日々の諸々のことと、映画『ゴッホ 〜最期の手紙〜』
ファン・ゴッホのことを書くつもりでいましたが、思いが強くてブログが書けませんでした。
気が付いたら年末です!
自転車に乗っていて、よく止められるようになると「あ、年末だ」と感じます。
夜中に自転車でビデオレンタル屋によく行きますが、ここのところ毎回止められます。
先日は警官3人による取り締まりを受けた10m先で、女性が仰向けになって倒れて唸っていました。
直ぐ様、救急車を呼び、近くにいた警官を呼びましたが、ゆっくり歩いてくるので驚いたものです。
服が土や枯葉だらけになり、声掛けに応答しなかったので、心配しましたが、救急車を呼んでいる間に大分回復してきたようでした。
自転車盗難の取り締まりは、3人体制でも多いと思っていましたが、7人体制で取り囲んで自転車の登録番号の確認をしているところを見かけました。
塾帰り風の小柄な男性で、怯えていたので、リンチ現場のようでした。
その間、交番には誰もいませんでした。
私は何度も自転車盗難に遭っていて、小学生の頃、クリスマスプレゼントで買ってもらった自転車を正月に初乗りしようとしたところ無くなっていたことはショックでしたが、どんな凶悪な犯罪なのだと思います。
今日は、クリスマスイブで、子供の頃にはそんなワクワクする日でしたが、大人になって起源を調べて愕然としたものです。
アンサイクロペディア寄りのイメージになってきました。
クリスマスの記事。マイルドな内容です。
並びに、ハロウィン。
マイナスなイメージを植え付けるようですが、子供と和やかに過ごすには良いかなと思っています。
子供がいたとして、「うちはクリスマスはやらない」とは言えなそうです。
さて、前回の更新から遅くなりましたが、公開中の映画について書きます。
ゴッホの動く絵画が上映されています。
『ゴッホ 〜最期の手紙〜』
トレーラー。
衝撃的です!
全編動く油絵に圧巻!
大きなスクリーン上で62,450枚もの油絵が動くのです!
視覚の情報量があまりに多く、私の視覚が耐えられませんでした。
ゴッホ の描いた絵のサイズは様々なので、画角から外れている光景まで再現され、光や人が動き出し、パニックでした。
トリップ状態です。
「よく見よう」と視覚が極限まで研ぎ澄まされ、集中している状態で、突然聴覚が刺激される場面もあり、非常に驚きました。
特にバラの茎をハサミで切るという予期していなかった鋭い音、カラスが麦畑を飛ぶ時の音にドキッとしました。
日本語吹き替えでの観覧をお勧めします。
視覚聴覚の刺激が強烈なので、字幕を追うことに気を向けるのは勿体ないです。
都心より離れていた方が人が少ないと考えて私が訪れたのは埼玉のララポートです。
駅からバスなので、距離はありましたが、なんと、私含めて9人での鑑賞でした。
1人で堪能しているような感じでした。
メイキング映像はこちら。
似ている俳優を選び、実写にCGを加えた映像を作成し、それをキャンバスに投影させ、描いています。
映画の内容的は、どうでしょう…。
ストーリーは自殺の真相を追うサスペンス仕立てとなっています。
知る由はないので憶測ですが、死因については今となっては不審な点が多々あり、個人的に自殺ではないと思っています。
書簡で「自殺は不道徳で人道に反する」と書いています。
一時的に伝道師にもなっており、聖職者を志していた信仰の厚さからも、自殺は考えられないように思われ、
そして何より、
魂を削って絵を描くことが生きることであった人が絵を描く行為を断てるのでしょうか。
死の直前まで絵に対する情熱は揺るぎないものです。
精神疾患にばかり焦点が当たりますが、疑問です。
撃たれた箇所や角度、至近距離ではないという問題もあり、また、持ち歩いていた画材一式も見つかっていません。
目撃者もいなかったとされていますが、真実は分かりません。
凶器の拳銃は、当時は見つからず、1950年代に野原の地中で発見されていて、秘蔵となっていました。
その5〜60年地中に眠っていたとされる拳銃が去年、アムステルダムのゴッホ美術館で初公開されました。
未だに進展があることに驚きますが、謎だらけです。
映画を終わった後は、泣きました。
数日引きずりました。
経済的に困窮し、様々な精神的な苦悩を抱え、報われず、苦しんで亡くなったのではないかと考えるだけで泣いてしまいます。
無名のうちにこの世を去り、露天古物商の店頭にガラクタ同様放り出されていた作品が後にどんなに賞賛され、多くの人々に愛されようと、もういないのです。
ゴッホの手紙(上・中・下)を読んで、映画を観るとより感情移入すると思います。
「世の中の理解や悪意と戦って画業に燃焼し尽くした天才の類稀な魂の記録」
これは冒頭の文ですが、その一言が脳裏に焼き付いています。
YouTubeにもドキュメンタリーがいくつかあがっているので、そちらも見てから映画を観ると、一味二味変わってくると思います。
配給はPARCOです。
映画を記念して限定発売されたゴッホ君人形がPARCOといった感じがしました。
耳を切るbefore afterがコンセプトにあり、感覚的にとても理解できませんが、現代はこういう感覚が主流なのでしょうか。
笑われてしまうかもしれませんが、ファン・ゴッホの画集を見るという鑑賞体験だけで、飲み込まれるほどの迫力や美しさと繊細さ、純粋さ、直向きさ、苦しみに泣いてしまったりします。
狂気の人とよく言われていますが、手紙を読むと知的でそのようには思えません(短気であったのは事実なようですが)。
芸術鑑賞は内なる自分との対話です。
自分が見た世界を自分の頭の中で分解し、再構築し、昇華した絵には命を削って描いた生命があり、生々しく、作品を観ることで鑑賞者それぞれの追体験をすることができると思います。
自然に身を置いていたことによるものなのか、見えないものや届かないものの描写力が並外れています。
全身全霊で自分を取り巻く世界と対峙していた多感な子供の頃を思い出します。
言葉にならない想いを表現することが生きることでもあったと思いますが、鑑賞者が溺れるほどの強烈な感情のエネルギー、その源に死があるようにも思います。
時間の有限性があることを意識することは大切です。
しかしながら1日に使うことのできるエネルギーの総量を意識すると、意思のままに時間を使うことには制限があるので、人間にはオンオフ、切り替えが大切です。
目が覚めている間中、稼働していることは考えられないことですが、それをしていたのがゴッホだと思っています。
27歳から画家を志し、37歳という若さで亡くなりましたが、描いた絵の数は、油絵約860点、水彩画約150点、素描約1030点!
