最近、ジョホール・バルの話を耳にすることが増えました。
シンガポールとジョホール・バルを結ぶRTS Linkは、2026年末の旅客運行開始を目標に建設が進んでいます。
シンガポールにいる友人たちとの会話でも、
「将来はジョホールに住むのもいいかもしれない」
という話が、ときどき出てくるようになりました。
以前のジョホールは、シンガポールから国境を越えて買い物や食事に行く場所という印象が強かったと思います。
それが今では、シンガポールで働きながら暮らす場所、あるいはリタイア後の生活拠点としても語られるようになっています。
ジョホールが、単なる隣国の街ではなく、シンガポールの生活圏の延長として見られ始めているのでしょう。
そうした話を聞くたびに、私は初めてジョホールを真剣に調べた頃のことを思い出します。
きっかけは、MM2Hという制度でした。
MM2Hを知る
MM2Hは、Malaysia My Second Homeの略称です。
外国人が一定の条件を満たすことで、マレーシアに長期滞在できる制度として長年知られてきました。
私がこの制度を知ったのは、投資会社に勤めていた知人から教えてもらったことがきっかけでした。
当時の私はシンガポールに住んでおり、シンガポールのコンドミニアムを購入したばかりでした。
マレーシアへの移住を具体的に計画していたわけではありません。
仕事も生活も、完全にシンガポールが中心です。
それでも、MM2Hについて調べてみると、将来の選択肢としては面白い制度だと思いました。
当時のMM2Hは、現在の制度とはかなり違っていました。
最長10年の長期滞在が可能で、更新もできました。
一定の国外収入や資産、マレーシア国内での定期預金などの条件はありましたが、住宅の購入は必須ではありませんでした。
当時の代表的な条件は、月額1万リンギット以上の国外収入です。
当時は、申請時の流動資産要件とは別に、承認後に定期預金を預け入れる条件がありました。定期預金については、50歳以上は15万リンギット、50歳未満は30万リンギットという区分がありました。※当時は1リンギット約30円前後。
決して無条件で取得できる制度ではありません。
それでも、少なくとも私には、
「少し準備すれば、将来の選択肢として持てるかもしれない」
と思える条件でした。
すぐに移住する必要もありません。
不動産を買う必要もありません。
将来、生活環境や仕事の状況が変わったときに、マレーシアに長期滞在できる可能性を持っておく。
当時の私にとってMM2Hは、そのような制度でした。
シンガポールの隣にある選択肢
MM2Hを調べ始めると、自然に次の疑問が出てきます。
実際に住むなら、マレーシアのどこがよいのか。
クアラルンプール、ペナン、マラッカなど、候補はいくつもありました。
しかし、当時シンガポールに住んでいた私にとって、最も現実的に見えたのはジョホールでした。
国境を越えればシンガポールです。
仕事や用事があれば戻ることができる。
将来、生活拠点を完全に移さなくても、二つの場所を行き来しながら暮らすことも考えられます。
そこで、MM2Hの制度と並行して、ジョホールの不動産についても調べ始めました。
シンガポールと比べると、住宅価格はかなり低く見えます。
広いコンドミニアムも多く、将来の住居としてだけでなく、週末を過ごす場所としても現実的に感じました。
ところが、そこで思いがけない壁にぶつかりました。
外国人がジョホール州で住宅を購入する場合、一般的な最低購入価格は100万リンギット。
物件情報を見ているだけでは分からなかった規制です。
魅力的に見える手頃な価格の物件があっても、外国人は購入できない。
MM2Hそのものには住宅購入義務がないのに、実際に住宅を買おうとすると、別の制度による制限がある。
それを知ったときの率直な感想は、
「ちくしょう」
でした。
でも、実際にはそう単純ではありませんでした。
ビザと不動産は別の制度だった
今から考えれば、当然のことかもしれません。
MM2Hは、外国人がマレーシアに長期滞在するための制度です。
一方、外国人が不動産を購入できるかどうかは、土地や住宅の取得に関する制度です。
二つは別の制度です。
しかし、最初からその違いを理解していたわけではありません。
「マレーシアに長期滞在できる制度」を調べれば、その国で暮らすための条件も一通り分かるような気がしていました。
実際には、そうではありませんでした。
ビザを取得できることと、住宅を購入できることは別です。
住宅を購入できることと、その国の税務上の居住者になることも別です。
銀行口座を開設できるかどうかも、また別の制度です。
一つの国で暮らそうとすると、複数の制度が重なってきます。
MM2Hについて理解しただけでは、ジョホールでの生活設計は完成しなかったのです。
100万リンギットという基準を知った時点で、諦めることもできました。
