オバマのアメリカ キムヨナと真央の涙 そして豊田社長の涙
オバマのアメリカ
「リーダーの涙がアメリカで持つ意味」
-真央とキムヨナの涙の重さ、流してはいけないトヨタ社長の涙-
An Apology From Toyota’s Leader
バンクーバー冬季五輪が終わった。普段はフィギュアスケートなど見ないのだが、女性の涙のすばらしさに素直に感動した。
金メダルを確実にして、それまでのつんとして表情を一変させて見せたキムヨナの笑顔と涙。
3回点半を成功させながらも、スタミナ不足からか残念なミスで金に届かなかった浅田真央が、インタビューで思わず流した悔し涙。
会場に駆けつけてくれた母の急死の悲しみを乗り越えて、ショートプログラムを成功させ、カナダの選手の流した涙。この涙に説明はいらない。
個人的には、女子パシュートで米国を破り、銅メダルを獲得したポーランド女子チームの3人が流した涙が一番好きだ。自分は流したことのない「うれし涙」ってあるのだなと思った。
一方で、いただけない涙は豊田章夫トヨタ自動車社長 が、厳しい公聴会を終えてから、選ばれた全米のトヨタ従業員の前で思わず流した涙だ。
かつて米大統領戦予備選の最中、米民主党の候補が個人的な誹謗中傷を浴びて、思わず有権者の前で涙を流し、飛ぶ鳥を落とす勢いだったのに一挙に支持率を下げ脱落していったことがあった。「女々しい」というのが当時のアメリカの世論だった。
オバマ氏も大統領選挙本選の途中で、自分を育ててくれた祖母の死に直面にして涙を流した。しかし、この涙はアメリカの有権者の共感を得た。
アメリカ人は喜怒哀楽を素直に表すという。しかし、それはあくまで表向きのこと。自分の意志をはっきりと示すことが求められるアメリカ文化の一部でしかない。
アメリカではリーダーたる者、どんなに苦しい局面にあっても毅然とした態度を保つことができなければリーダー失格なのだ。
トヨダ氏の涙はメディアで大きく報道された。「身内」に囲まれて流した涙を理解するアメリカ人は在米トヨタの従業員の一部だけではないのか。
多数の米国人にはまったく理解されなかっただろう。世界一の自動車会社のリーダーとしては失格であると判定下す人が多いはずだ。
公聴会での発言の是非を論評するガラパゴス日本のメディアの思惑とは裏腹に、流した涙の重さをトヨダ氏が感じるときは遠くない。
(Global Photo Exchange Yoji Sugaya)