トランプ (カード)

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曖昧さ回避 トランプ」のその他の用法については「トランプ (曖昧さ回避)」をご覧ください。

フランスのカード。(portrait français を遊ぶ時のセット。)「1」から始まる(「A」ではない)。Roi de cœur ロワ・ド・クール(=ハートのキング)が1枚見せてある。フランスのカードは、王などに具体的な人物像があてはめられていて、絵が1枚1枚異なっている。

英米式カードの52枚セット。これにジョーカーが加わる。英語圏で普及。明治以降の日本でも普及した。

トランプは、日本ではカードを使用した室内用の玩具を指すために用いられている用語で[1]、もっぱら4種各13枚の計52枚(+α)を1セットとするタイプのものを指して言うことが多い。「プレイング・カード」「西洋かるた」とも。多種多様なゲームに用いられるほか、占いの道具としても手品(マジック)の小道具としてもよく用いられる。

起源についてははっきりしておらず諸説あるが、中国など東方で発生したものがイスラーム圏に、そしてヨーロッパに伝えられた、とするのが、ひとつの有力な説である(→#歴史)。日本では16世紀にポルトガルからラテン・スートのタイプが伝来し普及したが、明治以降の日本では英米式のカードが普及している(→#日本への伝来#日本で一般的なカード)。

 

目次

呼称

日本語では「トランプ」と呼ぶ習慣になっている。英語のtrumpは本来は幾種類かのゲームのルールにある切り札の意味で、なぜそれがカードを指して使われるようになったかはあまりはっきりしない。また切り札の意味で「トランプ」という語をゲーム中で使うコントラクトブリッジなどでは注意が必要である。16世紀にポルトガルから伝来したので、ポルトガル語 cartaを音写して以前には「かるた」とも言った。

世界の各地域によって呼び方は異なる。南欧各地では、スペイン語の「baraja・naipes」のようにトランプを意味する専用の語がある。一方で、フランス語「carte à jouer キャルト・ア・ジュエ」、英語「playing cards」はともに「遊戯用カード」という意の一般的な表現にもなっている。

日本語の場合のような捻れ現象は珍しくなく、特定のゲームの名前がトランプを指すようになった言語もある。例えばギリシャ語の「τράπουλα(トラプラ)」は、ベネチアの古いゲームの名であるトラッポラに由来し、中国語の「撲克(プーコー)牌」やタイ語の「ไพ่ป๊อก(パイ・ポーク)」はポーカーに由来し、またベトナム北部で「tú lơ khơ(トゥー・ロー・ホー)」と呼ぶのは、ロシアで人気のあるドゥラークというゲームの名前が中国語経由で伝わったものである。インドネシア語の「kartu remi」は、ラミーに由来する。近年では、カードの名称ではないが、マイクロソフトがWindowsにクロンダイクというゲームをソリティアという名称で添付したため、「ソリティア」という1人ゲームを指す総称が、「クロンダイク」という1種類のゲームを指して(誤って)使われている、という例がある。

日本語の「トランプ」の他、マレーシアの「daun[2] terup」の「terup」も英語の「trump」由来である。

歴史

トルファン市で発見された1400年頃の中国の遊戯カード (9.5×3.5cm)

起源

起源は諸説あり、古くは古代エジプトに由来するとする説などが存在していたが、現在中国説が最も有力であり、また、全て東方に発生したものが欧州に移入されたとする点では一致している。これら東方に発生したものを西アジア方面から復員した十字軍サラセン人などの手によって欧州に伝えられた可能性が高い。

古代エジプト起源説
1816年イギリスのサミュエル・ウェラー・シンガーが自著「プレイングカードの歴史」にて紹介した古代エジプトの神秘哲学がタロットというトランプに表象されていることから非常に古くからエジプトにトランプがあったとする説。しかし近年の研究で、現存する最古のタロットカードよりも古いトランプの現物や記録が存在することなどから、タロットの方がプレイングカードから派生したと考えられ、この説に関しては現在は否定的な意見が多く、最近ではタロット古代エジプトの関係も否定されている。
インド起源説
チェスとともに6世紀ごろのインドで発祥したとする説。ジプシー7世紀ごろにインドから欧州に伝来したとされるが、信憑性は薄いとされている。
中国起源説
12世紀以前の中国に「葉子」というトランプの一種があったことから、これが欧州に伝わったとする説。ただし古い時代の葉子がどのようなゲームであったかはわかっておらず、代以降の紙牌と連続性があるかどうかもわかっていない。

