後記(学位報告と近況) | 英国MBAへの挑戦ブログ

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イギリス(スコットランド)の大学院(ビジネススクール)でMBAを目指すことになった40代男の冒険記録です。

 早いもので帰国してからもう3カ月が経った。長いブランク明けの日本での日常に、ちょっと最初はギクシャクしながらも自分を順応させてきたというのが正直なところ。このブログは、前回の更新をもって完結していて、もう記事を追加することを考えていなかった。だけど、先日、ある人物から「学位結果報告のため更新したらどう?」というすすめが。他でもなく、リレーブログ(自称)のバトンを受けてくれて、今まさにグラスゴーで頑張っているリック氏からの提案だったので、ならばと思い、後記という形で更新することにした。

 

 修士論文を9月頭に提出してから約2か月、たぶん合格は大丈夫だろうと信じてはいたけど、やっぱりちょっとは不安もあったので、やきもきしながら過ごしていた。そして11月3日、大学のサイト上でようやく採点結果が発表された。結果は、A5だった。自分としては上出来で、十分満足である。(成績分布図は公表されなかったのでA5がクラスで何番目なのかは不明だけど。)で、MBAの学位もmerit(B2)で獲得することができ、先日卒業証書も送られて来た。↓

 

 総合成績がdistinctionに届かなかったのは残念と言えば残念。しかし、前半の撃沈ムード(一時は絶望状態笑)を思えば、正直よく上がった方じゃないかと思う。スタートで出遅れるのが常で、中盤から後半にかけて調子を上げていくというのが一応、自分の特性だというのは、なんとなく自認している。競馬で言えば差し切れない差し馬みたいな(別に競馬ファンじゃないですが)。幸いこの留学もそうして後半上昇し、精一杯やって、特に最後の修士論文で一定の評価をもらえたというので満足している。

 

 帰国してからの日々についてひとこと。仕事に復帰したものの、小さな地方都市が本拠なのでまず英語を使うことがなく、MBAで学んだ知識も今のところあまり活躍しておらず、留学と仕事が一向にリンクしてはいない。従前のポジションに戻っただけという状態なので、正直に言えば現在の職務と自己のキャリアに関する願望との間に構造的なギャップがあって、いまモチベーションが高いとは言えない。残念ながらそれが本音・・。

 

 MBA後に自由にキャリアチェンジしていく人たちをちょっと羨ましく思ったりもする。それでも、責任の重い立場にあり、日々、自分に求められる仕事があり、自分の能力を活かせる事案もあり、それに応えていきたいという欲求をその都度感じるのも確かだ。一番の人生目標は別のところにあるのでは?という気持ちもあり、その心理をどう扱うべきなのかは、ちょっと未だ判断がつかない。でも少なくとも、自分にとっていま責任を放棄してキャリアチェンジを目指すというのは、あまりにも違和感が大きすぎるので、そこに道理はないんだと思う。

 

 留学中に再認識したとても大事なことが一つある。それは学問、というか研究の楽しさ。人が書いた多くの論文や資料を読んで、そこから仕入れた知識をもとに自分なりの見解を作り上げていくという作業は、もちろんしんどいけど、それが自分の興味のあるテーマであれば、やればやるほど静かで心地のいい興奮とか喜びを与えてくれるものだということ。(この歳でそれを認識するとは出遅れも甚だしいけど・・。)

 

 比べて見ると、ビジネスの世界では必ず相手(つまりお客)があって、相手の事情とか要求(時には感情)に必ず左右されるし、何より経済(お金)に支配されてしまう。その点、研究の世界には自由がある。何をテーマにして、どんな資料を読んで、どういう論拠を立てて、どんな意見にまとめるかというのを、基本的に自分で決めて進めることができるから。まあ能力があるかどうかは別として、グラスゴーでの特に修士論文の執筆をきっかけに、自分はビジネスよりもその研究の分野にどうしても魅力を感じるようになった。

 

 そこで、今後ももっと研究を続けたいと思う。そして仕事もちゃんとやる。今の仕事という責任をまずはきちんと果たしながら、その仕事にも関わるテーマで自分の研究をやってみるという作戦を帰国前から思いついていて、どうやらそれは本物の願望で、今のちょっと不安定な心理でも取り組むことができる最も自然な道だと思う。それがもし次なる学位の取得につながれば、その後、また新しい道が見えてくるかも知れないという目論見もある。どっちにしろとても難しい目標であることは間違いないけど。

 

 仕事に復帰してから、さっそく色んな現実的で具体的なトラブルとかプレッシャーの波が次々に押し寄せてきた。で、そういう波をかぶると、やっぱりどうしても精神的に圧迫されることがある。最近も1週間くらいちょっと塞ぎ込んだことがあった。それでも、そういうとき、記憶に深々と刻んである留学中のグラスゴーやその周辺の情景を思い出すと、どういうわけか不思議と心が安らいでくる。留学生活も決して楽なものではなかったというのに、何故かその記憶はそういう風に役立ってくれる。

 

 たぶんその理由の一つは、単純に歴史の深いスコットランドの街とか自然の美しさが印象に残っているからであり、もう一つは、その地で頑張って達成感を得たからなんだろうと思う。それを思い出すことで冷静になり、そうやってぶつかってくるトラブル群に、気負わずに自然体で、でも真摯に対処してみようという活力が湧いてくる。要するに、かなりレアな勇気と平静の源泉を、スコットランド留学という自分の経験が与えてくれたと気づき、それを本当に有難いと思う。その力がどこまで通用するのかわからないが、それを大事に抱えながら、次の目標に向かおうかと。

 

 と、また(リック氏の期待以上に)長々と書いてしまいました。これで、ほんとに完結としたいと思います。グラスゴーにいる留学仲間の方たちへ。成功を祈ります。