2025年4月1日 韓国ソウル特別市鍾路区 憲法裁判所付近。憲法裁が 4日の

弾劾審判決定言渡しを予告したので、警察は、憲法裁から半径100m を

一般人が接近できない「真空状態」とする作業に着手した。©聯合ニュース

 

4日光州市5・18民主広場」では、約2500人の市民が憲法裁・決定宣告の実況放送

を見守っていたが、認容決定が告げられると一斉に歓声を上げた。©聯合ニュース

 

光州市5・18民主広場」で、「尹錫悦罷免」と題された新聞号外を

見る市民。©聯合ニュース

 

 

 

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憲法裁判所で判決理由の

朗読を開始。

「国会の訴追は適法、

12/3非常戒厳は違憲、

『議事堂の人員を

引きずり出せ』

との大統領発言あった、

選管委に侵入は違憲、

国会の戒厳解除決議は、国民

が抵抗したおかげ→大統領の

違憲の重大性を減少しない、

国民の信任に背反する

重大な法違反があった‥‥

主 文  被請求人・

大統領尹錫悦を罷免する」

裁判官全員一致

(11:22宣告)

 

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『【ソウル 聯合ニュース】韓国憲法裁判所は4日、尹錫悦〔ユン・ソンニョル〕大統領の罷免を認める決定を言い渡した。

 文炯培
〔ムン・ヒョンベ〕憲法裁所長権限代行はこの日午前11時22分ごろ、「尹錫悦大統領を罷免する」という弾劾審判の宣告主文を読み上げた。罷免の効力は直ちに発生し、氏は失職した。

 憲法裁は「被請求人(大統領)は軍や警察を動員して国会など憲法機関を毀損し、国民の基本的人権を侵害して憲法守護の義務に背いた」とし、「被請求人を罷免することによって得られる憲法守護の利益は罷免による国家的損失を圧倒するほど大きい」と指摘した。

 尹氏は昨年12月3日に非常戒厳を宣言。同14日に国会で弾劾訴追された。

 憲法裁はこの日午前11時から尹氏の罷免の是非を判断する弾劾審判の宣告を行い、国会の弾劾訴追を裁判官全員一致で認める判断を下した。

 反対意見を表明した裁判官はおらず、一部の裁判官は結論に同意した上で細かい争点についてのみ異なる意見を述べた。

 憲法裁は、昨年12月3日当時は「国家非常事態」ではなかったにもかかわらず、氏が憲法上の要件に反して違法に戒厳を宣言したと見なした。

 国民に対する警告や訴求のための戒厳だったとする氏の主張に対しては、戒厳法が定めた戒厳の目的に当たらないとして受け入れなかった。

 国会議事堂に集まった国会議員らを引きずり出すよう指示し、戒厳解除要求案の採決を妨害しようとした疑惑や、韓国軍防諜司令部を通じて政治家や法曹関係者を逮捕するよう指示したことについても弾劾訴追の理由として認めた。

 弾劾審判の過程で氏側は、国家情報院のホン・ジャンウォン前第1次長と郭種根
〔クヮク・チョングン〕前陸軍特殊戦司令官の証言に対して、信ぴょう性に疑義を唱えたが、決定は、これらも全て事実と認めたものとみられる。

 憲法裁はまた、弾劾審判で「検事」の役割を担う国会の弾劾訴追団が弾劾審判の弁論準備手続きで内乱罪の立証を撤回したことは弾劾訴追理由の変更とは見なせないとし、国会の弾劾訴追は適法な手続きだと判断した。』

 

 

 

4日 憲法裁判所に近いソウル特別市鍾路区安国洞。

弾劾認容決定に喜ぶ市民たち。©聯合ニュース

 

4日 ソウル特別市龍山区漢南洞の大統領公邸前。涙で顔をぐしゃぐしゃ

にして喜ぶ大統領罷免要求集会の参加者たち。©聯合ニュース

 

 

 

〇 韓国の憲法裁判所は 4月1日、昨年 12月に尹錫悦〔ユン・ソンニョル〕大統領が行なった「非常戒厳」宣言,及びその後・軍部隊が国会と選挙管理委に突入した事態を巡り、大統領の罷免の是非を判断する弾劾審判の決定を 4日午前11時に言い渡すと発表した。

 

  12月14日、韓国国会(1院制)で2回目の「大統領弾劾訴追案」採決(無記名投票)が行われ、賛成204,反対85,棄権3,無効8 で可決された。在籍議員全員が投票に参加した。これにより、憲法裁判所で、尹大統領の罷免の是非が審理されていた。

 

〇 当ブログでは、4日午前11時から判決文朗読を実況掲載し、29分44秒に判決主文を翻訳掲載しました。日本のマスコミと、どちらが早かった?

