推理作家 有栖川有栖は半年がかりで書き上げた我ながら自信作の長編の見本を見に大阪から東京の出版社へ上京してきた。そこに同じ推理作家である赤星楽がやってきて、しばらく雑談をした後、彼は「行ってくる。『海のある奈良』へ」と言い残し、旅立っていった。翌日、福井の小浜で彼の他殺死体が発見された。赤星と最後に話をした関係者として、また、推理作家であるだけに赤星が書こうとしていた作品が気になり、火村英生と共に調査を開始する。『海のある奈良』とは一体何のことなのか?


「海のある奈良」?奈良は誰でも知っているように海無し県、そんなものが存在するわけないじゃないか…

が、ミステリー作家が言い遺したことだ。何かひねりがあるのだろう…


奈良と若狭(福井県)の歴史的な関係から『海のある奈良』は赤星の死体が発見された福井県のことだと思われた。が、『海のある奈良』はそんなちょっと調べればわかるようなところではなかった。

それが赤星の不運でもあったのだろうと思う。


よかれと思ってしたことが逆に不幸な結末を招くことがある。この事件の根っこもそういうところにあったのだろう。


最後にこの小説の『海のある奈良』が何であったのかはわかったが、そんな大昔のことを持ち出されてもねぇ…

海のある奈良に死す (角川文庫)/有栖川 有栖
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