オーヴェールの70日間(1890.5.20〜7.29)だけで平均して1日1枚以上のペースです。
置き場所に困るほどの膨大な量の画布は、数フランでも売れることはなく、諸説あるものの生前に売れた絵は『赤い葡萄畑』たった1枚と言われています。
それが今ではオークションで考えられない値がついています。
初めて美術館で本物を観たときはあまりの衝撃で脱力しました。
損保ジャパン日本興亜美術館(新宿)で展示されている花瓶のひまわりシリーズの1枚、『ひまわり(1888年)』はレプリカではないです。
知り合いでレプリカだと思っている人が何人かいました。
76億円で落札した本物です。
その1枚を観るだけでも価値があると思います。
2018年1月8日まで都美術館でも企画展が開催されていますので、時間がある方は是非

ゴッホを広めるきっかけは武者小路実篤が『白樺』で紹介したことで、憧憬の念をゴッホに抱いた佐伯祐三、岸田劉生、斎藤茂吉らなどの多くの画家や文学者が、聖地巡礼で、オーヴェールを訪れ、その名を残した芳名帳が初公開されていました。
集合写真などもありました。
日本の美しい自然や美的感覚に思いを馳せ、浮世絵のコレクターでもあったゴッホがそれを知ることがないのは残念なことです。
自分は自然の一部であり、共存しているという考えは浮世絵と共通するところであります。
書簡によると、ゴッホはどのような天候にも負けず、全身全霊で描き、それにより、日本人に近い物の見方ができるようになったと感じていたそうです。
「都市に近づくほど、堕落と愚かしさと弱さといった暗部に入り込むことになる」と、葛藤があり、人間本来のあり方について深く考察しています。
自分の絵が謂わば粗雑であるにも関わらず、というよりもむしろ粗雑であるがゆえに、感情が深くて優しいと人々が言ってくれる方向に進みたいということを切望していて、それは逆に非社交性として語られるところでもあるようにも思います。
身なりを気にしないということも有名で。
現世に生き返って欲しい著名人を一人あげるとしたら即座にファン・ゴッホと答えます。
世の中を見たら幻滅してしまうかもしれませんね。
色々な画家の画集を持っていますが、ゴッホは11kgの全画集を持っています。
これを閲覧するのは有意義な時です。
自然の色彩の法則について、偶然ではないと述べているので、色の一番明るい表現とは何かについて考えます。
絵の具は混ぜると暗くなります。
ゴッホは、色彩分割という色の表現方法が画期的で、眩いばかりの色彩が表現できたのです。
色彩分割、減法混色、加法混色、視覚混合、この辺りを真剣に学びたいと思っています。
ファン・ゴッホの映画としては、フィンセント(!)・ミネリ監督の映画、『炎の人ゴッホ 』は外せません。
配給はMGM。
絶頂期のカーク・ダグラス自らが「自分は似ている」とゴッホ役を自ら願い出た作品です。
ゴーギャン役のアンソニー・クインもカーク・ダグラス同様に絶頂期で出演し、戦後ハリウッドの伝記映画として残る名作中の名作です。
アービング・ストーンが1934年に書いた歴史小説が元になっています。
大恐慌が始まり、小説は戦争直後に再出版され、大ベストセラーとなっています。
時代背景(個人主義と服従主義、タブーへの興味)、映像技術(モノパック、メトロカラー、シネマスコープ)、そして、ロケ!
絵に近いセッティングをしています。
監督が完璧主義者で、この映画には並々ならぬ拘りを感じます。
ゴッホが本当に描いているように見えます。
そういえば、去年、話題になったこの方もよく似ています。
エジプトのフォトグラファーが見つけたガーデナー。
まだまだ長くなりそうなので、ミネリの映画についてはそのうち書けたらと思います。
今年の更新はこれが最後かもしれませんので、どうぞ良いお年をお迎えください。