鼻の管が外れた3秒が、人生を動かした
ALSになると、当たり前だった「飲む」という動作が、ある日突然、当たり前ではなくなります。僕も、その一人でした。ALSが進行して、わずか二ヶ月で普通の飲み方ができなくなり、さらに喉頭全摘術を受けたあと。病室のベッドの上で、僕は本気で悩んでいました。食べれるようになったけど、水分だけは、以前のようには摂れない。少しの量を飲むにも、ものすごく時間がかかる。結局、鼻から胃に入っている管に頼って、水分補給をしていました。「これから先も、飲ませる人に負担をかけるだろうし…仕方ない、水分は退院してからも鼻から入れてもらおう。」そう心の中で、勝手に決めつけていました。その管は、僕にとって命綱のような存在だったのです。ところがある日、主治医が何の前ぶれもなく、その管をスルスルっと抜き取ったのです。わずか3秒くらいの出来事でした。言葉で止められない。意思が伝えられない。もどかしさと歯痒さが、一気に込み上げました。しかし次の日から、主治医の行動が変わりました。朝と晩、1日2回。わずか200mlの飲み物を飲ませるために、先生がわざわざ病室に来る。休みの日も関係なく、です。当時の僕は、200mlを飲むのに1時間かかっていました。それでも先生は、急かさず、あきらめず、ただ一人の患者のために付き合い続けてくれた。医師になったばかりの若い主治医が、「胃ろうがないALS患者を、どうにか飲めるようにしたい」と本気で向き合ってくれている。その姿を見たとき、僕の中のスイッチが入りました。「ここまでしてくれる先生がいるなら、僕も腹をくくろう」「よし、頑張ろう」あれから二十数年。その先生とは、今でもプライベートで付き合いが続いています。一緒に講義や本を書いたり。振り返ると、あのタイミングで管を外してもらったことは、結果的に大きな転機でした。その後、ヘルパーさんと練習を重ねて、少しずつ飲めるようにはなりました。でも僕は、そこで満足できなかった。普通の飲み方が無理なら、普通じゃない方法を探せばいい。この発想が、昔から僕の「ひねくれ」です。妻は横で、「また始まった」と思っていたはずです。(笑)とにかく、自分が納得するまで試す。そのわがままに付き合ってくれるのが、プライベートアシスタント兼ヘルパーさんたちです。どんな角度が楽か。どんな姿勢なら喉を通るか。どれくらいの量を、どんなペースで入れるか。そして、美味しく味わえるか。試行錯誤を重ねて、そして遂に、理想の飲み方が出来上がりました。お互い、とても楽になりました。そして今は、動画のように、200mlを37秒で飲み干す。あの病室で、200mlに1時間かかっていた頃の自分が見たら、たぶん信じないと思います。僕もPA兼ヘルパーも、歳を重ねました。若い頃みたいに、根性だけで乗り切れる場面は減ってきます。だから今、僕が目指しているのは「どう頑張るか」より、「どう楽に美味しく味わい続けるか」。食事介助と飲水介助を、より少ない負担で、より安全に、より自然に。それが、二十数年付き合ってくれているPA兼ヘルパーさんたちへの恩返しだと思っています。ALSになると、「もう無理だ」と感じる場面が増えます。でも、普通にできないなら、普通じゃないやり方を作ればいい。医師、看護師、ヘルパー、家族、そして本人。知恵を出し合って、自分たち仕様を作っていくと、「無理だ」が「何とかなる」に変わる瞬間が、ちゃんと来ます。あの頃、病室で未来を想像できなかった僕が、今は、PA兼ヘルパーさんと笑いながら、次の工夫を考えています。追伸:在宅はお金がかかりすぎると言われた奥さまに伝えた、制度の本当の話しYouTube↓↓↓◆自己紹介ALS生活31年の会社経営者です。皆さんからゲンゾウさんと呼ばれています。ALS患者の在宅の楽しさや、困らない生き方など書いています。書籍は下のURLをクリック。フォロー、お待ちしています!https://books.rakuten.co.jp/search?g=101&maker=%E4%B8%ADALS患者の呼吸器は生きるか死ぬかじゃない。呼吸器で「自分らしさ」を守る話。%E9%87%8E%E7%8E%84%E4%B8%89&x=33&y=5◆ALS生活約31年! 中野玄三のYoutube情報チャンネルALS生活約31年! 中野玄三のYoutube情報チャンネルALS患者。ALS生活31年の経験を持つ会社経営者です。 皆さんからゲンゾウさんと呼ばれています。 ALS患者の在宅生活の楽しさや ALSでも困らない生き方について書いています。 フォロー、お待ちしています! もし大切な人がALSになったら、この乗り越え方を教えます。ALS患者の様々な問題の解決方法については、僕の体験を通して電子書籍に書いています。 電子書…www.youtube.com