こんなの、カンタンに作れちゃいそうだけどな~。



レザークラフトにハマって1年あまり。
ワタクシ、いわば、レザークラフターとしては1歳ちょっとのヨチヨチ歩きです。

ヨチヨチ歩きの子供ってのは、思うもんですよ。
「これ、ワタクシにも、できそう!」……と。
乳幼児の発達段階で生じる「万能感」というヤツですね。



ところが、オトナの世界は厳しいのです。
商品として工夫を凝らして作られたものは、一見シンプルであっても、実はなかなか、大した技術が詰まっているのです。
そうカンタンに、作れちゃってたまるもんかい。




……ということに、改めて気づかされたのは、
ヘルツの兄弟ブランドであるOrganの、ファスナー付ブックケースを使い始めてからでした。
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文庫サイズのブックカバーの周囲を、ファスナーでぐるっとくるんで本を包み込むから「ブックケース」。



このブックケース、Organがサンプル品としてブログで紹介していた何年か前から、気になっておりました。
でも、なんとなく、実物を見ると、なぜか「また今度でいいかな~」と思って通り過ぎていました。
ブックカバーとしては、ファスナーを開け閉めするわずらわしさが邪魔だったのかもしれません。

ええ。ずぼら~は、面倒くさいんです。本を読むたびに、いちいちファスナーを引っ張るのが。
本は、手に取ったら、パタッと開いてほしいわけですよ。




でも、強烈に「欲しい!」という思いがめらめらと湧いてきたのは、ブックカバーではない使い方を見た時のこと。
ヘルツのスタッフ愛用品で、ほぼ日手帳のカバーとして1年使われたものが紹介されたとき、
https://www.herz-bag.jp/special/staff/staff50/
その経年変化のカッコよさにうっとりして、「次! 絶対に買おう!!」と、決意したのでした。

……まったく、カンタンなヤツですね。




ところが。

移転して間もないOrganの店頭に、実際に足を運んで手に取ったとき、
「これ買う!」と、即決したのは、
スタッフ愛用品で定番の革のミネルバ・リスシオでなく、昨年の企画商品のサドルプルアップのほうだったのです。

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ハリがあるけれどどこか柔らかな表情を持つイタリアのミネルバ・リスシオと違い、
ベルギーのタンナーが作ったサドルプルアップは、まさに馬の鞍に使われそうな、ば~んと硬いハリのある革でした。

トラ・シワ好きのワタクシとしては珍しく、つるつるに滑らかな表情に、一目見てやられました。
硬いだけでなく、4ミリほどもある厚みで、ファスナーはぱんぱんに張り詰めています。



でも、手に持ったとき、手のひらにあたる感触は、しっとりして吸い付くよう。
撫でてみると、赤ちゃんのほっぺを連想させる肌理の細かさです。

ハードな外見とソフトな感触が絶妙にまじりあったこの革を、もう手放せなくなっていました。




ファスナーを全開すると、見た目、1枚の革に戻ります。
シンプルな構造です。
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このブックカバーの特徴は、なんといってもポケットの深さです。
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文庫サイズのカバーなのに、最も深いところで10センチもあります。
これだけ深いと、出し入れは大変ですが、半面、入れたものがしっかりとホールドされて安定します。
ノートカバーとしては、優秀な機能です。



いい革には、いいノートを入れたくなりました。
東急ハンズのバーゲンで奮発して買った「紳士なノート」です。
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深いポケットには、カードやペンを挟み込める切り込みが入っています。
カード入れやペンホルダーというパーツを足すのでなく、ポケットにすっとラインを引いただけ。
どこまでもシンプルです。

ヘルツのスタッフさんは、ここに名刺やショップカードを入れているそうです。
………が。

サドルプルアップ、硬いハリが邪魔をして、カードを入れたらカードが負けそうです……
で、やめました。
ペンを刺すこともできますが、この状態では革が硬いのでファスナーが締まりません。
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ま、切りこみは装飾として楽しむことにいたしましょう。




というわけで、紳士なノートのカバーとして使い始めて約2か月がたったころ。

表面には、オイルをたっぷり含んだ革ならではの、艶が出てきました!
手触りは、ますますしっとり吸い付く感触が強まって、一度手にしたらいつまでも撫でていたい感じです。
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シンプルなデザインなので、革の特性が強く感じられるんですね。
サドルプルアップって、いい革だな~。




う~む。ほかの革でこれを作ったら、どんな感じになるのかな~?