当時の私にとって、簡単に出せる金額ではありません。
しかし、どうしても一つの疑問が残りました。
本当に、ジョホール州の物件はすべて同じ条件なのだろうか。
もう一度調べ直す
そこで、物件検索だけではなく、制度そのものをもう一度調べ始めました。
外国人の不動産購入に関するジョホール州の一般的な規則。
イスカンダル・マレーシアの開発計画。(当時進められていたイスカンダル・マレーシア計画は、ジョホール南部をシンガポールと連携する国際都市圏として開発する国家プロジェクトでした。)
地区ごとの位置づけ。
外国人向け物件の取り扱い。
調べていくうちに、制度が一枚の平らな板ではないことが見えてきました。
国の制度がある。
その下に州の制度がある。
さらに開発地区ごとの条件や特別な取り扱いがある。
すべての地域、すべての物件が、必ずしも同じ条件で扱われているわけではありませんでした。
そこで見つけたのが、Mediniでした。Mediniは、イスカンダル・マレーシアの中核地区として開発が進められていたエリアです。
当時は教育、医療、商業、住宅などを一体的に整備する国際都市として位置付けられ、多くの海外デベロッパーも参入していました。
現在では、レゴランド・マレーシアやグレンイーグルス病院などがある地区として知っている方も多いかもしれません。
私が注目したのは、街そのものではありません。
制度でした。
Mediniでは、外国人による住宅購入について、ジョホール州の一般的な最低購入価格とは異なる取り扱いが認められていました。
そのため、100万リンギット未満の物件でも、条件を満たせば外国人が購入できるケースが存在していたのです。
ここで重要なのは、「外国人に対する規制がなかった」ということではありません。
規制が存在しないのではなく、一般基準とは異なる特例が設けられていたのです。
100万リンギット以上という一般的な基準だけを見ていれば、私はそこで調査を終えていたでしょう。
しかし、制度の階層を一段ずつ下りていくと、自分にも利用できる可能性のある選択肢が残っていました。
Mediniでコンドミニアムを買う
私は2017年、Medini地区のコンドミニアムを購入しました。
購入価格は約40万リンギットでした。
これは、Mediniで外国人が購入できる法的な最低価格を示す数字ではありません。
あくまで、私が実際に購入した物件の価格です。
当時のMediniは、現在のように街が完成していたわけではありませんでした。
新しい建物が次々と計画されていましたが、周辺にはまだ空き地も多く、本当に計画どおり発展するのか分からない部分もありました。
完成した街の中から住宅を選んだというより、これからつくられる街の一部を買った感覚に近かったと思います。
期待はありました。
同時に、不安もありました。
シンガポールとの近さ。
イスカンダル地域の将来性。
周辺開発の計画。
それらが魅力的に見える一方で、開発計画がそのまま現実になるとは限りません。
それでも購入を決めたのは、単に投資として値上がりを期待したからではありませんでした。
将来、マレーシアで暮らすことになった場合に使える場所を持っておく。
シンガポールとは別の生活拠点を用意しておく。
MM2Hを含め、将来の選択肢を少しずつ増やしておく。
そうした生活設計の一部として購入しました。
当時は、このコンドミニアムが将来どのような役割を果たすのか、もちろん分かりませんでした。
住む場所になるのか、資産として持ち続けるのか、それとも別の選択をすることになるのか。
その答えは、まだ先の話でした。
ただし、この時点でもMM2Hは取得していません。
コンドミニアムを購入したことと、MM2Hを取得することは、最初から別の判断だったからです。
不動産を持っているからといって、マレーシアに長期滞在する資格が自動的に与えられるわけではありません。
それでも、当時のMM2Hの条件であれば、必要になった時点で申請を検討できる。
私はそのように考えていました。
ところが、制度はそのままではありませんでした。
2021年、MM2Hが大きく変わる
最初の大きな変更は、2021年でした。
一時停止されていた連邦政府のMM2Hが再開される際、条件が大幅に厳しくなりました。
月額の国外収入要件は、1万リンギットから4万リンギットへ。
流動資産は150万リンギット以上。
マレーシア国内の定期預金は100万リンギット。
さらに、年間累計90日以上の滞在も求められる制度になりました。
パスの期間も、以前の最長10年から5年に変更されました。
私が最初に知ったMM2Hとは、ほとんど別の制度です。
率直に言えば、
「超金持ちしか無理じゃん」
と思いました。
もちろん、実際に条件を満たせる人はいます。
しかし、将来の移住に備えて少しずつ準備する一般的な人にとっては、以前よりはるかに遠い制度になりました。
