私が彼女(ここではそう呼ぶ。恋人に使う意味の“彼女”ではないのでご注意を)に出会ったのは、職場だった。



私が20年弱生きてきた人生で初めてだった。






それまでの私はLGBTQに何の偏見もなかった(つもりだ)。学校でLGBTQの教育を受けた世代であったし、お爺ちゃんやお父さん世代より理解はあるつもりだった。






私はLGBTQの人を病気だと思っているが、何もLGBTQだけではない。



人間皆、何かしらの病気を持っていると思っている。






例えば、自己愛性パーソナリティ障害、妄想性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害…。




と名前があって分かりやすいものもあるが、要するに自分のことが好きなナルシスト、誰か(何か)に依存する人、自分のことを過大評価しマウントを取る人、否定しかしない人、消極的で意見が言えない人…。







何でもいい。










病気という言葉は聞こえが悪いので、ここで「個性」と改めよう。




何が言いたいかというと、LGBTQのだろうが何だろうが、人が持っている個性の一部に過ぎないということ。







私自身、ScPDであるし、鬱病を持っている(本当に〇〇病なんてついてたら本当に病人じゃないか笑)。





これも個性。





「そんな感じで皆んな色々個性あるよね」(漫画のヒロアカみたいな感じ)という受け取り方が私の考えであるということを前提に、今から本題に入るとする。






とても良い人だった。


年は大体一回りくらい年上で、見た目は日本人離れした綺麗な顔立ちで、ただ体つきがイカついくらいの、とても優しい人だった。




職場の中では私が1番良くしてもらっていて、なんだかお姉ちゃん(…というかほぼお母さん)が出来たみたいで面白かった。






彼女には住む所がなかった。




家庭で色々あって飛び出してきたのか、理由は知らないがとにかく家がなかった。

だけど、それを知ったのは出会ってから数ヶ月経った後だった。

毎日大きな荷物を持っていたので、変な人だなとは思っていたし、風呂に入っていないようだったがまさか家がないことまでは知らなかった。


それまでの数ヶ月、どこで寝泊まりしていたかは定かではないが、時は冬真っ只中。


ある寒い冬の夜、泊めて欲しいと頼まれた。

多少の潔癖持ちの私は、人を家にあげるのが得意ではなかったが、“もし自分が彼女の立場だったら”と考えたら泊めるしかなかった。

私は快く彼女を家にあげた。




その日以降、何回か泊まりに来る事があったが毎日来る訳ではなかった。




私はふと疑問に思った。





私の家に泊まっていない日は野宿しているのではないか。








彼女は、非常に気を遣いやすい性格で、責任感が強くやプライドも高かったので、「もしかして気を遣って今日も泊めて欲しいと言えないのではないか」と思った。






冬の外は寒い。




同じ職場で働いているから風呂にも入って欲しいという気持ちもあったが、正直、私は彼女にお世話になっていたので、お返しもしたかった。



営業の酒で潰れてしまった時には連れて帰ってくれたり、まだ酒耐性のない私が吐いてしまった時には後始末もしてくれた。嫌なことをさせてしまってばかりで申し訳なかった。










----気づくと私は布団のセットをネットで注文し、いつでも泊まりに来なよ、と声をかけていた。









彼女が家に泊まるようになった。



プライドの高い私は、誰にもすっぴんを見せたくないのだが、彼女には見せるくらい心を開いていた。




とは言え、出会って数ヶ月の赤の他人。何があるか分からないので、貴重品やお金は盗まれぬよう細心の注意を払いながら生活していた。






だがこの生活は長く続くことはなかった。





人と暮らすことに慣れていない私のストレスが最頂点に達していたのである。





家にいても職場にしてもいる彼女。




至極当然の事なのだが、助けてあげたい一心だったので、一人の時間がなくなるという深いことまで考えていなかった。





干渉されるのが好きではない私は、世話好きでお節介焼きの彼女に正直うんざりしていた。



私がそう思っていた頃、彼女は酒に飲まれるようになっていた。



結果彼女は数ヶ月にアル中になるのだが、私がこの時、彼女に寄り添っていたら違った今があるかもしれない。




最終的に1週間にも満たないくらいの彼女の居候生活は終わりを迎えた。




彼女に家が見つかったのである。






居候をして迷惑をかけて申し訳ない、とずっと家を探していたが中々見つけるのに苦戦していたらしい。







それからそれぞれの家で暮らすことになるのだが、彼女に対して恐怖心を覚えることになるなんて、この時の私はまだ知らない。----





数日経って、お互いの生活も安定してきた頃。

私が体調を崩して1週間くらい寝込んだ時があった。



飲み物や風邪の時に食べ易いゼリーなんかを買ってわざわざ届けにきてくれた。

わざわざこんな事まで手を焼いてくれるのは職場で彼女しかいなかったので、とても有り難かった。


ドアノブに袋をかけて、ピンポーン「ここに置いとくねー」くらいで良かった。


しかし怖い事が起きた。







ピンポーン…








ピンポーン…








ピンポンピンポーン…










ピンポンピンポンピンポーン…














ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピンポーン…








30分くらい続いた。






直接出るのが何だか怖くなってしまって、ラインで「怖いので直接出れません。ドアノブにかけておいてください。」とだけ返した。





すぐ出れば良いじゃん、と思うかもしれない。

体を起こすのもしんどいくらいとても出られる体調じゃなかったのもあるが、実はこの件以前にも似たようなことをされていて彼女には少し恐怖を感じていた。





ある日の夜、私が外出しようと家のドアを開けると、目の前に彼女がいたこともあった。




またある日突然、ピンポーン…、ピンポーン、ピンポーン、と数分鳴らしたのち、




ガチャガチャ…







ガチャガチャガチャガチャ……







と、ドアノブが壊れる勢いで押しかけてくる事が多々あったのだ。








今はもう彼女は職場を辞めていて、連絡先も削除したので会うことはないが、この事をきっかけに私は普通のインターホンでさえ怖くて出られなくなってしまった。



勿論、彼女という人自身に問題があったのは理解しているが。

酒飲みのオカマも怖いので、出来ればもう出会わない人生を送りたい。