無等山。全羅南道・光州市東方にそびえる 1187m。ツツジの名所。百済時代には

「無等山歌」に歌われたが、歌詞は伝わっていない。©韓国国立公園公団

 

 

 

 

 

 

 


 6月3日投票日に向けて選挙運動期間中の韓国・大統領選挙。最有力候補の「共に民主党」李在明氏は、「帝王のように強大」と言われる大統領の権限を自ら弱める憲法改正を公約した。

 

 はたして、「再独裁化」を防ぐ効果はあるのだろうか?『ハンギョレ新聞』から。

 

 

 

ソウル・清渓川で大統領選挙の第一声をあげる李在明候補。©聯合ニュース。

 

 

 

 

韓国最大野党の李候補

「再任可能な任期4年の大統領制・決選投票」

の改憲構想発表

 

大統領の権限縮小する方向へ…

「拒否権を制限すべき」 来年の地方選挙または

2028年の総選挙での国民投票を提案

 

2025年5月19日 .

 

 

 

青瓦台。ソウル市街の北辺にあり、もと朝鮮総督官邸があり、李承晩・朴正熙・

全斗煥時代には総督官邸の建物がそのまま使われた。盧泰愚政権の 1991年に

現在の建物が建てられ、文在寅政権の 2022年まで大統領府が置かれた。

「天子は南面して統治す」の伝統を体し、まさに「帝王大統領」の象徴だった。

 


 韓国最大野党「共に民主党」の李在明〔イ・ジェミョン〕大統領選候補が18日「早ければ来年の地方選挙、遅くとも2028年の総選挙で、憲法改正に対する国民の意思を問いたい」と述べた。

 候補は、光州
〔カンジュ〕5・18民主化運動 45年を迎えたこの日、任期 4年で再任可能な大統領制(現在は1期限りの任期 5年の大統領制度)、大統領選挙における決選投票、首相の国会推薦制など権力構造の改編と、5・18精神の憲法全文への収録を含む改憲公約を発表した。

 候補は「国民投票法を改正して改憲の足場を作り、国会改憲特別委員会を作って、申し上げた事項を一つずつ合意し、新しい改憲を完成させていく」とし、「早ければ 2026年の地方選挙で、遅くとも 2028年の国会議員総選挙で国民の意思を問うことができるだろう」と述べた。

 

 候補が当選して再任可能な任期 4年の大統領制が導入されても、「大統領の任期延長または再任への変更に向けた憲法改正は、その憲法改正が提案された当時の大統領に対しては効力がない」という憲法第128条により、次期大統領は再任できない。

 候補はまた、大統領の権限を一部制限する考えも明らかにした。「正当な理由もなく乱発されてきた大統領の拒否権を制限しなければならない。本人と直系家族の不正腐敗、犯罪と関連した法案なら、基本的に拒否権を行使できないようにすべきだ」とも述べた。

 

 

5月17日、光州広域市光山区の光州女子大学体育館に設けられたクムホ・

タイヤ工場火災被災者避難所を訪れ、避難住民を労わるイ・ジェミョン候補

=共同取材写真//ハンギョレ新聞社。

 

 

 

■「戒厳、24時間以内に国会の承認がなければ

効力を失うようにすべき」

 


 12・3内乱事態で必要性が大きくなった「非常戒厳」に対する国会の統制権限も強化すると述べた。候補は「大統領が非常命令や戒厳を宣布するためには、事前に国会に通知し承認を得るようにしなければならない」と主張した。また「緊急な場合にも 24時間以内に国会承認を得られなければ、自動的に効力が失われるようにして、『深夜の非常戒厳』が二度と起きないようにしなければならない」と強調した。

 さらに「高位公職者犯罪捜査処、検察庁、警察庁など中立性が欠かせない捜査機関と、放送通信委員会、国家人権委員会のような中立的機関長を任命する際は、必ず国会の同意を受けるようにしなければならない」との考えを示した。候補は、尹錫悦
〔ユン・ソギョル〕政権下で幾度も「政治監査」と指摘され物議を醸した監査院を、国会所属に移管して独立性を与えると約束した。また「これを通じて国会の決算および会計監査機能も強化されるだろう」と述べた。憲法に明示された検察の令状請求権独占規定の廃止も呼びかけた。

