これは私とハナの大冒険の話だ。

 

私が小学3年生の頃。

その日は早く学校が終わって家に帰った私は

母親がまだ帰ってきてないのを確認する。

「遊びに行こうかなぁ」

母はその頃漁師の手伝いのような仕事をしていて

海の近くの倉庫で浜仕事をしていた。

そこはいとこの経営している職場なので

みんな親戚だったから子供の頃はよく遊びに行っていた。

家からの距離はそんなに離れてなく

小学生の足だと20分くらいで着く。

なので、いつも通り今日も遊びに行こうとした。

 

用意をしている時、ふと真っ黒なハナが目に入り

何を思ったか私は

(ハナを連れて行こう!そしたらお母さんびっくりするかも!)

とひらめいてしまい

「ハナ!外に連れてってあげる」

そう言ってハナをリュックの中に入れてしまった。

今思うととんでもないことをしているな私。

でも、子供の頃の私はそれがいけないことだと思わなかった。

好奇心と子供心で目をキラキラさせていた自分がそこにいただけだった。

 

家から出て、ハナが入ったリュックを両手で抱き抱えて歩いた。

子供ながらに酸素がないと危ないと言うことは知っていたので、ちゃんと隙間は開けていた。

その隙間からハナがニャーニャー鳴いていたのを覚えている。

自分の感覚的にはよく犬を専用のカバンに入れて歩いている人たちと同じことをしていると思ってた。

大きな国道を超えて

公園を超えて

道路を渡って

ちょっとした坂道を登って

ようやく着いた。

坂の上の建物のすぐ隣には海がある。浜の匂いがした。

 

建物の扉を開けて中に入ると母と叔母がいて仕事をしていた。

いとこの職場は帆立の養殖をしていたので、

ながーいロープにテグスを結んで、そのさきにさらに小さいホタテを結んで

海に戻して大きくなったら回収するための、

そのながーいロープにテグスを結ぶ作業をしていた。

「お!来たんだ〜」

なんて言われながら母の元に行く。

私はビックリするであろう母を想像しながらリュックを下ろしファスナーを開けた。

 

「見てみて!連れてきた〜!」

 

次の瞬間リュックから飛び出したハナは

ビューーーーっと一目散に建物の端っこまで走っていった。

 

「何やってんの!!連れて来たの!?」

 

思ってた反応と違ってこっちがびっくりする。

とりあえず先にハナを捕獲しなきゃと思った母と叔母は急いでハナのもとに向かうが

木の机や使わないものが置いてある場所に隠れてしまったものだから

「やばい!黒くて見えない!」「こっちこい!こっちこい!!」「ハナ、おいで。おいでぇぇ!」

としばらく苦戦していた。

結局最後は母が潜り込んで捕まえていた。

悪いことをしたわけじゃないハナが1番大変な思いをしていた。

意味わからんよな、ハナ、、。

 

こっぴどく叱られた。

私はみんなが思ってた反応をしなかったこと

それを見てしてはいけないことをしてしまったこと

ハナを見て可哀想なことをしたんだとようやく気づいたのだった。

 

 

もうだいぶ前にハナは天国に行ってしまったけど

ふと最近思い出して

(ごめんね、ハナ。)

なんて謝ってみる。

ほんとごめんよハナ。

 

でも最初で最後のふたりの大冒険だったなぁ

一生忘れない思い出になったなぁ

 

せっかくだから

母にも話してみる

 

 

 

 

覚えてなかった

 

 

 

 

 

 

2012.07.01のハナ