気がついた頃には、浅野忠信が好きになっていた。16才である。浅野忠信の出演映画を片っ端からレンタルしては見る日々が始まった。

そんな時に出会った映画が「青春デンデケデケデケ」だった。舞台は1965年の四国の田舎町、ラジオから流れるベンチャーズのロックに雷を打たれた高校生たちが繰り広げる抱腹絶倒のロックと友情と恋の物語である。撮影当時、本当に高校生だった若き日の浅野忠信が出演している。バンドに対して並々ならぬ憧れと夢を抱いていた僕がハマることになるのも必然の映画であった。こうしてこの「青春デンデケデケデケ」は人生で一番好きな映画となった。今見てみても涙が出そうになるぐらい胸が熱くなる僕の青春映画金字塔だ。

その映画を撮った監督こそが、大林宣彦監督である。

 

いくつかの大林監督作品を見てきた。「水の旅人」と「漂流教室」は、ずいぶん昔に既に見ていて強烈なインパクトを幼い僕に残してくれた。「時をかける少女」も「転校生」も、大林監督ならではの独特な演出やカメラワークに痺れた名作だ。「青春デンデケデケデケ」の妄想を実際に映像にしてしまうものや、主人公が語り手となって物語が進んでいく演出など、後のサブカル系映画に多大なる影響を与えたのではないだろうか。

そして大林監督初の商業映画として1977年に撮られた「HOUSE」の衝撃は忘れられないものだった。生き物のような家に少女たちが食べられてしまうというホラー・ファンタジーなのだが、アニメとの合成や、CG、特撮などの映像表現を用いてとてもポップに撮られていて、40年以上経った今見ても十分に楽しめる凄い作品だった。是非とも皆様にも見ていただきたい。

まだまだ見ていない作品もたくさんあるが、大林監督が「同じことは二度としない」と公言している通り、作品ごとに異なる実験をしているらしくて他の作品を見るのも楽しみだ。

 

そして、大林監督といえば「尾道三部作」に代表される尾道というまちが切っても切れない。「尾道三部作」とは、大林監督の故郷でもある広島県尾道を舞台、撮影地として撮られた映画のことだ。大林監督は自分の生まれ育った故郷への恩返しを大切にし、故郷というものをとても大事にしてこられた。僕が「青春デンデケデケデケ」で感じた古き良き田舎の素晴らしさや愛も、その思いが伝わったものだと思う。

余談ではあるが、僕が最初に大林監督を見たのは地元の電力会社のCMだった。自分の出身地でもない地方のローカルCMに出演されていたのだ。そんな縁もあって故郷とのつながりも感じる人になった。どうりで見慣れた風貌な親戚のおじちゃんみたいなイメージを抱いてたんだな。

 

そんな、僕にとって大切なものを教えてくれた映画監督、大林宣彦さんがお亡くなりになった。最近、訃報が続いて悲しいが、大林さんが後世に伝えていこうとしたことをしっかりと学んで受け継いでいきたい。

 

家にいる時間が増えたから、映画でも見ようかな。