、auの場合、割当てられた帯域は合計200MHzあります。上りと下りに分かれるので純粋には100MHzですが、前述の計算を当てはめると10Mbps×100ch=1000Mbps=1Gbpsの速度に上がります。ミリ波になると帯域はさらに大きくなるので通信速度の上限も上がります。これまで使用されてこなかった高い周波数は割り当てられる帯域幅も広がるので速度面では有利ですが、その一方で見通せない場所では飛距離が稼げなくなります。

 

冒頭でも書いたように、5Gに関してはその「目的」がまだ見えてこないのでしばらくは様子見が続きそうですが、ひと言で「5G対応」と謳われていても、その端末が

  • 4G周波数の転用を含むsub6だけの対応なのか?
  • ミリ波にも対応するのか?

を確認した上で、さらに使おうとしている場所が

  • sub6によるサービスエリアなのか?
  • ミリ波によるサービスエリアなのか?

という点にも注意していく必要がありますね。

 

まだしばらく先のことでしょうが、5Gならではの新しいサービスの出現に期待したいと思います。