これは過去の話・・・・・・・わがやの場合、夫が定年退職してからアスペルガーぽいとわかった。 でも、現役時代にわかっていたらどうだったろうと思うことがある。

 

 

 一般的にアスペルガー傾向が強すぎると、コミュニケーションが難しいと言われる。 夫もたぶんそんなことから、結婚してから3回ほど、会社をやめたいとわたしに言ったことがある。 妻に相談するほどだから 「本気」 だったのだろう。

 

 

 

 

 しかし、「知らぬがほとけ」 とはよく言ったものだ。 知らないから、何も気にせずに言いたいことが言える。 夫がアスペルガーとは知らずに相談されたわたしは、どうしたか・・・・。

 

 

 

 最初は確か結婚してまもないころ、いや2、3年たっていたか、「独立したい」・・・と言った。 上司が悪い、会社が悪いからと・・・。

意見を聞かれたわたしは、月並みなことを言った。 「いくら有能であっても、ただの一個人が店を構えて人から信頼されるのは至難の業。 いまの会社の名前というものへの信頼は、ばかにできないと思う。」 

 

 

 後に夫は 「あの時の言葉はグサッと来た」 と言っている。 わたしは保守的な性格から正直に言っただけで、彼に説教するつもりもなかった。・・・・・そのころのわたしは、夫を心から尊敬していたし、誰からも信頼されるに違いない、万能人間だと信じ込んでいたのだから。 

 

 

 でも、アスペルガーな夫は、当時から職場の人間関係に悩んでいたらしいと、これはだいぶ後に知った。 わたしが口にした「信頼」という言葉に、自分なりにはっと思い当たることがあったのかもしれない。・・・・・・・・彼がアスペルガーと知っていたら、言えなかったと思う。

 

 

 それとも何か? アスペルガーさんにとっては、思ったこともない新しい発想だったんだろうか・・・・・・?

 

 

 

 

 

 2回目は子供が4人生まれ、下3人が小学生で少年野球をしていたころだと思う。 

 

 そのころ夫は、わたしのことを日ごろボロクソに、ボケだのカスだの言っていたのだけど、わたしは彼のことを 「金のなる木」 だと思って耐えていた。 ADHDの診断も受けていて、自分だけが苦しい思いをしてると感じていたころ・・・。

 

 

 

 

 ある日、「俺は会社をやめるから、あんたも月10万くらい働いて稼いでくれないか?」というので

 

 

「(会社をやめたいだって? はあ? ふざけんな) 何ですって? あなたがいつもいうように、家でこれだけ役に立たないわたしが、社会に出て、そんなお給料がもらえるとでも思うんですか?  妻と子供4人を路頭に迷わすのですか?  ・・・・・・・わたしだってこんなんじゃなくて、あなたみたいに仕事ができたら、どんなことをしたって続けますよ。  結婚して子供4人も作っておいて、能力が発揮できる会社にいながら、希望の部署につけないなんてのは、ただの贅沢ですよ!」

 

 

 

・・・・・と、ひごろの恨みも手伝って、絶対働かない宣言をした。 夫はしばらく悩んでいたけど、子供が一生懸命に野球をしている姿を見て、自分も逃げてはいけないと思ったようだ。 ・・・・・・・・・・わたしも、彼のアスペルガーゆえの苦しみをちっともわかってなかったからこそ、あんなことが言えたんだなあ。

 

 

 おやおや、わたしの罪の告白みたいになってきました。そういえば3回目はもっとひどかったです。つづきます。