■古書も新刊も漫画も並ぶ

 今年は国際読書年。出版不況が長引く中、今までの書店とは全く違う「顔が見える本屋」で、本が売れている。東京・丸の内の丸善本店内4階の一角を占める「松丸本舗」。丸善が昨年10月、創業140周年を記念し、編集工学研究所所長の松岡正剛さんにプロデュースを依頼。段違いの本棚に横積みの本が混じり、新刊と古書と漫画が隣り合う、松岡さんの存在感と遊び心があふれる本棚だ。同本舗の客単価は通常の書店の倍額、3千円を超えるという。(飯塚友子)

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 松丸本舗に一歩入ると、まず戸惑う。中規模書店程度の215平方メートル5万冊の空間だが、新刊、ノンフィクション…などこれまでの書店のジャンル分けは一切無し。著者別の棚もなく、あるのは読書家で知られる松岡さんの、頭脳を可視化したような「リボンの恋」「過激なエロス」など独特のテーマ分けに従い連なる本群だ。古書も7%程度混じり、しかも本棚は日々、変化を遂げる。「ビジネス街のど真ん中で、いたずらしてやろうと思った」と話す松岡さんには、来場者の戸惑いこそが狙いだ。

 松丸の基本は、中央にあるらせん状の本棚「本殿」の2万冊。松岡さんの書評ブログ「千夜千冊」で紹介された本と、そこから派生する本が並び、所々に「キーブック」のカバーが付いた必読書も見える。その周囲を、季節ごとに変化する特集本(現在のテーマは「日本が変わる」)1万6千冊が囲み、さらに作家、松本清張の書棚を再現したコーナーも面白い。

 全体を貫くのは、松岡さんの「本はもっと遊びたがっている」との考え。「出版業界は『書物=教養』と本をまつり上げ過ぎた。でもいい本ばかりではないし、トイレや台所に本があっていい」。樋口一葉の「たけくらべ」と、萩尾望都(もと)の名作漫画「ポーの一族」が同じ棚に並ぶ独特の空間を回遊するうち、興味があらぬ方向に向かい、意外な本を手に取ってしまう。実際、壹岐(いき)直也丸の内本店店長も「松丸書店はお客さまの滞在時間が長い。客単価も通常の書店の倍の3千円超。ネット書店ではない、リアルさを表現したかった」と手応えを話す。

 だが個性的な本棚作りには手間もかかる。準備期間に1年以上をかけ、30万冊近いストック本から、丸善と松岡さん主宰の編集工学研究所のスタッフ計8人が日々、本棚のメンテナンスに努める。松岡さんも毎週、閉店後に本棚をチェック。その痕跡が本棚の落書きや、手書きの推薦本掲示コーナーに現れている。「本とユーザーには実はすごく距離がある。本棚を面白く演出するアイデアはまだまだある」(松岡さん)。画一的だった書店に、一石を投じる松丸の試み。3年間の営業予定だが、ユーザーの反応がいいことから、丸善他店での展開も視野に入っているという。

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