 地方分権に関しては「大統領と首相、関係国務委員、自治体の長などが全員参加する憲法機関を新設しなければならない」と明らかにした。国務会議と同等の地位を持つ機関を作ろうということだ。

 

 候補は「新しく開かれる第7共和国、偉大な韓国国民とともに、真の大韓民国を開く」と約束した。

 


オム・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

 

 

 

光州・無等山、証心寺。©韓国観光公社。


 

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 5月20-21日「リアルメーター」の世論調査によれば、主要3候補の支持率は、李在明 48.1%, 金文洙 38.6%, 李俊錫 9.4%で、李在明候補の独走状態が続いています。

 

 しかも、保守勢力のなかから、弾劾罷免された朴槿惠元大統領の支持団体などが雪崩をうって李在明支持に転向しています。李在明候補の当選はほぼ確実でしょう。

 

 しかし他方で、韓国憲法の改正手続は、㋑大統領または国会在籍過半数で改憲案を提議し、㋺国会在籍議員の 2/3 の賛成、㋩国民投票で有権者の過半数の投票、かつ〔白票・無効票を含めた?〕投票者の過半数の賛成を要します。

 

 したがって、李在明氏が次期大統領となりその改憲案が改正手続にかかる可能性はありますが、㋺の国会議員の 2/3 を取るには「共に民主党」と野党諸派の議席数では足りず、保守勢力の少なくとも一部の賛成が必要です。㋩もなかなか厳しいと言えます。

 

 記事によると、李在明氏の改憲案の骨子は、次のようなものです。

 


① 現状は「任期5年、再任禁止」の大統領を、「任期4年、再任可能」とする。

 

② 大統領選挙に「決選投票」を設けて、過半数をとった候補が大統領になるようにする。


③ 現状は大統領が任命している「首相」を、国会の推薦を要することとする。

 

④ 「5・18精神」〔1980年5月18日~の「光州事件」における・軍事独裁政権に対する民主主義抵抗の精神〕の憲法前文への収録。

 

⑤ 国会立法に対する「大統領の拒否権〔再議要求権。国会が 2/3 以上で再可決すれば覆せる〕」を制限する。大統領とその直系家族の不正腐敗・犯罪と関連する法案〔特別検察官による捜査等〕など。

 

⑥ 大統領の「非常戒厳」発令は、国会の事前承認を要する。緊急時の場合も、発令後 24時間以内に国会の承認議決が無ければ「非常戒厳」は失効する。

 

⑦ 高位公職者犯罪捜査処,検察庁,警察庁,放送通信委員会,国家人権委員会,などの任命は、国会の同意を要することにする。

 

⑧ 現状は大統領直属の「監査院」を、国会所属に移管し、独立性を与える。

 

⑨ 「検察の〔逮捕,家宅捜索〕令状請求権独占」規定の廃止。

 

⑩ 大統領,首相,関係閣僚,全地方自治体の首長,からなる機関を創設し、国務会議〔内閣閣議〕と同等の権限を与える。

 

 

 しかし、①②は、かえって大統領の権威・権力を強化することにならないか? ③の国会の「推薦」とはどういう制度かよく解らないが〔単独推薦なら事実上の任命だが、複数推薦して大統領に選ばせるのか?〕、首相が国会に責任を負う制度〔不信任決議権〕がないと効果が薄いのではないか? ⑤も制限が弱い〔大統領夫人の不正を防げない等〕。が、⑥以下は期待できそうです。とくに⑩は、日本でも導入を検討してよいのではないか?

 

 それにしても、これだけ多岐にわたる改正案を、国民投票で一括投票にかけるのは、国民の意思を無視することにならないだろうか? かといって、項目ごと投票では、不揃いになった場合に制度の不整合が生じないか、など悩ましい問題がありそうです。

 

 

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韓国2大政党の大統領候補

「分権型改憲」の約束、

新政権では実現するか

 

李在明候補、権力構造再編に強い意志

民主党「新政権発足すれば改憲案を議論」

金文洙候補「改憲協約を結ぼう」

 

2025年5月20日 .

 

 

 


光化門広場の「世宗」大王像。大規模な政治集会が開かれるこの広場。世宗

は、朝鮮王朝第3代。ハングル文字を創製させたことで知られる。大王は、

李承晩政権が倒れた「4・19革命」から、朴正熙大統領の「10月維新」、

全斗煥の粛軍クーデター、金泳三政権以後の民主化過程まで、現代韓国の

あらゆる政変を見つめてきた。©4travel.jp.

