【183】私の答え | 〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

筆者のリアル体験物語。「社内恋愛」を題材にした私小説をメインに、創作小説、詩を綴っています。忘れられない恋、片思い、裏切り、絶望、裏の顔―― 全てが入った、小説ブログです。


『逢瀬は、プラットホームで。』 ~ epilogue ~



とうとう・・・

彼が、核心部分に触れてきた。



『俺が、こんな事を聞いていいのか・・・

 でも、ずっと聞きたかったから・・・ いいかな?』


「ん? 変なコトでなければ、いいよ」



井沢さんは、

ずっと深刻そうな様子で話してくる。


私が おどけていられるのも、そろそろ限界・・・。



『最後に会った頃、その・・・

 椎名ちゃん、まだ・・・ 俺のこと ―――・・』


「・・・ もう。 変なコト以外って、言ったのに」


『・・・ うん、ゴメン・・・』



いきなり、私の過去の想いを問いかけられて、

ドキッとはしたけれど、

それ以上の波立つ感情は無かった。


それが、過去の想いを話すだけだと、

自分で納得しているからなのか、割と冷静だった。



「嫌いだったら、あんなに泣かないよ。

 ・・・ 全然、気付かなかったの?」


『・・・・・・ いや ・・・』



短い返事だけで、

彼が考えていることが伝わってくる。



そう。

全ての鍵は、彼の手の中にあった。



彼は、その鍵を持ったまま、

私の肩を放して、電車を降りた・・・。



それを、後悔しているの?



「ん・・・ でも、そんな事も懐かしいよね。

 イロイロと、若かったなーって思うもん」



無邪気で、好きな人に真っ直ぐで。

自分でも健気だと思ってしまうほど、彼だけを想っていた。



本当はね、私は あなたと ――――・・




『ホント、若かったな・・・。

 俺の場合は、それだけじゃなくて、何て言うのか・・・』



上手い言葉を見つけられないのか、黙ってしまう。


彼の言葉を急かすのも、軽口を叩くのも違う気がして、

ただじっと、次の言葉を待つ。



『・・・ 昔話、なんだよな』


「まあね。お互いに、歳もとったし」


『うん。それは、否定しないけど』



少し笑ってくれて、空気が和らいだ。


二人の間に張り詰めていた、

何かから解放されて、小さく息をつく。


二人・・・というより、私だけ?

私に気持ちが残っているから、

知らずに肩の力が入って、緊張していたのだろうか?



少し笑って、

幾分か、私の気持ちが楽になった頃合いで、

井沢さんは、もう一度、私の心に踏み込んできた。



『・・――― で、考えてくれた?』


「・・・?  何を?」


『聞いていなかったのか? 昼間、言ったこと・・・』


「・・――― あ・・・」


『返事を、聞きたいんだ』



“会ってほしい” と言われた返事を、まだしていない。



もう・・・


先延ばしには、出来ないね。


誤魔化すことも、出来ないよね。



答え・・・?


そんなの、決まってるよ。




「・・・ ゴメン。 会えない―――・・」



受話器に、小さく呟いていた。




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