私自身、すぐにMM2Hを取得する予定だったわけではありません。
それでも、将来の選択肢として考えていた制度です。
その制度を意識してジョホールを調べ、Mediniにコンドミニアムも購入していました。
しかし、不動産を持っているからといって、従来の条件でMM2Hを取得できる権利が残るわけではありません。
制度が変われば、新しい申請者は新しい条件で判断されます。
「自分は何のために買ったのだろう」
という気持ちが、まったくなかったと言えば嘘になります。
けれども、ここでもう一度、最初に学んだことを突きつけられました。
不動産とビザは別の制度です。
私はMediniのコンドミニアムを購入しました。
しかし、MM2Hの将来の条件まで購入したわけではありません。
分かっていたはずのことでした。
それでも、自分の生活設計に関係する制度が実際に変わってみると、その意味を改めて実感しました。
そして、もう一度変わった
話は、2021年の変更で終わりませんでした。
その後、MM2Hはもう一度、大きく組み替えられました。
現在の連邦政府のMM2Hには、Silver、Gold、Platinumという三つの主要カテゴリーがあります。
これに、特別経済区・特別金融区を対象としたSEZ/SFZカテゴリーが加わっています。
2021年の制度で設けられた月額4万リンギットの国外収入要件は、現在の主要カテゴリーでは引き継がれていません。
定期預金やパスの期間は、カテゴリー別に設定されました。
Silverは、15万米ドルの定期預金と、60万リンギット以上の住宅。
Goldは、50万米ドルの定期預金と、100万リンギット以上の住宅。
Platinumは、100万米ドルの定期預金と、200万リンギット以上の住宅が条件です。
パスの期間も、Silverは5年、Goldは15年、Platinumは20年と分けられています。
一見すると、2021年の制度より選択肢が増えたようにも見えます。
ところが、条件を読んでいて、私は別のところで手が止まりました。
主要な三カテゴリーでは、MM2Hの承認後に一定額以上の住宅を購入し、保有することが義務づけられていたのです。
最も低いSilverでも、60万リンギット以上の住宅を購入しなければなりません。
「結局、コンド購入条件あるじゃん」
と思いました。
私が最初に知ったMM2Hでは、不動産購入は必須ではありませんでした。
ところが、実際にジョホールで住宅を買おうとすると、外国人には100万リンギットという別の壁がありました。
そこで私は制度を調べ直し、一般基準とは異なる特例があったMediniにたどり着きました。
そして約40万リンギットでコンドミニアムを購入しました。
その後、MM2Hは一度、私には手が届きにくいほど厳しい制度になりました。
さらにもう一度変更された結果、今度は住宅購入そのものがMM2Hの条件に組み込まれました。
制度だけを時系列に並べてみると、少し皮肉です。
「買った意味ないやん」
そう思わずにはいられませんでした。
もちろん、私が購入した物件が現在のMM2Hの住宅条件を自動的に満たすという意味ではありません。
購入価格、現在価値、物件の所在地、承認後の購入期限など、実際の申請では現行条件に基づく個別確認が必要です。
昔コンドミニアムを買ったという事実だけで、新しい制度上の条件を満たせるわけではありません。
そこにもまた、制度と個人の経験の間にある時間差があります。
同じ名前でも、同じ制度ではない
MM2Hという名称は変わっていません。
しかし、私が最初に調べたMM2H、2021年に再開されたMM2H、現在のMM2Hは、中身が大きく異なります。
名前が同じだからといって、制度も同じとは限りません。
これはMM2Hだけの話ではないでしょう。
ビザ、税制、永住権、年金、保険、銀行口座。
制度の名称が残っていても、条件や運用が変わることがあります。
昔の経験談が、そのまま現在にも当てはまるとは限りません。
インターネットでは、
「私はこの条件で取得した」
「以前はこの方法でできた」
という情報を数多く見かけます。
それらが間違っているとは限りません。
その人が経験した時点では、正しい情報だった可能性があります。
問題は、その情報がどの時点の制度に基づくものなのかが、分かりにくいことです。
MM2Hについて調べるときも、
「MM2Hの条件は何か」
とだけ考えるのでは足りません。
どの時期の制度なのか。
連邦政府のMM2Hなのか。
サラワク州独自のS-MM2Hなのか。
あるいは特別経済区を対象としたカテゴリーなのか。
同じ国の長期滞在制度でも、制度の管轄や対象地域が異なります。
一つの名前だけを見て理解したつもりになると、別の制度が混ざってしまいます。
サラワク、サバ、そして特別区
