んー非常に奇妙な面接であった。


というのも、そもそもの始まりが間違っていることは否めない。

あまり興味の無いオファーであったが、業界ではちょっと知れた、名物社長直々の面接と聞き。

その方とお話をしたくて、来訪。


異業種からの転向。女性ながらかなりの論理派。そして、ハードコア。

しかしながら、ビジネスはかなり好調。イメージを崩さずして、市場拡大を続ける会社である。

まあ、この業界ではそんなことは稀有なので、私の耳にすら届く話題の方なのだ。


まずはがっつりと、突っ込まれる。


あのぉ、本当に私を採用する意思で、会ってらっしゃいますか?

思わず喉元までその言葉が出掛かる。


いわゆる、圧迫面接である。


「一体今までの会社の、何が気に入らないわけ?」

「絶対、辞めない方がいいキャリアばっかり、なぜ捨てるの?」

「あなた、こらえ性が無いわけ?」


いや、ほんとにぐうの音も出なくなりそうになりましたが。

先方にお話をさせる、水向け作戦に変更。

そこに、ツボを見つけ、話題を拡充する突込み。


すると、水を得たかのように諸々の経験、苦労、今のビジネスの話をしてくださった。

かなり、忌憚なく。


そして、最後には「老婆心ながら」と言い添え、私の今後の方向性に関し、助言を下さった。

それはまるで、姉か会社の先輩か、キャリアコンサルタントのような内容。


「奇しくも、私はあなたと同じようなキャリアの積み立て方をした。通った道が似ているから、分かるの」

「あなたに来てもらったらいいと思うけれど、あなたも楽しいと思うけれど。」

「でも、あなたの長いキャリアにおいて、それがいいとは言えないように思う。もっと生きるステージがある」

「もっと、図太く狡猾に。得られるものは藁でも掴む思いで。1mmでも多くもぎ取って。」


正直に言ってしまえば、オファーを頂いても、彼女と共に働くことは無いと思う。

この反応、先方も私を採用する気持ちがあるのかどうかは分からない。

ただ、その社長直々の面接は、かなり異例とのこと。そのチャンスをいただけたことは、幸運だった。


思いっきり落としておいて、喰い付いて来たら、あたたかい。ハードだけど熱いコアに触れました。


でも、今日の1時間は、今の彷徨える私にとってマイルストーンになったことは間違いない。

いつか、その話を。その後の話をお伝えしたいと思いつつ。

懐の広い女性だと感服。ちょっぴり怖くてかなり素敵な女史に見送られ、オフィスを後にした。


縁とは、奇なるものである。