Chap.2 DAY13-14: 14, MAR, 2007 TOKYO



既にシアトルから1356ml。残り3509ml。1/3。525ml/hなので、およそ7時間か。

アンカレッジ上空。ラウンジにてバドワイザー3本、機内にてワイン2本。
赤い液体を口に運ぶたび、彼の美しい身のこなしを想わずにはいられない。


そう。わたしは、仕草の美しい男に弱いのだ。

ワインを音もなくすする飲み方。どんなに酔っていても、ガラスやメタルのテーブルに

全く音を立てずグラスを置く、大きな手のmagicのように洗練された、優しい手付き。

ワインも手品のように。一滴も溢さず注ぎ、ナプキンで拭う仕草。
いかにも育ちがよいのだと語るその所作は。すべて無駄がなく、優雅で美しい。


過去に浸るせいだろうか。まったく、酔えない。ずっと寝不足なのに、眠れぬ白夜。


機内はフィリピンへ向かう人がほとんど。
映画の観られないおばあちゃまに不親切すぎるCA。
見かねてリクエストのbeauty and beastを出してあげる。

やはりわたしはポリかラテンに見えるのか。たぶん、身内と思われているに違いない。

ティファナの時同様、周囲がやたらフレンドリー。笑

機内で、空港で。行き交う人に、美しいと何度も言って頂いた。そちらの系統なんです。

しかし、それでも気持ちは晴れず。

顔を見るたびに、「今日も可愛いよ。キミは、何でそんなに可愛いんだろう」

そう言って憚らなかった、かつての記憶の中だけの彼を想い出し切なくなるだけ。
機中映画のラブシーンは、かつての日々をフラッシュバック。

呆然自失。


彼はもう、自宅に着いた頃だろう
私はあそこに本を何冊も忘れた。料理を作り置きした。手紙を隠した。
そこここに私の気配が残る家で、何を思うのだろう。いや。何も想わぬに違いない。


gymに行き、久々の独り寝。パリマラソンまで1ヶ月の追い込み。
ただたっぷりと眠り、明日は仕事前に朝から走るのだろう。
展示会を終え、10日も留守にしたオフィスには仕事が山積し、

すぐに2人で訪れたwhole foodsやfamima!で見つけた課題にも、熱く没頭するはずだから。


と。Bからメール。年度末だから、迷惑料金を振り込みたいと。役所でもないのに。

やつらは揃って、4月生まれ。


4月。桜の季節か。そうだ。彼とその友人と、DCで花見をしようと約束したっけ。
去年はBと過ごしたっけ。

時同じくし、きっと今年の華々しい桜の季節は。私の中に雪のように冷たい時間を垂れ流すのだろう。

桜をみたくないのは。桜の季節に心踊らないのは。たぶん、初めてかもしれないな。

眠れなくたっていい。
だって、帰らぬ決意で家を出た私には
明日の予定は。いや、明日以降の予定は。なにひとつ、ないのだから。


わたしこそ、無器用で不細工、滑稽の骨頂

恋愛依存に違いないから。

妙に冴えた頭で、幸せに満ちた日に買ったsudokuをここぞとばかりに端からこなす。

何をやっているんだか。


あっという間に成田着。久々な気がする日本。

いつもの携帯に変えると、着発信、メールボックスすべてを埋め尽くす甘い痕跡。

一気に全部、削除。
否。本当はフォルダを分けようと思ったが、あっという間に誤操作で全削除。

まあいい。そんなものだ。

執着しなくていいんだと思う。


何だか苦いな。

携帯、また変えるかな。