首都キーフ付近にある滑走路にまで、レドラー・スモクは、弾薬&燃料を補給するため帰還した。


『ノーマン、燃料補給したら直ぐに防空任務に向かうわよ』

『了解だ、補給を早々に済ませないとな』

 ヤナ伍長とノーマン二等兵たちは、戦場から踵を返して飛びさっていったが。


『トゥマン2、燃料補給のため帰還した…………トゥマン1は撃墜された』

 ペトロ軍曹の乗った、シュトルヒ・スモクは、滑走路に機体を効果させようとする。


『ペトロ軍曹? それは、本当ですかっ?』

『ニキータ隊長は? …………殺られたと?』

『レドラー30系の機体に殺られたんだ、だが、泣いている暇はない…………』

 ヤナ伍長は、帰還してきたシュトルヒ・スモクを眺めながら驚きの余り叫ぶ。

 ノーマン二等兵も、狼狽えながら未帰還である隊長を気にする。

 二人の質問に、ペトロ軍曹は答えながら整備班員が待機する格納庫に機体を走らせる。


 首都キーフから戦場へと、多数のパイロット達が飛びさっていったが。

 その何人かは、数敵不利を技量と勇気で埋め合わせ、ガイロス航空部隊を押し返した。


 この内、誰かは分からないが、数多くガイロス航空宇宙軍機を撃ち落とした人物が存在した。

 彼は、海洋諸国連合メディアでは、キーフのゴーストと呼ばれている。


 しかし、戦いで多くのパイロット達が命を落としたため、誰がゴーストかは不明だ。

 また、イングルス王国では、キーフのゴーストは反ガイロス国が作った宣伝だったと後に認めた。


 一方、北東部ハリキュスでも、両軍による壮絶な砲撃戦が繰り広げられていた


 ウラガーン・バッファローが、面制圧砲撃した後に、アイアンコングが射撃する。

 レッドホーンが、その援護を受けて、突撃するが、キャノリーモルガに迎撃される。


 また、戦場には防衛用に多数の対戦車地雷が埋められている。

 このため、突撃してくる大型ゾイドは脚を吹き飛ばされてしまう。

 モルガ、レヴラプターと言った小型ゾイドも大爆発を起こす。


 ガイロス帝国軍は、それでも進軍しながら工業都市ハリキュスを目指す。

 また、大規模な砲撃により、都市部を形成する住居を破壊していく。


 だが、ユクルース軍もハリキュス防衛のために、民兵隊まで戦闘に参加させている。

 しかも、旧式の軽機関銃を装備させてだ。


 しかし、ハリキュス防衛隊は急造品とは言え、コザックホースを前に出した。











 その他、青いゲーター部隊&マーダー部隊で塹壕線を構築している。


 背後には、ヘリック共和国から供与された、ゴルドスが長距離射撃を行っている。


 また、複数の野砲や重迫撃砲からも絶えず、反撃で砲弾が大量に放たれている。 



  ガイロス帝国軍は、砲撃の隙間から奇襲を仕掛けようと、部隊を投入してくる。


  セイバータイガー、ライトニングサイクス、ヘルキャットからなる高速機動隊だ。



  また、スペツナズ部隊や国家親衛隊による浸透戦術も駆使してきた。


  ユクルース軍兵士と郷土防衛隊の民兵が、塹壕線や街中で、激しい銃撃戦を繰り広げる。 



「今だっ! 仕留めたっ!」 


 「次弾装填っ!」 


  ユクルース側の砲撃を掻い潜った、ガイロス軍機動部隊は、旧式野砲を真正面から浴びてしまう。 


 市街地や起伏に隠された、砲兵陣地に砲撃を避けるため、飛び込んだからだ。



「うぉぉぉぉっ! 敵襲っ!?」 


 「撃ちまくれっ!」


  民間人の格好をした民兵は、旧大戦で使用された軽機関銃を土嚢に載せて、機銃掃射しまくる。 


  カーキ色の野戦服をきた、ユクルース軍兵士は、自動小銃を撃ちまくる。


  一方、ガイロス側のスペツナズ部隊も、物陰に身を隠しながら市街地を進んでくる。


 双方が激しい銃撃戦を展開しながら市街地を、ボロボロにしていく。



  ハリキュスは、第一次大陸間戦争&第一次大陸間戦争・後期の頃に大規模な戦火に呑まれている。