パーツはたった3つだし、外周をぐるっとファスナーで包めばいいだけだし。
これ、ワタクシにも作れるんじゃないかな???

……と、幼児的万能感がむくむくと湧いてきました!




しかし。
作るつもりになって、カバーをあらためてよ~~~く観察してみると、
万能感はしゅるしゅると、あっという間に縮小していきました………




たしかに、パーツはたった3つです。全体の四隅は、直径20ミリ程度のRで落とせばいけそう。
ポケットの切込みは、まあ面倒くさかったら無くても支障はないでしょう。

でも、このポケット。形がなかなか複雑です。
深いポケットにファスナーが加わっても本やノートの出し入れがしやすいよう、上下に微妙な切れ込みを入れてありますね。
隅っこはファスナーに干渉しないよう落としてあります。このひと手間が、ファスナーが気持ちよく滑らかに動く秘訣でしょう。
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ううむ。カットが難しそう。




さらに、難関は、もちろんファスナーつけです。
よく見ると、ファスナーが上下対象になっていません。
ブックカバーの上辺は直線で、下辺はRが付いています。

ファスナーを曲げ張りするとき、ずれないように、たぶん合印をするんだろうな。
ただ、上下はいいとして、真ん中の合印は、いったいどこにつければいいんだろう???

始点側と終点側が対称な形なら、単純にファスナーと革それぞれの真ん中に合印をつければいいですが、
非対称な形だと、一気に難しくなるなあ……



Organが当初、試作品をブログで紹介した時は、上辺の真ん中にもRがついていて、カバーの形は上下対称でした。
これだと、合印はつけやすそうです。
でも、定番化されたときは、上辺がまっすぐに変えられていました。
なぜか?



Organはミシンで製作しています。
ミシンで縫うときは、Rがきつい曲線は少ないほうが合理的だと思われます。
おそらく、効率化のために、上辺を直線にしたのでしょう。

ただ、そうすると、ミシンで縫いやすくなる半面、ファスナーを張り付ける作業は正確にやらないと、ゆがんでしまい開け閉めがスムーズにできなくなってしまいます。



このブックケースの特徴は、Rがきつくてもファスナーが気持ちよくするすると動くことです。
そうでなければ、買おうと思わなかったでしょう。

定番化するにあたって、たぶん、ファスナーの長さと合印の場所を正確にパターン化したからこそ、上下が非対称なブックケースができたのだと思われます。


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正確な型紙と、正確な裁断と、正確な貼り付け作業。
縫う前の段階で、これらがそろわないと、このブックケースはできないわけです。

う~~~~~む。
これは、ヨチヨチ歩きのレザークラフターには、そうとうハードルが高い………



そもそも、ワタクシは、まだ、ファスナーの曲げ張りをしたことがありません。
………って、そこからかい。




Organのブックケースをコピーするという野望は、遠いものであることを、ワタクシは実感したのでした。




さて。
手触りが最高にすばらしいサドルプルアップ。
表面が滑らかで緻密なだけに、
傷が、とてもつきやすいです!
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たった3か月で、もう、こんなに傷だらけ。
リスシオは、すぐ手で揉み込むと傷がほとんど見えなくなるのですが、サドルプルアップは消えません。




最も目立つ傷は、
布団の中でつけました。



買うときに、スタッフさんはおっしゃいました。
「サドルプルアップは、リスシオよりも経年変化がゆっくりなんですよ」



せっかちなワタクシ、じっくり熟成を待つということがじれったく思いました。
少しでも早く育てるには、どうするか?

メンズのお財布がテカテカに育っている人の共通点は、お尻のポケットに入れて持ち歩いていることです。
てことは、このブックケースも、お尻のポケットと同じような環境に置けば、早く育つのではないだろうか?
しかし、ワタクシの服にお尻のポケットはありませんし、あったところでこんなデカイもんを入れたら座ることもできません。



そこで、ワタクシ、考えました。
お尻のポケット=接触と温度=お布団の中。

で、少しでも早く育てようと、買ってしばらく、抱いて寝てたんですよね~。

ある日、目覚めたら、
いつの間にか、爪でざっくりやっていました。

ああ。




気に入ったものを抱いて寝るのは、幼児によくみられる行動です。
これも、万能感とならび、レザークラフターとしての発達段階の一過程でありましょう。
こうしてワタクシは、レザークラフターとして、一歩一歩成長していくのです。




………っていうか、
いいトシのオトナが、ブックカバーを抱いて寝るな!