例のクリエイター男に翻弄される私。
急激な温度変化は、必ず揺り戻しが来るものだと知ってはいたが。
あまりに早い展開についてゆけず。
この男との一部始終を全て知っている後輩ちゃんと、ある晩飲んでいた。
この男との一部始終を、報告させられていた。
そのとき。彼女が「私にも、誰か紹介してくださいってお願いしてくださいよー」
と言い出したので。
そんなものは、自分で頼めと、私の携帯を手渡した。
電話が通じないと、電話を戻されたので。
じゃ、メールしたら、とアドレスを入れ、真っ白な新規メールの画面を出して手渡した。
酔っていた彼女の状態に気づくべきだったのだが。時既に遅かった。
着信に気づいた男から、電話がかかってくる。
「今日は撮影中だから、行けないし、迎えにも行けないよ、ごめんね」
それにぶーたれる私を見た後輩が、どうも彼にメールを書いたらしかった。
特に気に留めず、飲んでカラオケをして、自宅のベッドに寝ていた朝7時。
メールの音で目が覚めた。
彼からのメール。開けてみると、異常に長い。内容を見て、目を疑った。
思わずそこに居直り正座し、メールをScrollすると。
「きみのことは大好だよ。でも今はまだ、答えを出すには時期尚早。
気持ちは嬉しいけど。もう少し2人で時間を過ごしてから考えたかった。
彼女と付き合う前に再会していたら、とか色々考えちゃうけれど、
今は前の結婚で痛手もあるし彼女を裏切れない。ごめんなさい。」
要は、告白もしていないのに。一方的に、突然ふられたわけである。
一方的に口説かれていたのにも関わらず。
何も、答えていないのに。
全く状況がつかめず、呆然。
ふと気づき、送信メールを見ると。
あった。
後輩が送ったメール。
「今すぐ、来てもうちょっと、ちゃんと私と向き合ってくれたら嬉しいな。 ちょっと、切ないです
」
おい!こら!!!!
ありえない展開だが、自己管理の領域。もう、歯車は動き出してしまったのだった。
脱力し、後輩にも彼にもコンタクトをする気も失せる。
昼過ぎ、後輩から電話。
「昨日は、すみませんでした!かなり激しく酔って覚えてませんでしたが、帰れましたか?」
かるーく、「ふられた」と笑って言ってみると。
彼に、メールしたのは私だと弁明します!と言い出す。
それは、プライド君である彼にとってCriticalすぎるし、恥をかかせるだけなので。と断るが
彼女はどうも、メールをしたらしい。
その後、何度も彼からメールが入った。
「昨日の22:36のメールは、彼女?それともきみ??」
「あれはキミの本心なの?それとも酔っていたの??」
全て放置。
私はこの夜、コンサートだったため。電話が通じない環境にいた。
表に出ると、メールが来つづけ着信があった。
どのように対処するか考えつつ、恵比寿にてイタリアンとワインを堪能。
酔った勢いで、メールを入れた。
「あれは、彼女のいたずら。でもそれは、きっと運命のいたずらでしょう。」
電話が鳴った。無防備に出てしまった。
「本心だったかもしれないし、そうじゃないかもしれない。もはや判断することはできないよ。
そもそも、私がハートの絵文字とか使うと思う?そんなこと、言うと思う???」
「このまま放置し終わりにしようと思ったけれど、それも悲しいでしょ。
ほんとはね、メールじゃなくて会って話したかったけれどね。」そう告げると
彼は「少し、一人で考えさせて。でも、ちょっと嬉しかったんだよ。」
そう言って、今から家に帰ると電話を切った。ちょっと前なら、間違いなく迎えに来た状況で。
ひとりでかんがえる
それは、もう答えは決まっているのだ。
どうやって終結するか、それを考えるだけなのだ。
自分が乱されないように。自分の生活を護るために。何かを、失わないために。
数日後。やはり想像どおりのメールが来た。
「しばらく、会うのはやめよう。3ヶ月経ったら、すべていい思い出になるよ。」
「タバコみたいなもので。辞めちゃえばなんてこと無いんだよ。」
「お互い落ち着いたら、また映画でも観に行こう」
思ったとおりの展開。
こうなると、突然いとおしくなってしまう私の弱さ。
突きつけられた別れに直面することが出来ない弱さ。
「メールで終わるのも、なんだか味気ないし無粋なので。30分会って話さない?」と投げてみた。
「会いたくて会いたくて仕方ないんだけど、今会うのは、キミのためにならないよ」
「キミは言ってた。不器用で真っ直ぐだから。だからそれに答えなきゃ、と思ったんだよ。」
なんて、勝手な男。
そう送りつけたメールに重ねて、「今どこ?何してるの??」そう言ってくる狡さ。
それでも、それに答えてしまう、私の弱さ。
会って、メールの件に関しては特に何も話さず。触れることさえなく。
いつもと同じように飲んで話して、いつもと同じように品川駅で別れた。
前夜、携帯から彼のデータを消去した。そして、プライド君に最後の一言。それを告げた。
彼は、「そうなんだ。そっか、消したんだね。」それだけ言った。
そのまま背を向けて、振り返らずにエスカレーターを上った。
また、台風直撃。残ったのは、壊れた気持ちだけ。
ピンクのエッセンスは、新しいおもちゃは。あっという間に壊れてしまった。
やっぱり、簡単に手に入るものはダメなんだ。もうちょっと、楽しく遊びたかっただけのに。
ん?本当にそう??思わず、自分が深く入り込みすぎたんじゃない??
また。入梅と同時に私の生活もグレーの泣きそうな曇り空になっただけ。