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又吉直樹さん原作「火花」のドラマ版全10話(450分!)を、後輩と二人で見た。
小説は、慣れ親しんだ街や場所、共感できる出来事、そして又吉さん本人のメッセージにも思える神谷さんの言葉や徳永の思いに、とてもとても痺れた良い作品だったのですが。

今回ドラマ版は、それが映像化されてて、文字から浮き出てくる想像の人物ではなく生身の役者や芸人が演じている。実際に見覚えのある場所がバンバン出てくる。いつかネタ合わせを吉祥寺の井之頭公園でしていた時に、この「火花」の撮影に出くわしたこともあった。
小説よりも、より鮮明に感情に訴えかけてくるものがあった。

最初に映像化の発表がされて出演者が決まった時、少なからず自分の予想や理想との違いに、むむむとなったのも事実だけど、いざドラマを見はじめてみると、そんなこと微塵も感じさせないほどに、出演者の全員が「火花」の登場人物そのものを生きていた。
特に驚いたのは、主人公徳永役の林遣都さん。声もしゃべり方も、雰囲気も、又吉さんそのもので、どんどん又吉さん本人に見えてきた。
神谷役の波岡一喜さんも、山下役の井下好井・好井さんも、大林役のとろサーモン・村田さんも、それはもう素晴らしかった。

僕はいつも主人公には、なかなか感情移入が出来ない。いつも脇役に目がいってしまう。この作品でも、主人公の徳永よりは、相方の山下や、先輩の神谷さんへと共感する部分が多かった。

小説版の時から好きなシーンが、神谷さんが転がり込んで同棲していた女性から振られるシーン。あんなにも強く奔放で生きてきた怪物神谷さんの人間味が溢れてくる場面。誰だって振られたら、悲しいし、ああなる。神谷さんの弱さは、なんだか見ていて愛しくなるようなものがあった。そして、勃起。(詳しくは本編をご参照ください)

僕みたいな、まったく売れていない芸人が見るのと、スパークスのように世間的にはまだ名は知れてないが業界的には売れている芸人が見るのとでは、感じ方がまったく違うであろうライブやテレビ、そして舞台の裏側のシーン。自分がまだ本物のその場所を知らないでいることを悔しく思った。この作品を本当の意味で共感できている芸人の方々が少し羨ましく思った。

最後のライブで漫才をやるシーンは、やばい。やっぱり見てて鳥肌の立つシーンだった。漫才のシーンはずっと鳥肌がおさまらなかった。
冒頭からスパークス二人泣いてるし、何より山下さん役の好井さんの涙がやばい。演技の涙じゃなく、自然に流れてきた本物の涙だと思えた。正直な話、このドラマの中で好井さんが主役なんじゃないかってぐらい自分の中では目立つし、一番印象深い人物だった。その思いもあってか、好井さんの涙は、やばかった。


神谷さんのラストの変貌っぷりが衝撃的なシーン。まさに神谷さんは、悲しき怪物だ。
純粋すぎるし、不器用すぎるけど、とてつもないパワーを持った、怪物の赤ちゃんみたいな人なんだなと思った。
ここでの男泣きにも、痺れるものがあった。

最終話は、散々感動させられるし、泣きそうにされたが。
でもやっぱり最後の神谷さんが素っ裸で踊り回るシーンは、笑わずにはいられなかった。

なんだこのラスト。
又吉さんの作り出した結末は、今まで見たどの作品とも違う異質なものであり、それは小説だけじゃなくドラマでも威力が衰えることはなかった。


奇しくも、劇中の徳永と神谷のような先輩と後輩の二人で、全話を二夜に渡って一気見した。
芸歴も原作と近い、5年差の、今年養成所に入ったばかりの後輩。(奴はフリー時代の芸歴も計算に入れたがるので、その年数にツッコミを入れてくるかもしれんが)
劇中の二人とは、天と地との差があるような僕ら(後輩は今後どうなるかわからんが)だったが、とにかく僕はこの後輩がいてくれて良かったと本当に思っている。この後輩がいなかったら、今こうやって「火花」についてブログを書くこともなかっただろう。そのぐらい、大切な存在である。今ここで、感謝の気持ちを伝えたい。ありがとう。
お前のおかげで「火花」見れたわ。Netflixに加入している後輩に僕は頭が上がらない思いであります。


ずっと後輩の副音声(笑い声と独り言)を聞きながら、ドラマを見ていたのですが、最終話の終盤も終盤に差し掛かる場面で「モテキみたいっすね」と副音声が聞こえてきた時は、「ああ、こいつは漫才に恋をしているんだな」と思った僕であった。


あーーーー、DVD化したら絶対買うやん。文庫本かも早くして欲しいやん。
とにかく最 to the 高でした。

P.S.
又吉さんのピースの前のコンビの名前が「線香花火」というのですが、それと「火花」っていうタイトルの関係も、なんだか深いものがあるなーとしみじみ思ったのであります。

追記:
神谷さんが徳永に、自分の伝記を書けって言った気持ち。こんな僕ですが、すごく共感できる気持ちでした。もう何年も前から自伝を書きたいという思いと、それの種になるような様々な出来事があるんですが、一向に文章力が追いついてこないので、一体いつになるのやらと思っている。
めちゃくちゃ文才のある後輩が現れたら、命令するか。