マレーシアの制度を調べていると、連邦政府の制度だけでは説明できないことが少なくありません。
サラワク州には、連邦政府のMM2Hとは別にS-MM2Hがあります。
サバ州でも独自制度をめぐる動きがあります。
現在の連邦MM2Hには、Silver、Gold、Platinumに加え、SEZ/SFZカテゴリーがあります。
このカテゴリーは、現在の制度ではForest Cityを対象とした特別な枠組みとして設計されています。なお、現在のSEZ/SFZカテゴリーでは、住宅購入要件も主要カテゴリーとは異なります。制度は現在も地域ごとに異なる設計が採られています。
一方、私が2017年に購入したMediniは、このSEZ/SFZカテゴリーとは別の話です。
時代も制度も異なります。
「どちらもジョホールだから同じ」と考えるのではなく、どの時代の、どの制度の、どの地域を対象にしているのかまで確認しなければ、正確な理解にはなりません。
ただし、この記事でそれぞれの条件を詳しく説明するつもりはありません。
ここで言いたいのは、マレーシアの長期滞在制度は一つではないということです。
国の制度。
州の制度。
特別区の制度。
さらに、不動産購入については、州の土地制度や物件ごとの条件が関係します。
制度は、横一列に並んでいるのではありません。
いくつもの階層に分かれ、互いに重なっています。
私がMediniを調べたときも、最初に見たのはジョホール州の一般的な基準でした。
しかし、その一枚下にある条件まで調べたことで、別の選択肢が見つかりました。
原則と例外を分ける
制度について調べるとき、最初に必要なのは原則を知ることです。
しかし、原則を知ることと、そこで調査を終えることは同じではありません。
外国人は100万リンギット以上の住宅しか購入できない。
これが当時、私が最初に見つけたジョホール州の一般基準でした。
もし、この文章だけを見て、
「自分には無理だ」
と判断していたら、Mediniにはたどり着かなかったでしょう。
一方で、例外だけを見て、
「ジョホールでは外国人も安い住宅を自由に購入できる」
と考えるのも間違いです。
一般基準とは異なる取り扱いには、対象地域、物件、申請方法、時期などの条件があります。
例外を一般化してはいけません。
原則と例外のどちらか一方だけを見るのではなく、両方を分けて理解する。
これは、制度と向き合ううえで非常に大切なことだと思います。
原則があるから、例外の意味が分かります。
例外があるから、原則だけでは見えなかった選択肢が見つかります。
調べれば、永遠の正解が見つかるわけではない
ここまで読むと、制度を詳しく調べれば、必ず最適な答えが見つかるように感じるかもしれません。
しかし、私がMM2Hから学んだのは、それとは少し違うことでした。
私は制度を調べ、Mediniを見つけ、コンドミニアムを購入しました。
その時点では、自分なりに合理的な選択だったと思います。
けれども、その後MM2Hは二度、大きく変わりました。
最初に想定していた制度環境は残りませんでした。
つまり、どれほど詳しく調べても、将来にわたって変わらない答えを手に入れられるわけではありません。
制度を調べる目的は、永遠の正解を発見することではないのでしょう。
その時点で存在する選択肢の中から、自分にとって最も現実的なものを見つけること。
そして、制度が変わったら、再び調べ、生活設計を組み直すことです。
Mediniを購入した判断が、現在のMM2H制度から見て最適だったかどうか。
そのような問いには、簡単には答えられません。
現在の制度は、2017年には存在していなかったからです。
未来の制度を知ったうえで、過去の判断を下すことはできません。
私たちが判断できるのは、その時点で分かる事実と、自分の状況を材料にした場合だけです。
重要なのは、制度が変わらないことを期待することではありません。
変わったときに、もう一度考えられる余地を残しておくことだと思います。
私に残ったもの
結果として、私はMM2Hを取得しませんでした。
制度は変わりました。
Mediniの街も、購入時に描かれていた未来とまったく同じ形で発展したわけではありません。
それでは、この経験に意味はなかったのでしょうか。
私は、そうは考えていません。
コンドミニアムという資産が残ったから、というだけではありません。
それ以上に残ったのは、制度を調べる方法でした。
制度の名称だけを見ない。
ビザと不動産を分ける。
国の制度と州の制度を分ける。
原則と例外を分ける。
昔の条件と現在の条件を分ける。
一つの説明で分かったつもりにならず、どの管轄の、いつの情報なのかを確認する。
そして、自分に使える選択肢が本当にないのか、もう一段深く調べる。
この考え方は、その後、別の国のビザや税務、銀行、保険、永住権について考えるときにも役立ちました。
制度に不満を言うだけなら簡単です。
