走る東北本線、得体の知れない動物を轢いた。今年の初雪は月山道のトンネルの手前で、その瞬間に運転手が流したオアシスは夜明けに全く期待していなかった僕の心臓を蹴り上げて、『ずっと無理しなきゃダメなんだよバカ。』とだけ言ってどっかに消えた。
夏ぶりに地元に帰ってきて、ささやかな思い出とどうしようもない今の自分の背丈を比べていると変わっていないことなんてないことに気付く。だから比べるのは飽きちゃうのだろうか。いつだったか通った道、ここで誰かに告白したとか、ここで0点のテスト用紙を破り捨てたとかは無いんだけれど、どうしてだろう、明らかに思い出より早いスピードで懐かしい匂いが全身を駆け巡る。僕はこの街に生きていたらしい。
港座って場所は元々映画館だったみたいで座席が全部それのイスだ。外と温度が変わらない受付エリア。やけに大きいステージ。バスドラムのリバーブ。GoPro。タバコ。ゴミ箱。久しぶりの挨拶。中指。ソファ。豪雨。趣旨や経緯もよく分からないまま出演を了承してしまったことを深く反省し、今日出来ることを全力でやろうという答えが出るまでにトイレに8回くらい行っただろう。その度に鏡を見たけどオレ、笑ってねえ。今日だけは絶対やるって決めてたんだ。前回も、前々回も、ゆっくり走れのライブでメンバーにはクソみたいな思いをさせちゃったから、今回は俺一人で立ち向かえる絶好のチャンスなんだ。ライブを、しなきゃダメなんだ。立ち向かえよ。行け。行け行け行け行け。イベントが始まって一発目に出たギターの音を聴いた後に、音楽が始まったことに気付く。僕は既に遅れている。この遅れを違うルートでショートカット出来ないかと行った喫茶店で久しぶりに涙が出た。立ち向かえないことに、楽しめないことに、これでいいと思えないことに、これでいいと思えないってことを言えばいいと思ってることに、正しく悲しめたんだ。すごく僕の中では純粋な涙だったと思う。すぐにまた悪魔がやってくることは分かってたからその涙を無くさないように、握りつぶさないように、そっと掌に収めた。そして僕が歌うべき場所がある方向に歩き出した。着いた場所は目的地とは違ったけど、なんとなく、面白かった。反吐が出た。大声を出した。嫌いな人が増えた。好きな人が減った。好きな人が増えた。嫌いな人が増えた。お腹が減った。笑いたかった。
終わった後に外に出て打たれた雨が激し過ぎて笑ってしまった。
これじゃあコメディじゃねーか
なあ、誰かツッコめよ
いい加減にしろ、ってさあ
そうしたら君は笑ってくれるのかな
