韓国の『中央日報』から。同紙は、日本では韓国の「保守系」に分類されていますが、記事内容は、「保守」と「中道」が混じっています。たしかに、企業体そのものは、アメリカの軍産複合体のイデオローグと云われる CSIS や日本の「笹川平和財団」と関係が深い。毎年 CSIS と合同のシンポジウムも開いています。しかし、社長が読者層を組織して一時立ち上げようとした政党は中道志向でした。文在寅政権当時は明らかに中道志向で、保守政党とは一線を画していました。尹錫悦政権になると目に見えて右傾化しましたが、やはり、陰謀論極右には傾いていません。12・3「非常戒厳」以後は、また中道に戻りつつあります。
↓以下の記事は、米国防省,および韓国国家機関経由の情報をまとめたもので、他の韓国マスコミもアクセス可能な情報ですが、『中央日報』はとくに安全保障に関心が強く、記事の構成に独自の優れた洞察が見られます。
2024年11月、ウクライナ戦争への投入を控えて現地適応訓練をする
北朝鮮軍//ウクライナジャーナリスト-テレグラム-中央日報
【韓半島平和ウォッチ】
「経験値」で武装した北朝鮮軍、
クルスク戦場の版図を変えた
2025年4月4日 .
矮小な体格で貧弱という先入観があった。6カ月前、ウクライナ戦争に参戦するためにロシアの地で目撃された北朝鮮軍に対する国内外の第一印象だ。
韓国の当局者や専門家の大半は、現代的な戦争に全く準備ができていない北朝鮮軍の大規模派兵は自殺行為だと評価した。実際、北朝鮮軍がウクライナのドローン攻撃にそのまま露出し、現地適応訓練を経て戦闘に参戦した昨年12月から1カ月間で3000人前後の死傷者が発生したという観測があり、こうした評価は事実と見なされた。捕虜となった北朝鮮兵は、自分たちがどのように前線に送られたのか証言したりもした。
しかし戦争が続くにつれて、北朝鮮軍を軽視してはいけないという警戒の声が高まっている。
◆人間の盾となった北朝鮮軍?
北朝鮮の金正恩国務委員長にとって、ウクライナ戦争参戦は、命運をかけた挑戦だった。ロシアの不満が出てくることも、国際的に笑いの対象になることも考えられたからだ。したがって金正恩の立場では、どの部隊を送るかがジレンマだったはずだ。韓国と対峙している状況で前方の兵力を抜くのは不可能だ。それでも技量が落ちる後方の歩兵師団で兵力を送ることもできなかったため、金正恩が選択したのが暴風軍団と偵察総局所属部隊だ。
昨年10月、北朝鮮軍が初めてロシアに到着して現地適応訓練をした当時、共に戦うロシアは北朝鮮軍を歓迎しなかった。人種的な偏見があり、意思疎通が不可能な状況で、どうやって戦闘ができるのかという指摘だった。一部ではなぜ北朝鮮軍を連れてきたのかという声もあった。北朝鮮軍の脱走や窃盗行為が報道され、北朝鮮軍に対するイメージも最悪だった。それで北朝鮮軍は蔑視の対象だった。
ウクライナ軍の火力に露出しているところでロシア軍は北朝鮮軍を突撃させながら、火力支援をしなかった。こうした状況が繰り返され、朝ロ軍事協力がふらつく姿も捕捉された。
北朝鮮軍は、兵力の一人一人を追って攻撃するウクライナのドローンに対応できなかった。ウクライナ軍は、北朝鮮軍に対するドローン攻撃映像を公開しながら戦果を自慢し、ロシアと北朝鮮の士気を半減させようとした。1月、ウクライナは北朝鮮軍が大規模な死傷者を出しながら戦場から撤収したと述べた。北朝鮮軍は「人間の盾」として捨て駒のような存在であり、北朝鮮の戦争介入は失敗とみられた。
◆「自爆してでも捕虜にはならない」
しかし戦列を整備して戦場に戻ってきた北朝鮮軍の姿は違っていた。2月末、米国のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の首脳会談が破局したのを機に、ロシアはクルスク地域を大々的に攻撃した。「帰ってきた」北朝鮮軍がこの攻勢を主導した。ロシアの火力支援を受けてドローン攻撃を避け、ウクライナ軍の補給路を攻撃して確保するのに北朝鮮軍が率先した。先月10日ごろ、ロシアは核心要衝地のクルスク州スジャを確保した。
この過程で米軍は軍事偵察情報をウクライナに提供しなかった。トランプ大統領が終戦のためにウクライナに圧力を加えるためだった。現代戦は情報戦だが、ウクライナは米国の情報を活用できなかった。
しかし、ロシアの攻勢が「成果」を出したのには、北朝鮮軍の役割が大きかったという分析だ。米国防総省のライダー報道官は「北朝鮮軍は比較的よく訓練されていて有能な戦力」とし「主に歩兵戦力であり、すべての面からみて彼らは能力がある。我々がウクライナの戦場で目撃しているのは、彼らが間違いなく脅威になっているということだ」と話した。米国防総省の評価を聞き流してはいけない。
実際、北朝鮮軍は後退した約1カ月間に部隊を再編成した。以前の戦術を分析してドローンなど先端武器に対抗する「突破口」を模索したという声も、米国防総省の周辺で出ている。
