アリカンテ1日目。
バレンシアよりも些か静かな町の雰囲気についてすぐに安心感を得た。
バスを降りてすぐのインフォメーションで地図を貰い、係の人に質問をしようとすると、
「ちょっと待って。一つの質問につき1ユーロね。」と笑顔で一言。
しまった。もっと調べて来るべきだった!
と少し後悔するも時すでに遅く、仕方がなくいくつか質問をして、お金を払うそぶりをすると「ははは、冗談だよ。まさか信じるとは思わなかった。いい旅をしてね。」
そう言って僕を送り出してくれた。
こんな些細なことであっても僕の心からは一切の不安がなくなった。
簡単な言葉だけれども、旅に関わる人々の親切な気持ちを頂けたことは、僕にとってはとても大きかった。
中央地区まで歩いて行くと、そこにもインフォメーションが。
ユースホステルを探さずに、行きあたりばったりで来た僕にとっては非常にありがたい巡り合わせであったため、すぐに駆け込む。
綺麗なお姉さんが「Hola!」とあいさつ。
普通のことだからこそ、よく知らない土地で掛けてもらうあいさつには新鮮さがあった。
「ホテルを探しているのだが、安い所はないか?」
ぶっきらぼうなスペイン語でそう尋ねると、笑顔でいくつかのパンフレットを持ちだして来て、熱心に説明をしてくれた。
観光客慣れをしているとは言え、こうも真剣に答えが返ってくるとは思っていなかったので、本心から「ありがとう」の言葉が飛び出したような気がする。
決して無理な作り笑いで会話をせず、こちらが話しやすい雰囲気を作ってくれた彼女に感謝をしたい。今後もお世話になるかもしれないですしね。
いくつか厳選して値段を考えた末に、比較的にバスターミナルからも中心街からも近いホテルに決め、アリカンテの街を散歩気分で向かうこと10分。
ホテルに着くと、フロントの笑顔もこちらを安心させるような柔らかい表情で、ここを選んで正解だと一瞬で思わせた。
値段の割に朝食付きな上に、ホテル内にはBARもあるという。
なんとサービスのよいことか。
感心しながら話を進めていくと、途中から僕の今回の目的でもあるエルクレスCFの話に移り変わった。
フロントの若いお兄さんは、サッカーをほとんど見ないのだと言う。
しかし、スタジアムまでの行き方やバスの番号まで親切に調べて教えてきてくれた。
結果的にそのバスは違う方面行きだったのだが、その気持ちが嬉しかったので、試合を見て帰って来た時には黙っておいた。
「楽しかったよ!なんとかスタジアムにも着くことが出来たから、君に感謝するよ。」
そう言うと彼は嬉しそうに「こちらこそ。」と返してくれた。
アリカンテのこの人の温かさはなんなのだろうか?
普段バレンシアの街を歩いていると、日に2、3度は言われる‘Chino!(中国人)’と言う、相手をバカにした表現も一度も耳にしなかった。
彼らのその言葉はスペインで手に職を持っている中国人に向けての当てつけや僻みであるのだが、僕らに対しては十分な程に悪口なのだ。
中国人をけなすわけではないが、やはりイラっとしてしまうのが人間。
もう少し心の広い大人になりたいのだが、中々20代の若造には難しいことである。
話しを戻すと、人が温かいのは何故なのか。
単純に小さな土地で、人と人との繋がりを大切にする心が身についているのだろうと、僕は解釈をした。
中国人を全く見なかったということから差別をする対象がほとんどいないからという理由も出てくるだろうが、僕は前者の理由を推したい。
普段の僕ならそこまで気にかける様なことはしないので、アリカンテという街に興味を持ったのだな。と自分の中で仮定を作ってみた。
残り3日間、帰る日を含めればまだ4日間ある。
明日は街の散策をしながら、色々な人と触れ合っていければなぁと思う。
この旅が、有意義になるのは僕次第。
今日は、この街と出会えたことに感謝。
それでは明日、またお会いしましょう。