お気づきかもしれませんが。

分かりにくいとのご指摘を頂いたので

今回、どんなことがあったのか。ということを記録にする”NY恋物語"

と言う、Themeを加えました。おそらく、今週はこの旅日記の更新+加筆で終わることと思います。


前回の渡米時には、まだ彼のことは個別のトピックスとしては取り上げませんでした。

だって。それはきっと、ただ短い。ただ旅の間の恋なのだと思っていたから。

彼が私を求めたのは。きっとおそらく、毎年何度もDCを訪れる女の子たちにするのと同じ

DCおもてなし観光ツアーの、Option-C程度なのだと思ったから。信じたら、求めたら、傷つくと思っていた。

傷つくことの苦しさ、失うことの悲しさを知った三十路女の最大限の抵抗。

舞い上がっては、信じてはいけないと、自制のうちに無きものにしようと思っていたから。


いつかきっと。このThemeは。儚い恋のところに吸収されてゆく日が来るのだと思います。

いや、そうでなくてはいけません。



一緒に12日間生活をして。

海岸できらきらした貝殻を拾うように、たくさん彼のことを見つけた。嬉しかった。


喧嘩しても仲が良くても。毎日目が覚めると、私の小さな背中越しに、ぴったりとそっと抱き合い。

繋いだ手のむこうに、首筋に感じる彼の体温と寝息。手が届く、触れられる距離に彼を見つける幸せ。

頭を傾ければ、そこに彼の顔。愛を語り私を呼び、幾度となく重ねたその唇。

そのあたたかいからだ。穏やかな鼓動と、あたまの芯を痺らせるような汗のにおい。

そう。本当はそれだけで、それが何よりいちばんの、幸せであったことを。失って始めて気づく。

少し雑音の混じった、タイムラグのある電話を握り締め寝た夜。起きた朝。

あれほどまでに、狂おしく求めたその実像が、そこにはあった。

それだけ、ただそれだけで、私は歓喜の中に身を投じられると思っていたのだった。その、はずだった。


愛すると言うことは、与えること。それは同時に、求め奪うことだったのかもしれない。

1ピースでも多く。1gでも多く。彼を知り、彼を私の中に蓄えておきたかった。

また来ると知っている離れる時間に備えたくて、焦ったのだ。強欲になったのだと思う。好きだから。



彼の好きな服。

REISS。偶然にも同じStitchy'sのジーンズ。

同じtheoryのニット。

彼の癖は、blackberryのケースをカチカチまわすこと。


照れ屋の彼が好むのは、手をつなぐこと。

正面ではなく、隣りに座ること。だから、カウンター席を好むこと。

車や電車、飛行機で手をつなぐこと。

私が、彼の脚の上に脚を重ねること。


たくさんの、彼の日常習慣。

一度の目覚ましで起きられないこと。30分も前から目覚ましはけたたましく鳴り。

blackberryを手に持ったまま。スヌーズを繰り返さないと起きられない。

時間ギリギリになると、じゃれあいたくなること。

Schwarzkopfの黄色いgot2beジェルを、恐ろしく大量に消費すること。

3日で1本とふざけて言ったが、多分週1ペース。

あまり髭が伸びないこと。

寝る前にワインを音も立てず飲むこと。

ベーグルとバターが大好きなこと。

バスマットを濡らすこと。

寝る時は全ての着衣を脱がないと落ち着かないこと。

毎朝食後。そして走った後に飲むプロテインドリンク。アミノ酸。

本をたくさん読むこと。1度に3冊は並行して読むことも気づいた。


洋服は脱ぎっぱなしで、脱いだままの形で床に散乱させるのが得意なこと。

靴下に穴があいていること。

意外に、料理が好きなこと。

きちんとマットを引いて食事をすること。

小銭をいろんなところに出しては置いておくこと。

自宅では、Quarterを玄関階段上の手摺に5枚ずつ積んで大量に並べること。

旅が好きなこと。

チェ・ゲバラが好きなこと。

お醤油を、まるでお屠蘇のようにそっとテイスティングすること。

ちょっとうっかり屋なところ。

仕事のことを考える時、手を口に当て没頭すること。

ロマンティックだと思っていたけれど、アメリカ人的「ごめんなさい」を言わず、経営者的ロジカルな側面。

朝はご機嫌が悪いこと。

前の彼女のこと。


たくさん、みつけたことがある。


でも、それらの中で最後に見つけたのは。

そんな彼の日常には、わたしの居場所はない。ということなのかもしれない。

アシスタント的な事務処理をしても、アシスタントにもなれない自分自身。彼の一部には入れず。


1月末に彼と会ってから。こんなに話をしないのも、メールが来ないのもはじめて。

おそらくは間違いなく、今より忙しかった2月3月。

あんなに毎日何度も電話をしたのに。離れていても、彼の日常が手にとるようにわかったのに。


ぽっかりと私の中に空いた穴。

彼の思い出を1つずつ、そこから出さなくてはいけない。

わたしはもっともっと、これからからっぽになってゆくのだろうと思った。


久々に、また人を愛することができるかもしれないとおもったのは、うたかたの夢。虹のようなもの。


たぶん、彼も失うのはこわかったのだと思う。お互いにもう、誰かを。自分を失うのが怖かった。

私たちはただ、指の間から音も無く毀れてゆく幸せと愛情を止めることができず

ただ、その冷えてゆく温度を少しでも長く留めていたくて

他になす術が無く、抱き合うことでしか満たされなかったのかもしれない。

それが、もっとからっぽであることを知りながら。


いちばん悲しいのは。

何の反応も無いままに。それでも、愛しつづけてしまう自分自身。

離れてしまえば。封印してしまえば。全てから解放されると知りながら。それでも、好きなのだ。

もはや応えてはくれず、向き合ってももらえぬと知りながら、それでも彼を愛してしまう自分の弱さ。

見つけたことは、全てそのまま失ったもの。それでも、愛することを止められない。

もはや相手にぶつけることも、表意すら許されぬことを知りながら。自分が納得するまでは抜け出せぬ苦境。

自業自得。


届かなくても、愛し続ける辛さは痛いほど知っている。

でも、遣り遂げなくても、辞める辛さも知る必要があるのだろう。


無理に離れることも、諦めることもしなくていいと知っている。自らが「もう、やめよう」と思うまでは。

でも、愛しているからこそ。手放さなくてはいけない時もあるのだろう。

大好きだから、これ以上傷つけたくも、傷つきたくも無いから。

彼を、自らをこの檻の中から解放してあげなくてはならない。


さよなら。大好きな人。