アラブのカード

貨幣の7 ポロスティックの4 カップのキング
貨幣の6・ポロの4・カップのキング

トプカプ博物館所蔵の15世紀ごろのマムルーク朝のカードは、偶像崇拝に抵触しないように、絵札には人物は書かれておらず、かわりに文字で説明がされている。このためスート名と絵札の名前が判明している。完全な形で残っているわけではないが、ダラーヒム(=貨幣)、トゥーマーン(=カップ)、スユーフ(=刀剣)、ジャウカーン(=ポロ競技用のスティック)の4つのスートがあり、各スートには1から10までの数札とマリク(=王)、ナーイブ(=総督)、ナーイブ・サーニー(=第二総督)の3種類の絵札があったと考えられている。カップのスート名「トゥーマーン」はトルコ語で「万」を意味する語であり、中国の紙牌のスートである「萬子」との関連性が考えられる。ウィリアム・ヘンリー・ウィルキンソンは、漢字の「万」を上下逆さまにした形がカップになったと推測した[3]

欧州への伝来

1500年頃の3枚の遊戯カード(スペイン)

起源が定まっていないことから欧州への伝来についても諸説あるが、少なくとも14世紀には欧州各地に記録が見られることから相当数広まっていたと考えられる。欧州に最初にトランプが出現したのは14世紀前半のイタリアとされているが、スペイン説も有力。カードの構成は当時のアラブのカードのデザインを襲用している。ただし、スートのうち「ポロ用スティック」は、欧州においてはポロ競技に馴染みがなかったことから、イタリアでは儀式用の、スペインでは棍棒に変化した。

15世紀も後半になると、フランスではスートがダイヤ(♢)スペード(♤)ハート(♡)クラブ(♧)に変わり、絵札の騎士女王と差し替えられた。valet, dame, roiとなった。

このフランススタイルがイギリスに渡り、valetがjackに、dameがqueenに、roiがkingになり、英語圏に広がってゆくことになった。

日本への伝来

日本では16世紀に、ポルトガルからラテンスートのトランプが伝来した。48枚の札からなっており、ポルトガル語のcarta(カルタ) がそのまま日本語になり、ひらがなで「かるた」と書かれたり、漢字では「賀留多」「歌留多」「紙牌」などと書かれた。1597年長宗我部元親が「博奕かるた諸勝負」を禁止していることから、この頃には既にカルタが相当流行したものと考えられる。また1634年の角倉船の絵馬にはトランプをしている男女の絵がある。

また「トランプ」と呼ぶのは日本だけで欧米では「プレイングカード」と呼ばれている。トランプとは"切り札"という意味があり明治時代、入国した欧米人がゲームをしながら「トランプ」という言葉を何度も発していた為、日本人はそれをカードの名称だと勘違いしたものである。

ポルトガルから伝わったカルタをもとに日本で作られたカルタは天正かるたと呼ばれる。天正かるたはその最初の札に「天正金入極上仕上」と記してあったことから、後世そのように呼ばれた。天正かるたの枚数を増やしたうんすんカルタの名前は17世紀後半の『雍州府志』や大田南畝の『半日閑話』などに見ることができる。これら西洋カルタ系統のものは早くから賭け事に使われ、江戸幕府でもかるたの賭け事をしばしば禁じた。株札花札などは、いずれもこの系統のカルタから変化したものである。

また、日本古来より存在した歌貝(貝あわせ)などを発展させ、札を西洋かるたの様式にして作られた百人一首などのカルタは系統が異なるものである。

江戸時代にはフランス式(英米式)のスートも一部の学者には知られていた[4][5]

トランプが再び盛んに行われるようになるのは明治時代になってからである。トランプの名は1885年に出た桜城酔士の「西洋遊戯かるた使用法[6]」に見られ、カードのゲームと奇術(マジック)が紹介されている。明治では最初、米国やイギリスから輸入されていたが、やがて(英米式で)国産品もつくられるようになった。日露戦争で京都の東福寺がロシア兵の捕虜収容所となり、1902年に彼らのため任天堂が製造を始めたのが契機とされる。任天堂はその4年後に国内向けの販売を開始している。

1953年任天堂がプラスチック素材を取り入れたトランプを開発・販売。

現在ではプラスチック素材が取り入れられたトランプが大きく普及している。現在日本国内にて普通に見られるのは、国産品、欧州、アメリカ、中国、台湾からの輸入品が多い。プラスチックのトランプは従来ポリ塩化ビニルが多く使われていたが、環境問題への対応のため、最近はPETなどへの置き換えが進みつつある。

各地のカード