競馬シーン2003・ヒヨシマル、怒涛の天下取り | 競馬ロマン主義

競馬シーン2003・ヒヨシマル、怒涛の天下取り

二度目の敗北から12冠制覇まで

故郷の三石で夏休みをたっぷり取り、領家厩舎に帰厩したヒヨシマル。しかし、調教を再開するも、なかなか馬体が搾れない。そこで、太目一叩きの腹づもりで、京都大賞典への出走を決めた。

ここに、一頭の同門同期のライバルが、てぐすね引いて待ち構えていた。ハッスルパンチである。ヒヨシマルの皐月賞では、5馬身差の2着に敗れるなど、大きく水をあけられていた。しかし、この年は、夏競馬の最高峰・高松宮杯を制し、その後も着々と調教を積んで、最高の仕上がり具合でデブデブのヒヨシマルを迎え撃つチャンスを迎えたのだった。

レースは、終始ハッスルパンチがリードし、半馬身差ながらヒヨシマルを完封して勝利。ヒヨシマルは、ただハッスルパンチの後をくっついていく感じの凡走だった。ハッスルパンチは、フルパワーで本調子でない同期の大立者を下し、何とか一泡噴かせることには成功したのだった。

だが、結局本番で笑ったのはヒヨシマル。一叩きでスッキリ馬体が搾れて、見事、アカサカフリーに5馬身差の圧勝。天皇賞春秋連覇を果たした。ハッスルパンチは、前哨戦で目一杯に仕上げてしまったツケが回り、5着敗退。再びヒヨシマルに水をあけられた。

ヒヨシマルはその後、前年勝ったジャパンカップと有馬記念には行かず、マイルCSとスプリンターズSに参戦し、前代未聞の12冠制覇(ワンダースクラウン)を目指す、と発表。世間を騒がせた。

その通りの路線を進み、まず、マイルCSで、ヘイザントラベラーに3馬身差つけ、優勝。朝日杯から数えて11冠目。あと一冠。最後の戦い、スプリンターズSに臨む。さすがにここは距離が短過ぎると見られていた。マイルCSで負けたヘイザントラベラーが必死に食い下がる。しかし、ヒヨシマルは本当に強かった。地味に2馬身差ながらも、勝利。ここに、牡馬が出られる12のGIレース全てに勝利するという、空前絶後の快挙、ワンダースクラウンが達成されたのだ。年間GI6勝も史上唯一のものとなった。そして、その戦いぶりは、万能の神を思わせた。「天来の神馬」―ついに、ヒヨシマルを神格化するニックネームが定着した。それまでは、西の若大将的なイメージも強かったのだ。栄光のワンダースクラウンと、神の称号を得て、2敗は記録したものの、なお28戦連続連対記録は継続し、ヒヨシマルはこの年の競馬を納めた。