つらい夜が久しぶりに来た。自分の感覚では、夜通し三十分おきのトイレだが、もっと間は空いていたのかもしれない。そこまで確認はしなかった。

 わざとやっているわけではないことはわかっている。眠れないという、かわいそうな状態なのだ。だからできるだけ母にはやさしくするつもりではいた。その方が、眠ってくれる見込みが高いことは経験上言える。

 だけど神経がすり減って、何かに当たり散らしたくなる。二階に行って枕を壁に投げつける、くらいのことをしてもよいが、深夜だし、どうせ控えめにしちゃうのだろうな。こういう時、ゲームというのもありだったが、最後に買ったハードはPS Vitaで、介護開始と同時に、もうやらないと決めて処分した。そのくせソフトのほうはまだおいてある。ダンジョントラベラーズ2とか、ガルパンとか、艦これ、フォトカノ。萌えゲーばかりだが、言い訳をすると、私は殺伐とした雰囲気が嫌いなので、同様の種類がある場合、明るい方を選ぶ。それだけのことだ。

 ゲームのほかにも楽器も捨てた。死ぬまで介護で行くという心づもりの行為だったが、まさか後悔することがあるとは。

 パソコンでできるフリーソフト、キングオブキングスGが以前好きだったことを思い出し、ダウンロードするも、開くなとWindowsがいつもより強めに警告してくるのでやめておく。有料のゲームは、翌日になると絶対やる気をなくしているはずなので、結局手を出さない。まあ正解だろう。

うじうじと考えていると、一応気分が落ち着いてくる。いつも通りだ。

 いろいろ考えていたら午前三時になっていた。いつもなら私が起きてその日の準備にかかるころ合いだ(介護終了後に考えると、ものすごい時間に活動していたのだな。よく健康を保てた)。つまり一日を全く寝ないまま次の日を迎える公算が高い。

 ちょっと気になることがあった。たいしたことではない。少しの睡眠不足なんて何回もあったことなのに、こんなにいら立つものかなあ、という気がして、ひょっとすると私の体力が母以上の速さで衰えつつあるのではないかと思ってしまったのだ。

 それで一日確認してみようということにした。あまり堪えてないようだった。大きな疲労感はなく、普通に一日をこなせた。エナジードリンクの類は飲んだが、眠気を打破するやつは飲まなかった。どうせどちらも有効成分はカフェインなのだろう。買い置きしてあるのだが、そろそろ賞味期限を確認しておいた方がよいのかな、というくらい使ってない、ありがたいことに。

 眠らせてもらえないかも、という恐怖感を抱いたのは、久しぶりのことだから気持ちが整理しきれなかっただけだろう。一日程度なら全く平気。今日のことをちゃんと覚えておいて、次であわてないようにしたい、と思っただけだ。

 眠ろうとしたことは事実なので、当人の認識はともかく、途中でかなり意識は飛んでいるのかもしれない。それにしても、運転中も眠くはならないし、疲れていることは確かだが、本当に通常という感じ。母も、途中で昼寝を試みたが、眠ることはなく、夜も疲れがたまってばったり、ということはなかった。ということは、前夜の状態は、どちらにとってもあまり負担ではなかったということなのか。

 介護開始時は、今日は運転したらさすがに危ないんじゃないか? と思える日が結構あった。椅子に座ると、とたんに眠ってしまうこと多々。夢までいかない、半睡の部分で、目をつぶって運転している情景を思い描いて気持ち悪さを味わう。眼を開けて、自宅の居間であることを確認してほっとする。

 あの頃、どの程度の頻度でこういう夜があったのか。例によってすっかり忘れている。前年、前々年あたりは三日に一回はこんなことがあったとしても頑張ろうと、ひそかに考えたことは覚えている。しかし幸い、そこまできついことにはならなかった。しかし考えたということは一応かなりつらい夜もあったのだ。

 ものすごくつまらない発見があった。前に、トイレの壁紙に海坊主風の妖怪が見えて、その後わからなくなったのだが、その時はバフォメットとベルゼブブが比較的大きめの映像で見えた。角が山羊のように生えていたからバフォメット、格子模様の眼に見えたから蠅の王ベルゼブブ。ちょっと心が弱くなったときに見えるのか。

 家での杖なしは続行中。バランスが危ういときはいっそ車椅子にする。ただ、玄関を出て車までが、段差のせいなのだろうが杖がないと足がすくむ。そこをどうしたものか。