先日買ったミニひまわりが、なんだか元気がない。
水もあげているし、日も当てているのに、しょんぼりしてる。
その姿を見ていたら、ふと思い出した。
オーストリアに引っ越して3ヶ月ほど経った頃のこと。
なんでもない瞬間に、ぽろっと涙が出る日が、5日間くらい続いた。
「私、おかしくなっちゃったのかな?」と本気で思った。
その頃、長男は4歳になる少し前で、次男は1歳半。
目を赤くした私を、ふしぎそうに見つめながらも、いつものように遊び続けていた。
体重も減っていて、季節はまだ春が来る前の3月。心の中はどんよりと暗かった。
日本で長男を出産して、これから家での生活が始まろうとしていたあの頃。
長男を抱っこしながら、勝手に涙があふれてきた。
可愛くてしかたがなかった。
この子が生まれてきてくれたことが、ただただ嬉しくて。
でも同時に、不安も押し寄せてきた。
「いじめられたりしないかな」
「これからいろんな苦労があるのかな」
私たちは国際結婚で、婚姻届を出すだけでも時間がかかった。
この子もいつか、そういう“壁”にぶつかるんだろうか――。
そう思ったらまた、ぽろぽろと涙がこぼれた。
これが“産後うつ”というものだったのかもしれない。
でも、あのときの涙は、どちらかというと嬉しさの涙の方が強かった。
だから、自分の中では「たいしたことじゃない」と思えていた。
嬉しさのなかで流れた産後の涙と、引っ越し後の涙。まったく違っていた。
夫には普段から「嘘をつかないで」と言われている。その嘘とは自分の気持ちに嘘をつかないで、がまんしないでと。なので、夫に話すことで救われた。そのときのずーんとしてた感情が、なんだかまた今、戻ってきているような気がする。
ここに「住む」って、思っていた以上に簡単なことじゃなかった。
オーストリアに来てから、私は何度も「私って性格悪いな」と思った。
人との関わりが、ときどきしんどい。最初は良かった。何もかも新鮮だったから。
義実家の行事――クリスマス、大晦日、オスター、母の日、誕生日…。
それに加えて、突然のお誘い。その他、もろもろと。
最近は、私だけ行かない選択をすることも増えてきた。
夫は「自分の気持ちで決めていいよ。行きたいか、行きたくないか、それだけで判断して。理由はなくていい」と言ってくれる。
それだけでも、ものすごく救われている。
引っ越してきた当初、たくさんの物をもらった。
絨毯、椅子、棚、三輪車……。
嬉しいものもあれば、「なぜこれを?」と戸惑ったものも正直あった。
今は、使わないものは倉庫に置いてある。
今では、もらい物との付き合い方も少しずつ上手になった。
それでも、新しい家具を自分で選んで、部屋に置いたときは、嬉しい反面、
「ああ、本当にここに住むんだ」と、覚悟を突きつけられたような気がした。
もっと早くドイツ語をちゃんと勉強しておけばよかった。
もっと心の準備ができていたらよかった。
過去の自分に「もう少しだけ頑張っておこうよ」と声をかけたくなる。
義母に助けてもらって、子どもをクリニックに連れて行ってもらったこともある。
あのときは、「情けないなぁ、私って」と思った。
手続きも夫に頼りきりで、ときには義母にも頼る日々。私は何もできなくて、
「私は、何が楽しくてここにいるんだ?」と、ふと思ってしまったこともあった。
でも、そんな時期を越えて、初めての春が来た。
町には綺麗な花が咲き始め、私の心も少しずつ穏やかになっていった。
そして、夏、冬、また春。
気づけば、オーストリアで迎える2回目の夏。
ミニひまわりはまだ元気がないけれど、
私の心には、ちゃんと根が張り始めている気がする。
よし、今日は土を買いに行こう。
ひまわりと一緒に、少しずつ元気になれたらいいな。








