父が、また誕生日を迎えた。

物心ついてからずっと、忙殺される日々を送る父を見るにつれ

健やかに、つつがなく。この日を迎えてくれることが、何より嬉しい。

この2年間で、父母それぞれ緊急入院をすることがあったため、なおさらだ。


1月は、弟の誕生日、祖母の誕生日、父の誕生日と続く。

皆、世代はまちまち。それぞれの年の重ね方、喜び方には差異があるが

健やかに年を重ねることの幸せは、どの世代にも変わることなく共通である。


週末。母、大叔父夫妻、叔父、叔母。従弟夫妻とともに観劇の予定であったが

疲れと悪天もあり、パスさせて頂き、夕刻からの早めの夕餉のみ列席。
海外に住む姉、従兄。18歳コンビの従妹、弟は、試験中で不在だが

お正月から引き続き、一家で集まることが多いこのごろ。


本日は、ワインが飲みたいそうで。軽めのイタリアン。

生牡蠣と鴨、チーズをつまみに、ワインが進む。

わたしは、運転なので軽めに控えておく。

2時間後。野ウサギのラグーが出てきた頃には、既に皆出来上がり気味。


と。


店内にて、従妹と弟の幼稚園の同級生一家と、偶然再会。
華奢で小さかった男の子が、立派な青年になっていた(しかもいい男)。

近況報告の中で、青年の妹さんが、ロンドンにバレエ留学中であることを聞く。

その話から、別の同級生の男子は、Liga ESPAÑOLA の下部組織に留学中で

高校を卒業するにあたり、帰国するか否か迷っているらしい。という話題になる。


叔父が、その話に興味を示す。
某トーナメントホストを長年担当していたこともあり、サッカーが好き。

思い入れも強く、協会に親しい知人も多いためだろう。

まずは、一度紹介を。ということになり。早速双方に連絡をとっていた。


いいなぁ、若いって。未知の可能性、弾む肌。羨望の眼差し。


バレエの麻子ちゃん。サッカーの圭くん。夢見た世界を掴んで欲しい。

従妹は、来年スポーツマネジメントを学ぶため、渡米する。

我が家の暢気な末弟は、どうするのか不明だが、

みなそれぞれに、限りない可能性と夢が広がっている。

手に入らないものがあったとしても、遮二無二努力を惜しまぬことは

その後の長い人生において、間違いなく大きな自信となるだろう。


こんな私であっても。毎日のように2000M泳いだ子供の頃、

熱射病に倒れ、ラケットで額を切った10代、

灼熱の中、雪の中。雷雨の中、泣きながらラウンドした大学時代、

暑苦しい男たちと共に、各地転々とフィールドに立った、20代。

悔しい思い、流した涙と汗。気の遠くなるような練習の日々。

残念なことに光る才能はなく、自分の進むべき道は違ったが

それでも、今の私を支える根底に流れるのは、体育会の熱い血潮である。

いまだに、暑苦しく情けに弱く、気合と体力勝負。ザ・体育会。なわたくしです。



それにしても、人の縁とは奇妙なものである。


このお店でこうして、偶然の再会。誰かの何かが、大きく変わるかもしれない。

サッカーの話題になると、どうも挙動不審なわたくし。貝のように口を閉ざす。

にもかかわらず。親子の去った後も、延々とサッカートピックスは続く。

両親と叔父叔母が、昨年末観戦した、トヨタカップの話題に派生。

話題は、ゲーム内容ではなく。ハーフタイムのカクテルパーティー。


これが、とんでもない。年をとると記憶力、表現力が低下するそうだが、

聞いている従弟夫妻とわたくしには、全く分からないのであった。


こう言った具合だから・・・・。


叔父「彼は、日本語が堪能だから、びっくりしたよ」

「あぁ、彼ね。ええと何だっけ、あそこの選手で、監督もしてたんだよね」


私:聞こえないふり。話題が去るのを待ちつづける。携帯を見るふり。

母:全く興味がないらしく、ぼんやりしている。


従弟「それじゃ、全然わかんないってば。誰なんだよ」

叔母「ほら、イタリア人じゃなくって、オランダ人じゃなくって、ほら、有名な」


「ドイツ人だろう、彼は」

叔父「そうだよ、ドイツ。シュナイダーじゃなくて、カーンじゃなくて、ほら・・・」

叔母「トッティよ!」


従弟「・・・ぜったい違う。それイタリア人。日本のチームでプレーしてないし」


止むに止まれず。口を挟む。



「あのぅ、それは・・・。リッティ。リトバルスキーさんじゃ、ない、かしら?」


一同 「そう!それ!!!!」



記憶の泉、いと深く。

我が家は、認知症世界一決定戦開催中。


*これはTOYOTA CUPに非ず。

天皇杯決勝戦。


完璧主義、理論派の父は、記憶が呼び覚ませないことで、俄か不機嫌に。

焦燥感と嫌悪感が、ありありと見て取れる。

しかし、これも老化の一現象。脳細胞は日々死滅するわけで。

ちょっと抜けていても、健やかであれば、いいではないか。

衰えがあっても、一日一分でも長く健やかに、ここに在って欲しいと願う。

老いることも、衰えることも。楽しんで時間を過ごして欲しい。と思う。

誕生日の贈り物は、NINTENDO DS にしようと思った夜。


延々と続くサッカー談義。気づけば、ドイツW杯の話にまで及んでいた。

「あ、それ私も行きたい」と、一応声を出しておく。

すると叔父が「JFAの●○さんが、おまえ転職しないか?と言ってたぞ」

「仕事で行けばいいじゃないか」と言い出す。

うーん。悩む。真剣に検討しちゃいますよ、そんなこと言われると。


だって、そしたら。Jに会えちゃったりして。なんて、一瞬思ってしまった。
あほか。アイドル好きの女子学生のような、安易な発想。ありえません。


あぁ、いかん。そろそろ、卒業しなくては。

新しい季節が、そろそろやってきますもの。

髪でも切って、透き通った空気のなかに飛び出そう!


そう思いながらも、通りすがりの駅の売店。

生涯初、サカダイ などと言う雑誌を手にしてしまう私だった・・・。