‘それ’は、とても美しかった。ただそこに存在しているだけの‘それ’に、誰もが見惚れた。
皆口々に「美しい」と罵った。
‘それ’は生きていた。
確認のしようが無かったが、確かに生きていた。
朝も昼も夜も生きていた。
さらに、幾つもの感情も持ち合わせているようであった。
私がもうすぐ最後である三回目の死を迎えようとしているときも、‘それ’は、初めて眼にした時と同じ姿のまま、生きていた。
食べる事も、呼吸をする事もなく、朽ちることもない‘それ’は究極の生命体であった。
ただ、その姿がとても悲しそうに見えることにその時初めて気付いたのであった。