私も、100万リンギットの壁を知ったときには「ちくしょう」と思いました。
2021年の新条件を見たときには、「超金持ちしか無理じゃん」と思いました。
現行制度に住宅購入条件が入ったときには、「買った意味ないやん」とも思いました。
感情としては、それでよいと思います。
けれども、その感情だけで終われば、生活は動きません。
制度を正確に理解する。
自分に関係する部分を切り分ける。
利用できる合法的な選択肢を探す。
見つからなければ、別の方法を考える。
制度が変われば、また組み直す。
その作業を続けるしかありません。
制度を、動く条件として見る
暮らしを制度に合わせるだけでは、いつか苦しくなります。
一つのビザがずっと同じ条件で続くことを前提にする。
一つの税制が変わらないことを前提にする。
一つの銀行口座や保険が、居住地を変えてもそのまま使えることを前提にする。
そのように一つの制度へ生活全体を預けてしまうと、制度が変わったときに、生活そのものが立ち行かなくなる可能性があります。
だからといって、制度を無視して暮らすこともできません。
私たちの生活は、ビザ、税務、住宅、銀行、保険、医療など、さまざまな制度の上に成り立っています。
必要なのは、制度を動かない土台として見るのではなく、変化する条件として生活設計に組み込むことだと思います。
制度は変わる。
数字も変わる。
管轄も変わる。
例外がなくなることもあれば、新しい選択肢が生まれることもあります。
その変化を完全に予測することはできません。
しかし、一つの制度が変わっただけで生活全体が崩れないように、複数の選択肢を持つことはできます。
ビザと住宅を分けて考える。
居住資格と税務上の居住地を分ける。
現在の生活と将来の生活を分ける。
一つの国だけでなく、別の可能性も残しておく。
これが、私の考える「生活設計整理法」の一部です。
MM2Hが教えてくれたこと
私がMM2Hについて調べ始めたのは、マレーシアに移住すると決めていたからではありません。
将来の選択肢を一つ増やしたいと思ったからでした。
その途中でジョホール州の100万リンギットという壁にぶつかり、さらに調べてMediniを見つけ、2017年にコンドミニアムを購入しました。
その後、MM2Hは2021年に大幅に厳格化され、さらに現在のカテゴリー制へと再設計されました。
最初に思い描いていた道筋は、途中でなくなりました。
それでも、調べたことが無駄だったとは思いません。
私が手に入れたのは、MM2Hそのものではありませんでした。
制度には原則と例外があること。
複数の制度が階層になって重なっていること。
同じ名前の制度でも、時期によって中身が変わること。
そして、その時点で自分に使える道を探し、状況が変わればもう一度考え直すこと。
暮らしを制度に合わせるだけでは、いつか苦しくなる。
制度を読み、自分に使える部分を探し、変わればまた考える。
私が手に入れたのはMM2Hではなく、そうやって生活を組み直す方法だったのかもしれません。
参考資料・一次資料
※制度は変更されるため、実際の申請や不動産購入に際しては、必ずその時点の政府機関、州政府、認可事業者および専門家へ確認してください。
1.現在のMM2H制度
Malaysia My Second Home公式サイト
マレーシア観光・芸術・文化省(MOTAC)
https://www.mm2h.gov.my/
現在のMM2Hが、Platinum、Gold、Silver、SEZ/SFZのカテゴリーで構成されていることを確認できます。
MM2H Category Overview
マレーシア観光・芸術・文化省
https://www.mm2h.gov.my/category/overview
各カテゴリーの定期預金額、年齢要件、パス期間などを比較できます。Platinumは定期預金100万米ドル・20年、Goldは50万米ドル・15年、Silverは15万米ドル・5年とされています。
MM2H Silver Category
マレーシア観光・芸術・文化省
https://www.mm2h.gov.my/category/silver
Silverカテゴリーについて、60万リンギット以上の住宅購入、10年間の売却制限、年間滞在要件などが記載されています。
Terms and Regulations for New Participants under the Malaysia My Second Home Programme
マレーシア観光・芸術・文化省
https://www.motac.gov.my/wp-content/uploads/2026/01/Terms-And-Regulations-For-New-Participants-Under-The-Malaysia-My-Second-Home-MM2H-.pdf