ロシア軍の一部として戦闘に参加したのとは違い、現在はロシアの火力支援を受けながら北朝鮮軍が独自の指揮権で戦闘中であり、ドローン攻撃への対策も用意して被害を大きく減らしたという。無謀に戦場に飛び込んだ北朝鮮軍が現代戦に適応し、進化した姿を見せているのだ。参戦初期の1カ月間に約3000人が被害を受けたが、この2カ月間は激しい戦闘の中でも死傷者は2000人程度にとどまっているという推定も、こうした分析を後押しする。
さらに「命令を完遂する前には死ぬ権利もない」「自爆してでも捕虜にはならない」という兵士の精神戦力も我々が看過してはならない部分だ。我々にはありがたくない結果だが、ウクライナ戦争に参戦した北朝鮮軍の経験は北朝鮮軍全体の戦略戦術を一段階アップグレードするのに活用される可能性が高い。
◆北朝鮮軍に関する情報収集が急がれる
韓国軍は、ドローンボットと有無人複合戦闘を叫びながら未来を準備しているいう。最近の韓米連合演習では四足歩行ロボットに小銃搭載ドローンまで動員しながら無人武器体系の力量を誇示した。しかし、一線の陸軍部隊で実際にドローンを自由に運用できる部隊はない。ウクライナ戦争のように分隊単位でドローンを使用し、弾丸と砲弾の代わりに自爆ドローンを使用するのは、まだ韓国軍には想像しにくいことだ。
我々はその間、優秀な先端科学技術と装備の優位を誇りながら北朝鮮軍を嘲笑ってきた。その一方で韓国哨戒艦「天安」爆沈事件をはじめ北朝鮮軍から攻撃を受ければ予算・人員不足を弁解にするのに忙しかった。
我々が現代戦の現実に背を向ける間、北朝鮮軍は大きな犠牲を覚悟しながらこれを直接経験している。不法な戦争に派兵したという批判と、見返りのために人命を犠牲にするという国際社会の非難の中でも、北朝鮮がウクライナ戦争の経験から速いペースで変化しているのは明らかだ。北朝鮮のウクライナ戦争経験がわが軍にもう一つの火を投げた。革新を拒否すれば敗北しかない。もう韓国軍は、北朝鮮の強まる核の脅威だけでなく、通常兵器の軍事競争でも厳しくことを想定して備えなければいけない。そのためにはウクライナ戦争に参戦した北朝鮮軍の実体を正確に把握して冷静に分析するのが先だ。
ヤン・ウク/峨山政策研究院研究委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
2025年4月5日、北朝鮮労働党機関紙『労働新聞』報道、「金正恩同志が
4月4日、人民軍特殊作戦部隊の訓練基地を訪問し総合訓練を指導した」
金正恩の右:ドローンよけ藁人形で偽装した兵士//ニュース1-中央日報
ウクライナ戦争での「ドローン被害」の教訓か、
金正恩委員長が偽装軍人を激励
2025年4月7日 .
韓国軍の内外では北朝鮮が韓半島(朝鮮半島)状況に合わせてドローン戦対応戦術を発展させる可能性があるという解釈が出ている。韓国軍の合同参謀本部とウクライナ情報当局は1次派兵の北朝鮮軍1万1000人のうち3分の1以上の約4000人が死傷したと把握しているが、その多数がドローン攻撃で犠牲になった。これを受け、北朝鮮軍の将兵が組を作り、一方ではドローンを誘引し、別の一方では小銃で撃墜する方法を考案するなど窮余の策を準備したということが海外メディアを通して公開されたりもした。
北朝鮮メディアでこの日に公開された写真をみると、金正恩委員長は現地指導をする過程で、頭からつま先まで茂みのように偽装した特殊部隊員に触れるなど関心を表した。小銃までも藁などで覆っていて肉眼では周囲と識別できないほどだった。
これはドローン攻撃を避ける目的があるとみられる。特にこうしたカモフラージュ戦略がウクライナの開かれた戦場では大きな効果がないという点を考慮すると、北朝鮮の目的は山岳地が多い韓半島の戦場を想定した対ドローン戦対応にあるとみられる。実際、単に茂みだけを利用した偽装は光学カメラを装着したドローンの目は避けることができるが、熱線観測装備(TOD)装備を装着したウクライナのドローンにはそれほど効果がない。
KAIST(韓国科学技術院)国家未来戦略技術政策研究所研究部のチョ・サングン教授は「北がドローンを避けるための熱遮断機能がある偽装服も導入したかどうかがカギになる」とし「わが軍は、ウクライナ軍のように小隊級まで TOD装着ドローンが普及していないという点でも、北の軍の動きは十分に脅威になる」と指摘した。
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北朝鮮軍のウクライナ派兵が伝えられて以来、あどけない表情の北朝鮮兵士にふりかかった惨状に、涙が止まりませんでした。ことに、「自爆してでも捕虜にはならない」との「精神戦力」とは、第2次大戦までの日本軍の人命浪費精神を確固として継承したものです。「特攻」「玉砕」‥‥日本の播いた毒草の根は深く、軍隊の近代化・戦争の現代化にも芟除 せんじょ されることなく、いよいよはびこっていきます。