西へ | Life With Giulietta, (古い車と暮らすといふこと)

西へ

先の日曜日は『たまには息抜きでもしてきたら』
との嫁様の勧めに甘えて嬢を存分に走らせたのでした
 
行先は前の晩まで‥
いや、本当のところは当日の朝走り出してもまだ決めかねていたのです
 
目的だけははっきりしていました
この3ヶ月近く中断してしまっていたエンジンのナラシを再開したい
その為にはなるべく距離を走る必要がありました
 
昨年の9月にナラシを始めた時、2100マイルを指し示していたオドメーターは
情けない事に未だ4180マイルにしか達しておらず当日の回転上限は5000rpm
 
でも5000まで使えるのなら高速にも上がれるな
暖機しながら漠然とそんなコト考えて
十分に考えのまとまらないまま、5:30AMもうすっかり明るくなった空の下ゆっくりとガレージを後にしたのです
 
座席後部、荷物スペースにはちょっと考えてから重い工具箱を押し込んだ
行先はまだ決めてないけれど、エンジンにアタリをつけるのが主目的な今回において振り回す事は無いだろう
 
それよりも圧倒的にメンテナンス不足な状態で走るのだから途中で止まる事も十分に考えられる
(汗)
行き倒れる訳にはいかないからには道具の携行は必須
 
同様にジェットボックスとプラグボックスも放り込んだ
最後にジェッティングをしたのは今より外気温が20℃近くも低い頃
多少濃い分にはナラシの最中だから問題ないとしても吹けてくれなくては困る
 
空は薄曇り、
久しぶりの嬢とのランデブーは抜けるような青空の下でとはいかなかったけれど、
梅雨の真っ最中なのだから雨粒落ちてこないだけでも有難いと思わねば
 
しかしこの期に及んでまだ行先は決まらない
暫定的に南に向かいながら今ひとつ煮え切らないのには理由がありました
 
体力の残量がゼロ
燃料計はもうずいぶん前から底をついている事を警告し続け、胸のカラータイマー(古っ)は赤点滅どころか土気色にぼんやりと点いたり消えたり‥
 
とりあえず当日の朝、布団から身体を引き剥がす事には成功した、そして今バケットシートに収まってはいる
けれどもこんな状態で嬢を駆る事が出来るのか?
 
近場をぐるっと一回りするだけでお茶を濁して良しとするか
情けなくもそんな考えがよぎったりもします
 
ところがあら、
ウォームアップランをする嬢の弾むエクゾーストノートと心地好い振動に包まれている内に
気力だけは不思議とみなぎってくるのは腐っても車人の端くれだからなのでしょうか
(苦笑)
 
そこで干からびたタンクの隅々から僅かばかりの体力という名の燃料をかき集めて点火、
転舵してアクアラインのゲートをくぐったのでした
 
東名へ
 
幸いにして時計はまだ6:00AMを回っておらず、昼過ぎには戻るとしても時間は充分
行って帰って400Kmくらいだと、、、成り行きですが沼津あたりで折り返しでしょうか
 
ゲートをくぐり、ポンポンポンと5000シフトでトップギアまでアップしてクルージングに入る
タコメーターはジャスト4000rpm
走行車線を走りながら時折追い越し車線に出て前走車をかわしつつ海ほたる通過、海底トンネルへ突入
 
ギアを落とす事なくジワ~ッとスロットルを開けると間髪入れず針が跳ね上がり、危うく現リミットの5000を超してしまいそうになりますから慌ててスロットルを少し戻す
 
いかにローギアードな嬢といえど、5速5000回転も回していれば流石に走行車線では収まりきれません
スピードメーターはOHこそしたものの、補正の類はしておりませんからいったい何Km/h出ているのか定かではありませんが、
走行車線の車がヒュンヒュン後ろに流れてくところから察するに140から50くらいで走っているのでしょうね
 
5速オーバードライブ5000回転
ここからでもアクセルを踏む足に力を入れるとそのままグイッと加速体勢に移ろうとする素振りを見せるのは←ナラシ中ですからそこから更に踏み込む事は出来ない
 
ファイナルが低すぎて(5.125)オーバードライブである筈のトップギアですらも加速ギアになってしまっているのか、はたまた嬢のエンジンパワーがそれだけ上がっているのか、
海底トンネルも終盤に差し掛かり、緩やかに続く長い登り坂に入っても傾斜など微塵も感じさせずに嬢は突き進む
 
しかし
半密閉空間に反響する嬢の咆哮たるや凄まじいこと
(苦笑)
 
出逢った頃からそのエクゾーストノートは結構ボリュームのあるものでしたが
重い鋳鉄製のマニホールドと鉄管を抜けて来るそれは勇ましいながらも何処か憂いを帯びた線の細さを感じさせるものでありました
 
それが今はどうでしょう
海底の淀んだ大気を切り裂いて突き進む嬢が後方に置き去りにしてくるのはマフラーエンドからの炸裂音
 
“バ行”のそれは巷で言うところの官能的なアルファ・ミュージックとは程遠いけれど濃密、
ひたすら濃密
 
長いトンネルを抜ける頃には朝方のモチベーションの低さなど何処へやら、
すっかりヤル気になった1台と1人がそこにおりました
(笑)
 
西へ‥‥