現行制度の正式な条件・規則をまとめた政府文書です。
Guide Malaysia My Second Home
マレーシア観光・芸術・文化省
https://www.motac.gov.my/wp-content/uploads/2025/12/Guide-Malaysia-My-Second-Home.pdf
主要カテゴリーおよびSEZ/SFZカテゴリーの概要と申請条件を確認できます。
2.旧MM2H制度に関する政府資料
Malaysia My Second Home
マレーシア入国管理局
https://www.imi.gov.my/index.php/en/main-services/malaysia-my-second-home-mmh2-en/
旧制度参加者の更新手続として、国外収入月額1万リンギット以上、定期預金口座、一定条件下での定期預金の一部引き出しなどが記載されています。旧制度と現行制度を区別する際の一次資料として参照できます。
FAQs – Malaysia My Second Home
マレーシア外務省・在広州総領事館
https://www.kln.gov.my/web/chn_guangzhou/faqs
旧MM2H制度の申請要件(流動資産・国外収入・承認後の定期預金要件など)です。
MM2H Presentation
マレーシア外務省・在シンガポール高等弁務官事務所
https://www.kln.gov.my/web/sgp_singapore/photo?_20_fileEntryId=1541037&_20_struts_action=%2Fdocument_library%2Fview_file_entry&_20_version=1.0&p_p_col_count=2&p_p_col_id=column-1&p_p_col_pos=1&p_p_id=20&p_p_lifecycle=0&p_p_mode=view&p_p_state=normal
旧MM2H制度に関する政府機関の説明資料です。
3.ジョホール州の外国人不動産取得
Perolehan Hartanah Oleh Kepentingan Asing
ジョホール州土地鉱山局
https://ptj.johor.gov.my/pendaftaran/perolehan-hartanah-oleh-kepentingan-asing/
外国人によるジョホール州の不動産取得について、物件区分ごとの条件や100万リンギット以上という基準を確認できます。
Maklumat Bayaran
ジョホール州土地鉱山局
https://ptj.johor.gov.my/pendaftaran/maklumat-bayaran/
外国人による不動産取得の承認手数料や、100万リンギットの最低価格基準を下回ることが認められたサービスアパートメント、SOHO等に関する記載があります。
※2017年当時のMediniにおける個別の購入条件については、現在のジョホール州公式ページだけから当時の制度全体を再現することは困難です。そのため本文では、筆者自身の購入時の確認と実体験に基づき、「規制がなかった」とは書かず、「一般基準とは異なる特例があった」と表現しています。
4.RTS Link
Johor Bahru–Singapore Rapid Transit System Link
シンガポール陸上交通庁(LTA)
https://www.lta.gov.sg/content/ltagov/en/upcoming_projects/rail_expansion/JB-Singapore_RTS_link.html
RTS Linkがジョホール・バルのBukit ChagarとシンガポールのWoodlands Northを結び、2026年末の旅客運行開始を目標としていることが記載されています。
RTS Link Project
Malaysia Rapid Transit Corporation
https://www.mymrt.com.my/projects/rts-link/
マレーシア側の公式プロジェクトページです。約4キロメートル、二駅間を結ぶ鉄道計画の概要を確認できます。
5.州独自のMM2H
Sarawak–Malaysia My Second Home Programme
https://smm2h.sarawaktourism.com/
サラワク州政府によるS-MM2Hの公式サイトです。連邦政府のMM2Hとは異なる州独自の制度であることを確認できます。
S-MM2H Frequently Asked Questions
https://smm2h.sarawaktourism.com/faqs/
S-MM2Hのパス期間、滞在要件、定期預金や国外収入などの条件が掲載されています。