DAWN
< ある日、ある時間、ある建物の屋上にて >
夜でもない朝でもない、ある時間帯。
澄んだ空気、静かな道路。
夜の帳は、光に押され明けゆく。
徐々に徐々に陽光が差し込む。
夜から朝へ止まることなく刻々と表情を変化させる空。
重い空は白み、青を取り戻し始める。
蒼、碧、藍、群青、水色・・・。
幾つもの青によるグラデーションが現れる。
街も色を取り戻し始める。
色が目を侵食してゆく。
光と闇、寒色と暖色が混じり合う、その残像に夢心地。
まだいくつか星が残り、街明かりも名残惜しく、
いつが夜と朝の境目なのか分からないまま、
街が動き出してしまう、そんな少し前の雰囲気が好き。
そして、ある瞬間、地上の営みと宇宙の流れの交わりを感じる。
自己を意識しない自分が風景と協調、調和し、
流れに身を任せると、
何でもないいつもの光景が心に残る情景となる。
そのときの自分だけが見て、感じている空間が特殊な体験を提供してくれる。
外側に存在する事象から解放され、
俗世に縛られた体という器から本当の自分が抜け出て、
凝り固まった脳が溶けだす。
フロー、ピーク・エクスペリエンスのように境界を失う。
自分が溶けてしまう。
溶けて全体と一体になり、
全体の一部となる。
そんな至高の世界に触れたような感覚をまた味わいたくて。