Chap.2 DAY10: 11, MAR, 2007 LA Downtown


いよいよ、彼の展示会も最終日。

いつものように朝のトレーニングを終え戻った彼は、身支度をしながら、訪ねた。

「今日は、少し早く上がって僕もLAの友人宅に行く。キミはどうやって行くの?」



先日Kiraちゃんと選んだギフトを渡しながら、応える。

「足がないから、LAX行きのシャトルに乗って、LAXでピックしてもらおうかと思ってる」

「あなたは、どうするの?」


と。「僕はレンタカーがあるから、それで行くよ」


驚愕の回答。同じ方向に同じ頃向かうのに。えーと、どうしたらいいんだろう。


恐る恐る、「あの、迷惑じゃなかったら。一緒に乗せて行ってくれない?」

「どこか適当にDowntownの一角で降ろしてくれればいいから」と訊いてみた。


「いいよ。だけど、まったく土地感がないから。地図もないし。どこで降ろせるかわからないけど」


というわけで、友人に電話をし、彼の目的地にほど近いスタバでドロップしてもらうことに。


2時間のドライブ。会話は殆どなく気まずい空気。

今日の友人は、どんな友達?と聞かれ、お互い今日会う友人の話をする。


予想より遠い距離に、ふと訪ねてみる。

「帰りも、時間を合わせるからどこかで拾ってもらえない?送ってもらうにはちょっと遠い気がする・・・」


若干気まずい感じではあったが、彼はお呼ばれのため電話はしにくいとのことで。

携帯のテキストで連絡を取り合い、時間が合えばということで決着。


私のデート相手は、中高の同級生。彼女も、海外の長い1人。
フードコーディネートの勉強をした後、今はLAでVMDのカリキュラムを卒業後、仕事に就いている。

昨年春の一時帰国以来、半年振りに再会。

NYの友人も然り。海外に長い女友達は逞しい。そして、潔い。

彼女たちに見習うことは多く、友人は宝物であると、今回の旅で深く感謝と感激を覚えた。


17時過ぎ、スタバで彼を見送り。まだ明るい陽射しの中、外のベンチで地元の人と談笑。

明日行くビーチの情報をあれこれと聞いてみる。

30分後。友人が現れる。彼女の案内で、CafeAngelino へ。

彼女行き付けの店では、店員が彼女の名前を呼び歓迎。
ぱりぱりピザに舌鼓を打ち、ワインを頂く。

いろいろ、彼の話、仕事の話。Bの話をし近況報告。


「まあさ、仕方ないよ。悪いけど彼はちょっと幼いというか。

まあ、よくいるタイプだけれど、余裕がないんじゃないかな。

次よ、次。もっと楽しくて楽な相手はいるから。」


彼女の彼の話や、仕事の話でその後盛り上がり、あっという間にディナータイムは終了。


まだ、20時前。この後、どうしよっかー。

日曜ともあって、街は飲食店以外どこも開いていない。

どこかでお茶でもしようかと話つつ、とりあえず車へ。


「今食事が終わったけど、早いし先に戻ってる?どうする?」

と彼にメールするも、まったく反応がない。


まあ、仕方ないかなとお茶を楽しみつつ、連絡を待つ。


再度メール。至急、連絡を請うと。

そして、堪えきれず電話も入れてみるも、やはり無反応。



1時間。2時間経っても反応一つなく。どうしようというのだろう。


徐々に苛立ちを隠し切れない私に、友人は「じゃあ、Irvineの方に行こうか。友人と会うかもしれないから」

そう言って、Highwayへと車を向けた。


「もうさー、チェックアウトしちゃいなよ。家に泊まれば?ただ、猫がいるけど・・・」

あったかさに感謝しつつ、そんな彼女の言葉に、かなり真剣に迷う。


とりあえず、ホテルに。22時前であったか。再度電話を入れるも、反応は無し。

というわけで、見切りをつけ部屋に行きパッキング開始。


バスルーム、リビング、ベッドルームに出ている自分の荷物を片っ端からバゲッジに突っ込む。

こんな時、私の巨大なTumiは何でも飲み込む。とても便利である。


パッキングを済ませ、ロビーでお茶を飲む彼女の元へ。

23時。Irvineに行くか、LAに戻るか悩みつつ話をしているところへ、電話が鳴る。


「今から帰ります。1時間ほどで着くと思うよ」とまあ、まったく私の連絡を無視した反応。


後で思えば、連絡を入れただけマシだと思うべきだったのだが。

その、相手を全く無視した態度に、ついに私は電話口で怒りに打ち震える。



「あのね、あんまりじゃありませんか?」

「問い合わせをしているのに、一切の返事がないというのはどういうことなのでしょう」



彼は、「私が先に帰る」とメールしてきたから、今日のmissionは連れて帰るか否か。

だから、連絡を取る必要がないだろう。と言い放った。



メール内容の復習をすると、「ごめんなさい。それはミスリードでした」と淡々返答。

私の怒りは、爆発してしまった。30分ほど、下らない議論が展開される。



目の前の友人にもあまりに申し訳ないので、彼の話を遮り告げた一言。



「実は、もう私は今日チェックアウトするつもりで。全てパッキングして今ロビーなんです」

「もし、帰って話したほうがいいということであれば、待っていますがどうしますか?」



そう、引導を渡すと。とりあえず帰って話そうということに落ち着く。



その後、彼女が心配そうに訪ねてくるので、経緯をざっと説明。
気持ちは、昂ぶったまま落ち着かない。


私はとりあえず部屋から出した荷物を戻しにタワーを上がり。

入り口にどかんと荷物を置く。
ふと、彼は車なのであまり飲んでいないだろうと気づいた。
皮肉にも、ほぼ最後の夜と言える時間。

初日から、手をつけるような雰囲気ではなく。

そのまま放置されていたWelcomeコロナを冷やそうと思い立ち。


意味不明の気遣い行動。クーラーに氷を入れ、再度エレベーターホールで待っていると。そこには、彼の姿。


気まずく、「ああ、お帰りなさい。下に荷物も置きっ放しなので取りに行ってくるね」


そう言って、私は開いたドアに滑り込んだ。

ロビーで彼女と別れの挨拶をしていると、EVホールから彼の姿が過ぎる。
気まずいと感じたのか、どうなのかは分からないが。
彼はさっと視界から姿を消し、再びタワーの方向へと消えたが。一瞬間を置き、こちらに向かってきた。


友人と彼は自己紹介をし。一瞬表面的な平穏。彼はフロントで用事を済ませ、私は、彼女を見送る。


「着いたら、電話して。気をつけてね。ありがとう。そして、ごめんね。」


「うん。大丈夫よ。何かあったら、いつでも電話して。家に来ていいからね。」



友人のあたたかさを噛み締めながら、彼の元へ。共に部屋に戻る。

その後の話は、この旅のCriticalな部分。追って、別項目にて。


楽しいはずの夜は、瞬時に苦しいものへと変貌してしまう。

人生とは、ジェットコースターなのだろうか。