皆様、お久しゅうございます。
本当に心配をおかけしました。
すみませんでした。
励ましとご理解に支えられました。
感謝しております。
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さて診察の結果は「細菌は、ほぼ撲滅された」だった。
細菌感染に当たる角膜上の白いモヤは最初を100とすると5くらいまで小さくなっていた。それでも医療写真に点として映ってしまうくらいには残っていた。
「惜しい…」
私と先生がハモった。
だが、もう日常生活には支障はない。
変わらず1時間おきの点眼は厳命されたが、それを行えば次の診察日には綺麗な角膜が写真に映るだろうと、私と先生は目を見交わして頷いた。
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そして何と言っても本日はバイト初日である。某官公庁のデータ入力お手伝い。
これに向けて回復に邁進したと言っても過言ではない。
3月は泣く子も黙るお役所仕事の締め月だ。元々そこにサポートバイトに行っている知人から「身元がしっかりしている猫の手」として引っ張り出された。
先日、眼帯姿で見学と手続きに伺った際は相手に驚かれた。
そりゃそうだ、申し訳ない。
私は多くの書類にサインと捺印をした。
そこに明記された「3月のみ」「ひたすらデータ入力&チェック」「そしてサヨナラ」「だが所属している間は官公庁の一員だ。自覚を求める」という、お役所ならではのサッパリ感が非常に気に入った。
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過去いくつかバイトを経験し、鬱が私に残したトラウマとして
「期待されることへの恐怖」があると思う。
「良い人が来てくれた」(この人にやらせて自分はやっとラクできる)
「さすがだね、うまいね、飲み込み早いね」(どんどん力をつけてコッチの仕事を肩代わりしてくれ)
「頑張ってね」(早く責任を押しつけたい)
もちろん後半は私の妄想であるし、全てのバイト先で好感をもたれていた訳ではない。
だが、生き抜くのが大変な世の中、誰もが心の底で待望しているのは「素晴らしく仕事ができるヒーローの登場 →→→→→ そして平凡な自分は人間らしく穏やかに生きる」ではあるまいか。
ヒーローはヒーローだから、それで心も体も平気だという都合のいい文脈を信じて。
過去にはスティーブ・ジョブズだの本田宗一郎だの、今なら孫正義だの、スーパーマンは実在している。
それなら、自分をラクにしてくれるくらいのスーパーパワーを持つ人が、どこかに居るはず。
無意識の底、ヘドロで象られた人形のようにそんなおぞましい餓鬼が蠢くのが見える。
みんな夢見ていないか。
この世の何処かには救世主がいると。
だが無意識でも夢見なければ心折れそうなほど、皆、苦しいのだろうな……
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どんなに温かい励ましでも上記のように「さては貴様! 私を身代わりにしてラクになる気だな!」と身構えるクセが抜けない。顔には出さないが。
万が一にもそれが真実で再びハメられるようだったら、もうこの世に未練なく消えてやろうと思うくらいには、私は人々の無意識の甘えを唾棄している。
どんなに善良な人でも奥に持ちうる資質なだけに、心の底まで凍るほど恐怖している。
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いくばくかの社会的真実を含むとはいえ、私のこれは唯のトラウマ的反射だ。
だから某官公庁の、官公庁ゆえの涼しい無関心に私は少し感動している。
もう誰が苦しんでいたとしても私が血肉を削って差し出す必要はない、ないどころか越権行為ですらある。
何と自由な!
久々に気持ちよく働けそうだ。