  この時期、コサックやユクルース独立派が、ガイロス帝国に対する反乱を起こしているからだ。


 第一次大陸間戦争では、秘密裏にゼネバス軍やフラース軍から軍事顧問が派遣された。


 第一次大陸間戦争・後期でも、ガイロス帝国に対する反乱で、大規模な挙兵を行った。


 ガイロス側は、ユクルース共和国をガイロスを構成する一地域と見なしている。


 しかし、ユクルース側は自分たちを独立した民族と考える。



 そして、彼等は常に支配者だった、ガイロス側を憎んでいる。



 幾度となく戦禍巻き込まれたり、作物の収奪が強制的に行われた。


 さらに、反抗すれば秘密警察が辺境へと、ユクルース人を強制労働に連れて行ったからだ。



 こう言った過去の歴史が、ユクルース側を、ヘリック共和国が率いる海洋諸国連合に近づけた。



 その結果が、これである。



 ハリキュス奥部にある複数の病院、ここでは医師や看護師たちが、てんやわんやで走り回る。


  次々と、衛生兵により運ばれてくる重傷者たちを看なければ成らぬからだ。 



  ユクルース軍兵士、民間人、それに加え、ガイロス軍兵士までもが担架で運ばれてくる。


  この様子は、SNSやテレビを通じて、世界中に放映される。



 「急げっ! 急げっ!」


 「先生、負傷者ですっ!」 


  男性看護師と女性看護師たちが、車輪付きの担架を押して、廊下を走り抜ける。


  そこに載せられた、子供は白いTシャツを真っ赤に染め、ぐったりと眠っている。



  二人が、両ドアを開ければ、医師たちがユクルース軍兵士の治療に専念している姿が見えた。



「よし、こっちの端に連れてきてくれっ!」


 現場の医師たちは、敵味方なく、一人でも命を救おうとメスを握り、包帯を手に取る。


 また、この報道が成された理由は、病院がガイロス側から攻撃されないためである。



 ガイロス軍兵士も、治療されているとなれば、爆撃や砲撃から病院を守れると思ったからだ。


 これを見た、ネットユーザーは歓喜した。



『ガイロス兵も治療しているなら、的にされないで済む』


『これは、ナイスなアイデアだっ!』


『味方兵士も治療されているなら爆撃されないだろう』


 ユクルース側の策略を称賛するネットユーザー達は、SNSやネット記事で、コメントを連投した。 


 こうして、病院は中立地帯のようになり、比較的に安全な場所になるかと思われた。



 だが、不幸な事に、ユクルース側の思惑は外れてしまう。



「ぐわああっ!」


「きゃああっ!?」


 突如、病院に砲弾の雨が降り注ぎ、建物を丸ごと破壊してしまった。


 ガイロス軍では、捕虜や人質は裏切り者と見なす風潮がある。


 テロリストが占拠した、劇場立て籠り事件でも、致死性の毒ガスを使ったくらいだ。



 さらに、ガイロス軍の蛮行は続く。



 併設されていた、病棟は民間人の避難所として使われていた。


 しかし、ここにも大量のサーモバリック弾が降り注ぎ、辺り一帯を焼け跡にしてしまった。


 これらの虐殺行為は、各マスメディア媒体を通じて、世界中から非難される事となる。



『ガイロス軍の行為は違法だ、恥を知れ』


『ペガノフの奴を、断頭台に送れ』


『一般人まで殺害するガイロス兵は、盗賊と変わらない』


『おぞましい…………まるで、獣の行為だ』


 ネットや新聞などを通じて、この虐殺行為は世界中に配信&拡散された。


 世界各地では、ガイロス大使館に対する抗議デモや小型ゾイドによる突撃も試みられた。


 葦島では、ガイロス大使館の正門に、モルガが突っ込んできた。


 ポラレードでは、ガイロス大使の顔にデモ隊が、トマトをぶつけた。



 さらに、海洋諸国連合は、ユクルース軍に対する軍事支援を決定した。


 また、世界中から様々な人種による義勇兵が集まってくるのだった。