印象的なタイトルは、知ってる人も多いと思う。
そして著者は、山崎ナオコーラ。
タイトルのみならず、作者までインパクトある名前だ。

存在は知ってるけれど、ずっと手をつけたことがない作品。
そんな作品がたくさんあるが、これもその作品郡のうちの一つだった。


作者が女性だということで、てっきり女性目線で書かれた小説だと思っていたら、なんとその逆だった。
主人公は、美術専門学校に通う19歳のオレ。
そこで講師をしている39歳のユリと出会い、恋とも愛ともつかない関係に浸かっていく。
そしてこの男目線の文章が、あまりにも自然で(というか僕に合う)心地よいのだ。

ユリの可愛さは、読んでいて優しく伝わってくるし、何よりオレのセックスに対する思いの描写が秀逸だ。


ーー寂しいから誰かに触りたいなんて、ばかだ。相手を大切な人に思い、しっかり人間関係を築きながら、愛撫はゆっくり優しく丁寧に、且つ、エッチに、相手の反応を細かく見ながらやるべき。

ーーセックスというのは想像上のものだ。触っているから気持ち良いのではなく、触っていると考えるから気持ち良いのだ。


うなずける。読んでいてストンと胸に落ちてくる、すっぽり心にはまる文章は、なんて気持ち良いんだろう。


そしてラストの花火のシーンも素晴らしかった。何気ない描写がすごく自然で情景が一気に広がった。
角田光代 著『くまちゃん』で感じたような最良の失恋愛小説だった。


最後にとんでもない余談だが、自分の職場にユリと同じように自分よりちょうど20くらい年上の女性がいる。彼女も結婚をしているが、旦那は一回り以上も年上。彼女は若い頃美人だったんだろうなと思わせる雰囲気を纏っていて、聞くと若い頃は俳優の養成所に通っていたこともあるらしい。職場では二人だけのシフトになることも少なくなく、いろんなことを良く話す。映画の話など、盛り上がることも多い。
これは、とんでもない恋の予感???

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ーーこんなにチンプな科白、吐きたくないけれど、「寂しい」「恋人に側にいて欲しい」。まるでノドが渇くように恋人を求めているし、抱き合う人がいないのは砂漠の中央にいるような感覚。確かに穴は空けられていて、これはもしも女の子がいたら埋まるような穴だ。