たまにいつもとは違う場所に借り出されて仕事をすることがある。いつもと同じ環境から抜け出して仕事をするというのはちょっとした息抜きになるのでとても良い。
今日は電車で20分くらいの距離にある場所へ借り出された。普段は仕事場へ電車で行くことがないのでたまに乗る電車は好きだ。世間は休日だったので通勤ラッシュに巻き込まれることなく乗車できたのは幸いだった。
仕事は単純作業の繰り返しだが、おそらく自分にはその手の作業が向いているようで、普段の僕からは想像できないような超テキパキとした手つきで任務を全うした。
夕方になり定時になったので、さぁ帰ろうとしていると、そこの上司から「お疲れ様、冷蔵庫に***あるから持ってって」と言われた。よく聞き取れなかったが、他の現場に手伝いに行く時など、こういうことはよくある。お礼として褒美を授かるのだ。まぁ長年の経験からして栄養ドリンクとかだろうと思っていた僕に、上司が手渡してきたのは小さいカップ状のものだった。

アイスだ。
あ、あ、アイス。この真冬に!?昨日、雪降ったんだぞ。。。

手にしたアイスを見て、数秒だが立ち尽くしていた僕に、次の瞬間新たな問題が突きつけられることになる。いつもならもらったものはそのまま鞄に入れ、持ち帰り、自分が良いと思った一番良いタイミングでいただくのだ(謎の生活の知恵)。しかし、今回の敵はそう、、アイスだ。
ここがいつもの職場だったらそのままダッシュで家まで帰り、即座に自宅の冷凍庫に保管、のちに自分のアイスに対する欲望のサインが点灯してから美味しくいただいたに違いない。だが、今日はよりにもよって家まで電車で20~30分もかかるのだ。そんなことをしていたら、電車内で溶けたアイスいや、もはや冷たい乳製品とでも言わせてもらおう(何だそれは)を運ぶ謎の人類になってしまう。
いや、待てよ。夏だったら確かにそうなる。冷えた甘い汁物運搬業の男になる。しかし、今の時期は冬だ。まして昨日なんて雪が降ったくらい寒かった。これは、なんとかしていけるんでは?今ならTOKI◯の5人目の新メンバーになれるんじゃないか!そう思えるくらいの、鉄腕DASHよろしくのチャレンジ精神が湧いて出てきた。よし、行こう。一刻一秒を争う問題だ。
そう思い、急いで(きっと鈍行の止まりまくる電車よりも早く筆者比)自分の荷物を取りに控え室へ向かった。

そこで見た風景を僕は忘れない。

そこには美味しそうにアイスを食べる同僚達の姿があった。仕事終わりの一杯を満喫しているのだ。ビールではなくアイスのカップで乾杯しているかのようにさえ見えた。満面の笑みを浮かべて美味しそうにアイスを食べている。
くっそ、こんな誘惑に負けてたまるか。。俺は、俺は、在宅アイス王に、、、俺は、、な

気がつくと手元のアイスは蓋が開けられていた。一緒に手渡された木のスプーン(余談だが木のスプーンが一番美味しくアイスを食えると思う)で、一口目をすくって口に運ぶ。
めちゃくちゃ美味いやんけ。
アイスをもらってからここに至るまでの葛藤とそのアイスに対する愛で、その時の僕は微妙に体温が上がっていたに違いない。手にしていたアイスはカップのふちから徐々に溶け始め、最も美味しい状態になっていた。今日はこのタイミングが正解だった。そう思うことにした。