デューク、そう聞いてどんな人物を思い浮かべるだろうか。
デューク更家。黒いスポーツウェアに身を包み、天を射抜くように両手を突き上げ、身体を左右にクネクネさせながら歩いていた人だ。
クネクネクネクネ、クネ&クネ、クネfeat.クネ・・・ハッ!

気がつくと僕は歩いていた。※
深夜の真っ暗な道を、ただひたすらに。クネクネしていたわけではないけど、もくもくと歩いていた。
歩いているのには理由があった。「そこに山があったから」大体の登山家は山を登る理由を聞かれて、そう答えるのかもしれない。だが、僕は登山家ではないので「そこに道があったから」歩いていたのではない。むしろ「帰る家がなかったから」なのである。プライバシー保護のため、細かい話はなしにするが、とにかく帰る家が無かった。
そんな折、僕の唯一の仲良しの同期であるほっとライスの顔が浮かぶ。しかし終電はとうに無くなっていて、電車で行こうにも彼らの家には行けない。しかし家もない。漫画喫茶に泊まるという手もあったのだが、如何せん金も無い。同情するなら金をくれ!そう、僕は今まさに、家なき子なのだ。7キロ以上離れたほっとライス亭まで歩くこと決定。

※Repeat
深夜の真っ暗な道は、さすがに1人だと怖い。一応、スマフォ(スマイルフォレスト…笑顔の森などではなく、スマートフォンと呼ばれる現代社会の最先端技術を駆使した機器のこと)で、道を調べてナビしながら歩いていたものの、最短ルートだからか暗く裏道的な、奥の細い道が多い。「月日は百代の過客にして…」と僕が松尾芭蕉ならば、彼のヒット作『奥の細道』よろしく、道中で俳句を交えながら、楽しく風流に歩いていたことだろう。
《真夜中の 一人寂しく ギブ散歩》
オレ芭蕉じゃねーしっ!しっ!しっ!しっ・・・(エコー)

※Repeat
暗いし、やっぱり怖い。持ってきたiPodで落語を聴くことにした。落語家さんの話を聞きながら、暗い夜道を歩く。しかし、歩けども歩けども、まだまだ先は遠い。うーん、こわい。静まり返った閑静な住宅街、暗い森、まんじゅうだらけの道・・・酒饅頭、温泉饅頭、蕎麦饅頭、栗饅頭、赤饅頭、白饅頭、葬式饅頭、肉饅頭色々。
「うわ、まんじゅうだ。まんじゅうが一杯だ!まんじゅう、こわい!」
…いかんいかん、落語と現実とがごっちゃになってしまった。危うく、「お茶が1番こわい」と最後のサゲまで言ってしまうところだった。
とにかく今はまんじゅうのことより、御飯。目指せほっとライス亭なのである。ほっとライス亭って落語の一門みたいだな。

歩いて歩いて歩いて、何とか無事にほっとライス亭に着いた僕は、とうのほっとライス達が泥酔で眠る家に潜入し、何事もなかったかのように眠るのであった。
ありがとう、ほっとライス亭樹理亞&ほっとライス亭貧乳ロシアンルーレット。


あくる朝、当然のように家路を辿ることになったのだが、結局また歩いて帰りました。
往復15キロ、多分バカだなと思いながら、またもくもくと歩いて。
昨日の恐怖とはまた違った変な違和感を抱きながら。
何か、見えないところから命を狙われているような…

デューク…東郷?ゴルゴ13?