韓国の反日感情はアメリカが作ったもの「日本最後のスパイ」と…呼ばれた元公安幹部・菅沼光弘が朝鮮 Ⅰ

 

 

北朝鮮は日本よりも発展している!?

――北朝鮮では食糧不足で餓死する人が相次いでいると報道されていますが、実際にそうなのでしょうか?

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画像は、Wikipediaより

菅沼 1994年に金日成が死んで、その息子の金正日が最高責任者になった時、北朝鮮の経済が悪化しました。さらに自然災害の影響もあって、食糧不足で何十万という人が餓死したんです。これは事実です。そんな時、「苦難の行軍」というスローガンを打ち出しました。北朝鮮建国の父、金日成ら抗日パルチザンが日本軍と戦いながら「苦難の行軍」をして、ほぼ全員がソ連に逃げ込んだ伝説に由来します。ですから、「食糧危機や経済的困難を抗日パルチザンの『苦難の行軍』精神で乗り切っていこう」という運動をやったんです。その時の北朝鮮は、確かにあなたが言うような悲惨な状態だった。けれど、今日の北朝鮮は餓死するような状況ではありません。「国際的な制裁を受けて今も食料が不足している」という報告もありますが、北朝鮮の経済は全体的に相当良くなってきています。平壌の街はきれいだし、高層ビルもどんどん建っている。国民はみんな携帯電話を持っているし、車も走っているし、店には食べるものも豊富にあります。「いやいや平壌はショーウィンドーなので、田舎にいけば状況はひどい」という人もいます。田舎に行けば確かにレベルは落ちますよ。ですが、「苦難の行軍」の時代と今は違うんです。


■北朝鮮は特殊な国ではない!共産主義の恐るべき世界

――とはいえ、北朝鮮は怖いイメージが拭えませんよね。反逆者を残虐な方法で処刑したというニュースをよく見かけます。

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菅沼 それは何も北朝鮮だけじゃない。同じ共産主義の中国だってソ連だって、いったい何人の人がどんな形で粛清されたか。中国なんて文化大革命の時、今まで国家主席だった人が後ろ手に縛られて、若僧に引きずり回されて殴り殺されたんですよ。スターリンの時代の大粛清では、2300万人も殺害された共産党の一党独裁の世界というのは、トップだけがすべてを牛耳れるんです。トップの権力を確立するために何が一番重要かというと、イデオロギーの解釈権です。

 ロシア革命の時は、レーニンが中心となって革命を起こしました。そのロシア革命を動かしたイデオロギーは何かというと「マルクス主義」でしょう? レーニンは「マルクス主義」で革命を成就した。そして、レーニンの死後は、トロツキーとスターリンが激しい後継者争いをしました。

 トロツキーの思想は、まず世界全体を社会主義化する「革命的マルクス主義」。つまりロシアの枠を越えた世界革命なんです。ところがスターリンは「一国社会主義」という理論をぶつけてきた。スターリンは、世界革命を経なくてもロシア一国での社会主義革命が可能であると唱えたのです。

 結局、トロツキーは負けたのでメキシコに逃げましたが、そこでスターリンの刺客によって暗殺されました。当時、ソ連共産党を主導する思想は、「マルクス主義」だった。スターリンはそれを「マルクス・レーニン主義」という名前に変えた。何が「マルクス・レーニン主義」のイデオロギーかは、最高権力者・スターリンだけが解釈を主張することができる。なので、それ以外の思想を主張する人たちはすべて「トロツキスト」として粛清されるわけです。


――恐ろしいですね。

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画像は、Wikipediaより

菅沼 同じように、中国共産党のイデオロギーは、建国者である毛沢東の「毛沢東思想」です。現在の習近平総書記が昨年、「習近平思想」を中国共産党の党規約に盛り込むと発表して話題になりました。これは、大変な物議を醸したんです。つまり、「中国共産党のイデオロギーは俺が決める」という習近平の独裁宣言だったからです。要するに、共産主義の世界では、思想の解釈権を独占するための戦いが権力闘争なんですよ。北朝鮮でも、これまで次々と最高幹部を粛清した後、「金日成主義」を「金日成・金正日主義」に変え、その解釈権を金正恩が独占しました。これにより、金正恩の権力が確立したのです。


――つまり、北朝鮮という国だけが特殊なわけでなく、共産主義の世界で見れば、ごく当たり前の状況なんですね。

菅沼 だから私が言いたいのは、共産主義がもはや時代遅れだと言われる今日でも、北朝鮮がなぜこんな一党独裁体制を維持しているのか。しかも、封建時代のような3代世襲体制を取っているのかということです。それは一言で言えば、北朝鮮が長い歴史の中で育まれてきた様々な要因によって常に国家分裂の危険性があるからです。