3月も、もうすぐ終わる。 | フェンリルの胃袋

 深夜に腹がすいた。

 普段なら最寄のコンビニへ行くところだが、今日は何となく気が進まない。私も大分いいかげんな性格をしているが、それでも後一歩通常の精神には戻っていないのかもしれない。通常の精神ってなんだろうとか考え出すとよけいドツボなので適当に頭を空にする。

 とりあえず自転車を漕ぎ出す。ローソンは素通りする。

 時間は2時を越えている。街は眠りにつき、信号機さえもその仕事を放棄してやる気なさげに明滅している。風は冷たいが身も凍ると言うほどでもない。とっくに今日の営業を終えたスーパーの広い駐車場の片隅には、エンジンがかかったままの車が一台止まっていた。

 この時間では、コンビニ以外に食料を確保できるところを思いつかない。15分ほど自転車を走らせれば吉野家があるが、そこまで行くのも馬鹿馬鹿しい。・・・まあいっか。吉野家で。他にたいして思いつくところも無いし。

 吉野家につくまでに通り過ぎたコンビニは4軒。そのうちローソンが3軒。なんか間違ってる気がする。ちなみに駅は2駅。便利なんだか便利でないんだかわからない土地だ。

「いらっしゃいませー」

 特盛と卵と、ごぼうサラダ。650円。

「ありがとうございましたー」

 外にあった自販機でポカリスエットを買う。150円。

 

 来たときと同じ道をたどって帰りだす。

 自転車漕ぎつつポカリを煽る。染みこむ沁みこむ。

 途中、駅の近くでパトカーに追い越された。

 私を追い越したパトカーはそのまま速度を落とし路肩に止まる。どうも私に職質を掛けたいようだ。まあ、過去にも何回かこういうことは有った。私の自転車はそんなに上等なものではないから、ライトなんてすでに壊れているのだ。無灯火で深夜にふらふら漕いでいる方が悪い。

 パトカーから下りてくる警官を見て、おや?と思う。通常彼らは3人もしくは4人で組んで行動していたと思っていたが、今日はどうやら2人で警邏しているようだった。しかも彼は、随分前にも同じように私を呼び止めた人じゃないか?あっちは覚えてるかどうか知らんが、私は覚えてるぞコンチクショウ。

「ちょっとキミ」

 はいはい、名前と、防犯登録番号と、ついでに今は吉野家に行った帰りですよ。

「あれ。前にも呼び止められたことがある?」

 何回かあります。

「そいつはすまなかったね」

 いえ、お仕事ご苦労様です。

 むう、私は思ってたより不機嫌な顔をしていたようだ。

 私の告げた情報をメモして車に戻ると、どこかと連絡を取ってからまたこちらに戻ってきた。

「それと、これ、今捜索願が出てる人が居るんだ。」

 そういって写真と特徴の書かれたビラを手渡してくる。

「もし見かけたら、そこに書いてある番号に連絡してくれ。」

 そういうとパトカーはまた走り出した。いや、ホントお仕事ご苦労様です。頭が下がります。


 行きがけに見た車はまだ駐車場の同じ場所に止まっていた。春だからなんだろうか。

 豚丼を食うのにたっぷり45分以上を掛けて吉野家まで行って戻ってきたが、そういえば家の前の自販機にもポカリはあったな、とかどうでもいいことに目が行く。

 尋ね人のビラは髪飛行機にして飛ばした。久々に折ったからうまく飛ばなかった。

 行く前に出した露店は売れてるだろうか、売れるわけないよな。とか考えつつ靴を脱いで部屋に戻る。(コレは意外なことに売れていた。プラントボトル2kが50個。ちょっとびっくりした。次は3kで並べておいた。)

 ただいま。と声を掛ける。

「おかえりなさい」

 と眠そうな声が返る。

 僕は今日はじめて、この人の名前を知った。