対潜迫撃砲

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ヘッジホッグ。イギリス製で、第二次大戦中の代表的な機種。

スキッド。イギリス製で、第二次大戦中の代表的な機種。

M/50 375mm対潜ロケット砲。スウェーデン製で、第二次大戦後西側の代表的な機種。

RBU-6000 スメルチ-2。ソ連製で、第二次大戦後東側の代表的な機種。

対潜迫撃砲(たいせんはくげきほう、英語: Anti-submarine mortar)は、爆雷を投射する艦載迫撃砲システムの総称。対潜臼砲とも称される。

 

目次

概要

第二次世界大戦中、水上艦艇が使用する主たる対潜火力爆雷であり、当初、その主たる投射手段は爆雷投下軌条と爆雷投射機であった。爆雷投射機は1930年代に実用化されたもので、少量の火薬による爆発ガスによって自艦から離れた舷側方向へと爆雷を投射することにより、水上艦の航跡上から外れた海中にいる潜水艦へも被害を与えることが可能になった。また、のちには散布パターンを造って投射するようになった。しかし一方で、軌条による投下と同様に、投下位置は艦の側方ないし後方とならざるをえなかった。また、水上艦艇と潜水艦の運動性能に開きがあり、また投下直前にソナーを壊さないようにソナーを止める必要があったので、最後は潜水艦の位置を推測で投下する必要があり、効率が悪かった。

このことから、爆雷を前方に投射するものとして、イギリス海軍によって開発されたのが対潜迫撃砲である。最初に開発されたヘッジホッグは、小型の着発式爆雷を投射するスピガット・モーターを多連装に配したもので、初の実用対潜前投兵器として連合国において広く使用された。しかしその後は、炸薬量向上の要請およびソナーの精度向上に伴って、ストークス・モーター式の大口径迫撃砲を複数連装化するように方針転換し、1944年よりスキッドが実戦投入された。日本海軍では、大戦末期の1945年に駆逐艦澤風15cm9連装対潜噴進砲なる対潜迫撃砲が装備されているが、澤風自体は海軍対潜学校練習艦としての地位に留まり、対潜噴進砲も試作兵器の域を出ないまま、実戦を経ることなく終戦を迎えている。

アメリカ海軍では、第二次大戦時に用いられた各種の対潜兵器の撃沈力について、下表のように見積もっていた。これは、攻撃誤差の分布と支配容積をもとに算出されていた[1]

各種対潜弾幕の理論上の効果
兵器の種類 潜水艦深度 爆雷数 予期効果
深度爆雷 100-300 ft
(30-91 m)
9発 6%
触発爆雷 24%
ヘッジホッグMk.10 24発 28%
スキッド 200±30 ft
(61±9 m)
6発 26%

戦後においても開発がすすめられ、アメリカでは速射性能を高めたウェポン・アルファが、イギリスでは305mm口径・3連装のリンボーが、フランスでも305mm口径・4連装の機種が開発された。ただし50年代以降は、爆雷をロケット弾として射程の延伸を図る方向で進化が進められることになり、西側においてはスウェーデンボフォース社が開発したM/50 375mm対潜ロケット砲が、東側においてはRBU-900に始まるRBUシリーズが広く配備された。日本語文献においては多くの場合、これらは対潜ロケットと呼称されている。

ただし1950年代後半より、高速の原子力潜水艦を捕捉するには無誘導の爆雷では限度があることが指摘されるようになり、誘導魚雷の投射手段が開発されるようになった。アメリカは、中距離ではロケットであるアスロック、遠距離での無人ヘリコプターであるQH-50 DASHによって魚雷を運搬・投射することとした。一方、ヨーロッパにおいては、イギリスの中距離魚雷投射ヘリコプターのように、有人の哨戒ヘリコプター艦載機として運用されるようになっており、中距離以遠での対潜戦闘はこれに任せることが主流となり、のちにアメリカもLAMPSコンセプトによってこれに追随した。この風潮の中で、対潜迫撃砲の運用は徐々に縮小されていった。一方、東側においては、沿岸域での対潜戦闘を重視するというドクトリンも関連して、ロケット爆雷を投射する対潜迫撃砲は幅広く運用され続けており、代表的な機種であるRBU-6000は、現在の新型艦においてもなお搭載されている。

代表的な機種

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

イギリスの旗 イギリス

イタリアの旗 イタリア

 スウェーデン

ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦/ロシアの旗 ロシア

中華人民共和国の旗 中国

 ノルウェー

 

出典

  1. ^ CHARLES M. STERNHELL; ALAN M. THORNDIKE (1946年). “ANTISUBMARINE WARFARE IN WORLD WAR II (PDF)” (英語). 2014年1月12日閲覧。

関連項目

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