 

〇 宣告後、与党「国民の力」は、決定を受け入れ、国民に謝罪すると声明。最大野党「共に民主党」は、「光の革命をなしとげた偉大な国民の勝利」と表明。尹錫悦氏は、弁護団を通じて、「期待に応えられず、あまりにも残念で申し訳ない。支持・応援してくださった皆様に深く感謝申し上げる。これまで大韓民国のために仕事をすることができ、とても光栄だった。」との談話を発表し、決定を受け入れる姿勢を示した。

 

  他方、1月19日のソウル西部地裁乱入破壊事件にも関与した極右勢力チョン・グヮンフン牧師の自由統一党は、「憲裁の不当判決に立ち向かい、市民不服従闘争を展開」すると声明。

 

〇 憲法裁の慣例では、裁判官全員一致の決定は、先に主文を読み上げてから理由の朗読に移ります。その場合は、ほぼ 11時に速報が出る可能性があります。裁判官の意見が分かれた場合には、理由を読み上げてから最後に主文を言い渡すので、速報は遅れます。

 

  今回は全員一致であったが、慣例を破って理由から読み上げました。

 

〇 弾劾裁判の主な争点は、まず訴訟要件(みたされなければ却下)について ① 国会側は、訴追議決をした後で、訴追理由の一部を変更した(内乱罪を落とした)。それは、訴追を無効としないか。本案については ② 大統領の「非常戒厳」宣言と軍を国会等に差し向けた行為等は、憲法・法律違反か。③ 違反である場合、憲法秩序に逆行しまたは法治主義の精神を損ない国民の信任を裏切ったと言えるほど重大か。です。

 

  今回の決定で憲法裁は、① については、無効としない、と判断。② についても、大統領の宣言は「非常戒厳」の憲法・法律規定に違反しており、重大な憲法違反があったと認定。③ について、軍を国会に突入させて国会議員を「引きずり出せ」と命じ、選管委に令状もなく侵入させるなど、違憲違法の程度は重大で、速やかな事態の収束に至ったのは国民が抵抗したおかげであって氏の行為の重大性を減少しない。氏は国民の信任を裏切ったと判示。

 

〇 弾劾認容決定の宣告により、大統領は即時に失職しました。60日以内に大統領選挙が行なわれますが、投票日は 6月3日が有力視されています。

 

  他方、尹錫悦を被告人とする内乱罪(首魁)裁判の行くえ、再逮捕収監の可否などが、今後は注目されます。加えて、氏が不訴追特権を失ったことから、大統領在任中の数件の汚職事件・職権濫用事件の捜査も本格化すると思われ、また、内乱罪の捜査・逮捕を自ら妨害した特殊公務執行妨害・証拠隠滅に関しても捜査が開始されると見られます。

 

〇 早期大統領選挙の投票先についての世論調査では、最大野党「共に民主党」の李在明〔イ・ジェミョン〕代表が、「非常戒厳」事件以来すべての調査で一位を独占しています。李在明代表は、公職選挙法違反(虚偽事実公表)で起訴され、1審では有罪(公民権停止・立候補資格剥奪)でしたが、3月26日の2審判決では全面無罪となり、検察は上告しましたが、通常の期間(3か月程度)から考えて、予想される大統領選挙投票日までに上告審判決が出ることは無いと見られます。当選して大統領に就任した場合に訴訟が停止するかどうかについては規定がなく、識者の意見は分かれています。

 

〇 4月4日は、国会の弾劾発議から 111日目,憲法裁での弁論終結から 38日目で、先例の盧武鉉〔ノ・ムヒョン〕元大統領(弾劾棄却)、朴槿恵〔パク・クネ〕元大統領(弾劾認容)の審判と比べ・はるかに長い審理期間の理由が取りざたされていた。当初、弾劾認容を求める(また、そういう結果を確信する)野党側は、裁判官全員一致での認容(尹大統領罷免)決定を予想し、さきの2大統領のケースより早く決定が下されるだろうと言っていた。しかし、言渡しが延びるにつれて疑念が生じ、はじめは、まちがいのない決定文とするために苦労しているのだろうと述べていたが、最近では、罷免に反対する裁判官がいてまとまらないのではないか、あるいは、反対意見が多くて認容(罷免)決定を出せないのではないか、など懸念する声が増えていました。

