小さな恋の夕間暮れ | GLOG

小さな恋の夕間暮れ

昨日の邂逅は所詮、気紛れが産んだ偶然だ。希望を抱かなければ、期待も失望にその姿を変容させることはない。それでも僕らは飽きもせず、一抹の想いを胸に抱く。恋に対峙したとき、学習や成長などという言葉こそ、親しみから最も乖離したものだ言えるだろう。


伏線はやはり朝の電車だった。いつも降り立つ駅では改札をくぐるまでに階段を下りることになる。だから、その階段に一番近い車両は、若干ではあるものの、時間的な余裕を生むことになる。この効用を期待した僕は、いつもと違う車両に乗り込んだ。果たしておよそ1時間後、僕はまたしても彼女の姿を認めた。揺らいでいた何かは音を立ててはしっかりと軸をもつ。


18時のベル。自社に戻る必要があった僕はいつもよりもかなり早めに帰路についた。18時30分過ぎ、真ん中辺りの車両。ドアが開く。電車に乗り込む。斜め前方。距離にして1m程度。そこに認めた姿は…。

僕は凡そ混乱に極みにあったと言えるだろう。


千載一遇の好機であることは疑いない。
寧ろ、ここで話し掛けなければ不自然ではなかろうか。
しかし、どうだ。
自分に一瞥すらくれない彼女の態度こそ拒否という姿勢の顕れではないか。
ああ、どうする?
こうしている間にも時は刻一刻と流れる。
次の駅で彼女が降りたら僕は果てなく後悔するだろう。
でも、何を話せば良い?

悶々と思い悩む僕の背中を押したものは一体何だったのか。今となっては全く覚えていない。




ああ、まったく、これは恋だ。
数年振りの恋だよ。