うちには山のように文庫本が積まれている。
小さな書棚に入りきれなくなった文庫本が、縦に横に奥に手前に幾重にも並んでいる。
おかげで棚板は本の重みに耐えきれず、薄っすら笑う口元のように湾曲している。
古本屋で少しでも気にいると、すぐに持ち帰ってしまう性分なのである。
ただ、増えていくスピードと読み進めるスピードが全く比例せず、積読本ばかりが増えていくのであった。
 
ということで、夏の読書強化月間!!
とにかく家に眠っている未読本を消化するために速読にチャレンジしていこうと思います。
 
今回も例に漏れず、とあるきっかけにより選んだ作品はこちら。
「人間失格」太宰治
日本が誇る名作です。
 
最近、この古びた文庫本が好きになったのですが、これは昭和62年に刷られたもの。
紙がいい色してる。色褪せた茶色が何だか沁みます。
あと、今現在の文庫本よりも文字の大きさが少し小さいです。それで読みづらい印象あって取っ付きにくさもあったのかもしれませんね。
ちなみに定価200円となっていました。安い。
 
 
それでは、スタート!

 

 

読み終わりました。

 

今回の記録、

太宰治「人間失格」

《2時間25分11秒》

 


速読にチャレンジと言いつつも、速読の方法を何も知らずに始めてしまったので結局普通に読書しただけでしたね。
だが、このくらいの薄い本であれば2時間半で読めてしまうのは発見でした。
もっと鍛えて読む速さと読む力をつけたいなあ。
 
 
エクストリーム感想文
【堕落への道、一直線!】
 
えげつないほどの堕落絵巻でしたね。
これが日本一売れている本だというのが、改めてすごい。
出版当時の日本の状況とか、市民の心情とかにあっていたんだろうなあ。
これが現在だったら、大人気作家になったのかは分からないし、本当に時代ってものが表現にとっては大きな要因になるんですね。
 
最後に、主人公葉蔵が悪友の堀木に「これ以上は、世間が、ゆるさないからな」と言われた後の以下の文章が印象深かったので紹介して終わります。
 
世間とは、いったい、何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実体があるのでしょう。けれども、何しろ、強く、きびしく、こわいもの、とばかり思ってこれまで生きて来たのですが、しかし、堀木にそう言われて、ふと、
「世間というのは、君じゃないか」
という言葉が、舌の先まで出かかって、堀木を怒らせるのがイヤで、ひっこめました。
(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
(そんな事をすると、世間からひどい目に逢うぞ)
(世間じゃない。あなたでしょう?)
(いまに世間から葬られる)
(世間じゃない。葬るのは、あなたでしょう?)
〜中略〜
そうして、世間というものは、個人ではなかろうかと思いはじめてから、自分は、いままでよりは多少、自分の意志で動く事が出来るようになりました。