蜉蝣(かげろう)という虫はね。
生まれてから二、三日で死ぬんだ。
そうだが、それなら一体何の為に世の中へ出てくるのかと、そんなことがひどく気になった頃があってね。

僕は父を見た。父は続けた。
友人にその話をしたら 或る日、これが蜉蝣の雌だといって拡大鏡で見せてくれた。

説明によると、口は全く退化して食物をとるのに適しない。胃の腑を開いても、入っているのは空気ばかり。
見ると、その通りなんだ。ところが、卵だけは腹の中にぎっしり充満していて、ほっそりした胸の方にまで及んでいる。

それはまるで 目まぐるしく繰り返される生き死にの悲しみが、咽喉もとまで、こみあげているように見えるのだ。

つめたい、光の粒々だったね。