朝7:30。客室の電話が鳴り、起こされる。宿の朝食は、早い。


日曜日。3日間の滞在も、いよいよ最終日。

今日で、この旅が終わってしまう。

また明日からは、遠く離れた場所、遠く離れた想いを胸に

悶々とした日々を、送らなくてはならないのね。

そう思うと、やけにBitterSweetな、Sentimentalな気持ちが満ちてきた。


「おなかすいたー」


という"ち"に、もやもやを払拭され。そそくさと朝ご飯。

私は、胸いっぱいであまりお腹が空かない。


朝食を取り、温泉に入ろうと支度をする。

廊下を歩いたその時。テーブルの上の、一枚の新聞が目に入る。


地方紙の1面に、大きな写真。昨日の勝利シーンだった。

そして、その画面の中央付近に、彼が写っていた。

満面の笑みをたたえ、フィールドから30センチは飛び上がっていた。


なんだか、あったかい気持ちになった。


お風呂に着いて、私がいないことに気づいた"ち"が、呼びに来た声で

妄想の世界から、呼び戻され(笑)。朝から、露天風呂。貸しきり状態。


天気予報は、雨だったが。今日も快晴。風は強いが、気持ちのよいお天気。


2人でお風呂を楽しみ、その後、テラスに椅子を出して本を読み、歌う。


時間軸が、日常と大きくずれてしまったかのように。

ゆっくり、ゆっくりと時間が過ぎる。その全てを、惜しむように。

ゆっくりと、深呼吸した。


「glu、手紙、書くんだよ!ふふふ。」と、念を押される。

「gluはね、プライドが高いのが分かっちゃうの。私みたいに自分から行かないと恋が始まらない人は、あの手この手でアタックするんだけど。gluは、"そんなこと、できないよ"って。男の人に仕掛けてもらって、あたりまえだと思っちゃってるでしょ?ダメよ、自分で。もう後ろには引けないんだから。」


うーん。頭では、理解してるのですが。素面で朝になると、どうも勢いが出ない。


そんなわけで、悶々と考えながら、彼のお迎えを待つ。

と。電話が鳴る。


「もしもし?」


彼だ。


「あのさ、練習が長引いて今終わったばっかりだから、駅まで来てよ。」

「送ってもらうように言っとくから。いい?」


「はーい。わかったー。」


「じゃ、13:00に駅で」


ということで、慌しく身支度を整え、チェックアウト。


諸々お取り計らいをいただき、ご親切にして頂いたみなさまにお礼を伝え、ご挨拶。

と、朝見た新聞が、また目に入る。


「あのぅ、すみません。この新聞、もしよろしかったら頂けませんか?」


恐る恐る、聞いてみた。

すると、にこやかに快諾してくださった。


「もちろん!いいですよ!!東京じゃ、手に入らないですし。記念ですから!!」


10段抜きの、センター。普通に畳むと、写真が折れてしまう。

ちょっと悩んで、写真を避けて折り、バッグにそーっと忍ばせる。

その姿を見た"ち"が、「gluってさ、そういうとこ、かわいいよね」と、笑っていた。


「今日は迎えに来ないんですか?」宿の方は、残念そう。


「ええ、練習が長引いたようなので、来なくなったんです。ごめんなさい。」


そう言って、総出でお見送りしてくださる皆さんに、最敬礼をし、宿を後に。


金曜の夜、待ち合わせをしたあの場所で、もう一度彼を待った。


今日は一体、どんな一日になるのだろう。

すると、どうやっても目立つ車が現れた。


今日の彼は、街仕様。昨日までのジャージではなかった。


またも、私は緊張の坩堝に落ちてゆき、彼の隣のドアを開けた。


最後のデート。果たして女神は、かすかな笑みをくれるのでしょうか・・・?