 

 

 韓国の第21代大統領選挙を控え、2大政党の大統領候補が4年任期の再任・重任可能な大統領制度への改憲をそれぞれ約束したことで、2週間後に誕生する新政権で改憲が実現するかに関心が集まっている。

 

 改憲は、これまで多くの大統領選候補が必要性を認めて約束したが、両党の利害関係の不一致で、政権獲得後には実行を伴わない場合が多かった。今回は支持率1位を走る最大野党「共に民主党」の李在明〔イ・ジェミョン〕候補の改憲の意志が強いうえ、野党〔イ候補の「共に民主党」〕も「分権型改憲」が必要だという考えを重ねて示しており、38年前の「87年体制」を清算する可能性も、いつにも増して高いとみられている。

 「共に民主党」中央選挙対策委員会のチョ・スンレ公報団長は19日のブリーフィングで、「改憲に関して、どのような手続きを踏むかは新政権が発足してから国会と協力して設計しなければならない」とし、「任期内に必ず改憲を実現するというイ・ジェミョン候補と民主党の確固たる意志を昨日申し上げた。新政権が発足すれば、各政治勢力の改憲案を持って議論を進めたい」と述べた。

 

 任期4年の再任可能な大統領制度や決選投票制の導入などを盛り込んだ候補の改憲案に対し、与党「国民の力」の金文洙〔キム・ムンス〕候補が18日、「次期大統領の任期短縮および任期4年の重任制の導入」を含む改憲協約を結ぼうと提案したことに対する答弁だ。ひとまず、大統領選挙で国民の選択を受けた後、公約履行の手続きを踏もうという意味だ。


 実際、イ・ジェミョン候補は権力構造改編のための改憲への意志は強いと知られている。次期政権が発足すれば、改憲が主要な議題になる可能性が高いといわれるのもそのためだ。今年4月、ウ・ウォンシク国会議長が「大統領選挙前に改憲案をまとめ、6月3日の大統領選挙で国民投票に付そう」と提案した時〔イ・ジェミョンは、この時点では、「尹前大統領再クーデターの不安を無くすほうが先だ」として、同時改憲には応じなかった〕も、候補は指導部の議員たちに「改憲しなければ歴史的に非難されることになる。韓国の大統領は再評価を受ける機会がないため、就任直後から下り坂を辿ることになる」とし、任期4年の再任制への改憲の必要性を強調したという。内乱の終息に集中してほしいという支持層の世論が強かったため・改憲カードを留保しただけで、任期中の改憲に向けた意志は強いという。

 

 

「国民の力」の金文洙候補と「改革新党」の李俊錫候補が、5月19日午前、

ソウル市庁で開かれた「弱者と同行するソウル討論会」に出席している

=共同取材写真//ハンギョレ新聞社。

 


 問題は、改憲に至る政治的合意が容易ではないことにある。2017年5月に改憲を約束して当選した文在寅〔ムン・ジェイン〕前大統領も、翌年6月の地方選挙で、改憲に向けた国民投票を実施するために国民憲法諮問特別委員会を立ち上げ、任期4年の再任制を含む政府改憲案まで出すなど、改憲に必要な準備を整えたが、当時野党の「国民の力」の反対で改憲定足数(200人)に満たず失敗した。

 

 〔今回、〕「国民の力」が独自の改憲案に入れた「次期大統領の任期を 3年に短縮」〔国会総選挙と大統領選挙の時期を合わせるため、次期大統領だけ任期を1年短縮する〕を改憲交渉の前提条件に掲げた場合、政権に就く可能性が高い「共に民主党」とイ・ジェミョン候補としては、これを受け入れるのは難しい。早くも「国民の力」は、イ・ジェミョン候補の改憲案は「権力を分けることではなく、立法権力を議会の多数党へと集中させるための設計」だ、と攻撃している。

 

 候補はまた、大統領の権限を一部制限する考えも明らかにした。「正当な理由もなく乱発されてきた大統領の拒否権を、制限しなければならない。本人と直系家族の不正腐敗,犯罪と関連した法案なら、基本的に拒否権を行使できないようにすべきだ」とも述べた。

 


オム・ジウォン,キム・ヘジョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

 

 

 

 

 

 

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