 

  とくに疑念を強めたのは、3月24日憲法裁が、韓悳洙〔ハン・ドクス〕首相・大統領職務代行者に対する弾劾を棄却する決定を下したことです(認容意見1,棄却意見5,却下意見2)。これにより韓悳洙首相は職務に復帰し、現在、韓悳洙氏が大統領職務代行を務めています。

 

  憲法裁判所は本来、9人の裁判官で構成されますが、現在は 8人の裁判官しかいません。大統領を罷免する決定は、6人の裁判官が賛成しなければできません。3人が棄却または却下意見であれば、弾劾認容(罷免)決定は下せないのです。

 

  これに加えて、4月18日には 2人の裁判官が任期切れにより退任するという事情があります。裁判官6名で弾劾裁判の決定を下せるかどうかについては、憲法にも法律にも規定がなく、先例もありません。4月18日までに決定が出なければ、憲法裁は決定を出せなくなるのではないか、とも言われていました。

 

  しかし、日本の感覚からすれば別の感想もあります。そもそも、結審から 30日かそこらで重大事件の判決が出るというのは、日本の感覚では超特急です。「遅れている」どころではない。これ以上短縮したら、いい加減な判断にならないか、とさえ思われます。しかも、この弾劾裁判は、前2回と異なって、被請求人の大統領本人がほとんど全回出席して、信じられないようなウソの弁明(一言でいえば、警告のためのショック療法だった、本気じゃなかった、「なんちゃってクーデター」でした、うんぬん)を繰り返し、証人の一部(かなり多く)も、大統領を恐れて曖昧な証言をする事態が見られました。憲法裁でのかなりの証言が、罷免を求める国会側が提出した証拠(証人たちの警察・検察での供述調書)に反するものになっています。とはいえ、大統領の発言は自己矛盾が多く、証人たちの証言も、それ自体一貫性がありません。これらの証拠を整理して真偽の判断を下すのは、容易な作業ではないと思われるのです。結審後に時間がかかったのはむしろ当然。38日では短かすぎるくらいだ、とも思えます。

 

〇 3月11-13日の韓国ギャラップの世論調査によれば、大統領の弾劾罷免に賛成するとの意見は58%、反対するとの意見は37%だった。他方、憲法裁の決定を「信頼する」との意見は53%、「不信」意見は38%。弾劾賛成者では、憲法裁を信頼する意見が多く、弾劾賛成者の 76%が憲法裁を「信頼する」と答え、「不信」は 17%だった。これにたいし、弾劾反対者のうち・憲法裁を「信頼する」と答えたのは、わずか 21%で、72%は憲法裁を「信頼しない」と答えた。

 

  じつは、この時点までは、政治圏(議員と与野党政治家)では、憲法裁は弾劾を認容するという予想が圧倒的に多かったのです(判決の「予想」に関する世論調査は行われないので、国民の意見はわからない)。ところが、その後、憲法裁の評議(結審後の裁判官による協議)が長引くにつれて棄却・却下の予想が増えています。

 

  これに応じて、棄却・却下を歓迎する与党側では、憲法裁の決定(どんな結果であれ)を受け入れる意見表明が相次いでいる(ただし大統領周辺を除く)のに対し、認容(罷免)を求める野党側では、強硬な意見が表明されるようになっています。3月31日、「共に民主党」李在明代表は、「尹錫悦が復帰するのは第2の戒厳」だとし、「国民が抵抗する時に生じる途方もない混乱と流血事態に、どうして耐えられるか」と述べた。『ハンギョレ』の 26日付けコラムには、「憲法裁が、重大な違憲・違法行為を犯し国民の信任を裏切った大統領を断罪しなかったとしたら、その日で命が尽きるだろう。民主主義に対する裏切り行為だからだ。主権者の一人として、私は尹錫悦の大統領復帰を断固として拒否する!」との意見が掲載されています。

 

  もっとも、韓国法曹界では、弾劾認容を予想する意見が相変わらず圧倒的だといいます。したがって、弾劾棄却→実力抵抗→弾圧→流血事態 といった展開は無いと私は見ています。

 

  それよりも私が心配なのは、このような経緯の延長線上にある次期大統領の政権が、少数無視の多数決主義に向かわないだろうか、それに対する反発から、保守層が陰謀論への依存を強めないか、という点です。

 


 

 

 

 

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