ヴァシーリー・スリコフ 「カスピ海を航行するステンカ・ラージン」
「3日間で戦闘部隊30%失った」
…ウクライナを甘く見たプーチン
『ロシアのウクライナ全面侵攻5日目、ロシアがウクライナを容易にねじ伏せるという予想とは違う戦況に向かっている。ロシアは主要目標とするウクライナの首都キエフ、第2の都市ハリコフ、黒海沿岸の拠点マリウポリをまだ占領していない。
戦争の序盤、ロシアの損失はかなり大きい。韓国「21世紀軍事研究所」のリュ・ソンヨプ研究委員は「ウクライナ国防省の26日の発表によると、ロシアの戦車146台と装甲車706台が破壊された」とし「普通、全体戦力の30-50%ほど被害を受けた部隊を戦闘不能とみる。25-30個大隊戦術団を失ったということ」と述べた。大隊戦術団とは戦車(10台)・装甲車(40台)を中心に砲兵・防空・工兵・通信・医務を集めた大隊規模のロシア軍臨時部隊編成だ。
ロシアは今回の戦争に160個大隊戦術団を動員し、100個を戦闘に投入した。3日間(26日基準)の戦闘で30%を失ったという数値だ。ウクライナが善戦しているということだ。
ロシアは速戦即決で戦争を終える考えだった。ロシア軍が3方面から大規模に侵攻すれば、ゼレンスキー大統領を含むウクライナ政府の指揮体系は瓦解すると仮定した可能性がある。その通りに戦争が進行すれば、5日目に無条件降伏に近い状況で終わった2008年のジョージア戦争と同じ様相になったはずだ。
ロシアが今回の戦争のために動員した15万人の兵力は、ウクライナの領土と人口を考慮すると十分でない。それでウクライナの首都キエフを含む大都市を核心目標に選定したとみられる。
ところが、ゼレンスキー大統領を中心にウクライナ国民は老若男女を問わず銃を握っている。ウクライナ国民の強い戦意はロシアが開戦を決定した時に考慮した「仮定」とは違っていたのだろう。プーチン露大統領の仮定は外れ、速戦即決の成功の可能性は遠ざかっている。
米国はウクライナにジャベリン対戦車ミサイル、スティンガー地対空ミサイルなどを提供し、都心地域を中心に防御するよう助言したとみられる。携帯と操作が容易で、自発的に戦闘に参加する民兵も運用できるというのが、これら武器の長所だ。実際、ウクライナがロシアの戦車と装甲車、ヘリコプターを防ぐのに決定的に寄与している。
ロシアは大隊戦術団という独特の部隊編成で戦闘に投入した。地域紛争介入に最適化された部隊編成だ。大隊戦術団の長所は小規模に戦車、装甲車、砲兵、防空など諸兵協同要素を最大限に含めた点だ。最も大きな短所は整備・補給などを担当する組織の編成が微弱という点だ。
このためロシアは2014年のドンバス紛争で大隊戦術団が敵地深くまで進撃しないよう指示したという米国の報告書がある。ロシア大隊戦術団はウクライナでの長期間作戦を制限せざるを得ない。一定の時間が経過すれば国境の外に待機中の大隊戦術団と交代で投入される可能性がある。』
ロシアは、交代のための部隊を国境の外(ロシア領と、ベロルシア領)で待機させているというのですが、すでに全兵力の8割をウクライナ領内に投入しているとの情報もあります。はたして交代は可能なのでしょうか。戦闘中の部隊の損耗も激しく、あと何週間か、あるいは何日かのうちに、交代しなければならなくなり、十分な交代要員が確保できず、撤退→敗戦という結末になるのではないか? 早くも、ウクライナ勝利の展望が見えてきたようにも思われます。
「タラス・ブーリバ」 1962年アメリカ映画
他方で、ロシア国内の状況は、どうなのでしょうか?
↑『文春』は、コピペできない(させない)仕様になっているので、リンクを押してリンク先で読んでください。必読記事ですよw
『ロシアのウクライナ侵攻4日目を迎える中で、ウクライナ政府軍の捕虜となったロシア軍人の映像が公開された。
公開されたある映像で、ロシア軍捕虜はテープで目隠しされていて軍服を着た姿だった。この捕虜は出生年度や居住地などを聞かれると、イルクーツクから来た2002年生まれの運転兵だと紹介した。あわせて「我々はここがウクライナだとは知らなかった。軍事訓練だと思っていた」とし「ウクライナ侵攻について知らなかった。プーチンにだまされた」と話した。
ウクライナ国防省が公開した別の映像では、降参した別のロシア軍人は「お母さん、私をここから救出してください」とし「私たちはここで民間人を殺している」と話した。
CNNは、実際にロシア軍人の家族も、夫や息子がウクライナへ侵攻しているとは知らなかったとして、論争になっていると報じた。また、ウクライナ侵攻に投入されたロシア軍人の中には、訓練すらまともに受けることができず、装備も十分に与えられていない者が多数含まれている、ともCNNは伝えた。
CNNは26日、ウクライナ国防省の資料を根拠に24日未明にウクライナを侵攻したロシア軍の死傷者数が約800人を記録したと報じた。ウクライナ国防省は、800人の死傷者の他にもロシア軍のタンク30台余りが破壊され、航空機7機とヘリコプター6機も撃墜されたと明らかにした。』
「タラス・ブーリバ」 1962年アメリカ映画
『ロシアのウクライナ侵攻は、第2次世界大戦以降、軍事力ではなく通商と対話を通じた問題解決を主張してきたドイツの外交・安保政策路線を、一夜のうちに180度覆した。今回の侵攻が欧州に及ぼした衝撃のほどが推し量れる。
オラフ・ショルツ首相(63)は27日のドイツ議会での演説で、兵器の現代化に1千億ユーロ(約134兆7690億ウォン)を投じるとともに、空軍の老朽化したトルネード戦闘機の代替機として米国の先端ステルス機F-35を購入することを明らかにした。また、対国内総生産(GDP)比1.3%水準の国防費を2%以上まで引き上げることを約束した。
ショルツ首相はこうした政策を取る理由について「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵攻によって新たな現実を作り出した。この新たな現実は明確な対応を求めている」と述べた。同氏は「プーチンはロシア帝国の建設を望んでいる」とし、ドイツはロシアがNATO加盟国の領土を「一寸」たりとも侵略できないようにすると宣言した。
この日のショルツ首相の発言は、戦後70年あまり続いてきたドイツの外交・安保政策の根幹を覆したものと評価しうる。ドイツは先の戦争を引き起こした「戦犯国」であるとの反省のもと、軍備に対する支出を抑制するなどの慎重な態度を取ってきた。民主的価値を無視する独裁国家や権威主義国家に対しても、強力な制裁よりも、いわゆる「貿易を通じた変化」というドクトリンの適用の方を好んできた。1989年に冷戦が終わり、統一を達成して以降は、このような傾向はさらに強まった。1989年には50万人だった兵力は18万人に、戦車も5000台から300台ほどにまで削減した。今回の戦争が始まるまでは、支援を要請するウクライナに対して5000個の軍用ヘルメットを送るに止まっていたほどだ。
しかし、ロシアの侵攻がすべてを変えた。ベルリンにある「グローバル公共政策研究所」のトーステン・ベナー所長は、ドイツは「プーチンがやったことに衝撃を受けただけではない。プーチンがどんなことをするかについて、我々は過小評価していたという羞恥心と自責の念を抱くようになった」と述べた。
平和主義外交を掲げてきた緑の党のアンナレーナ・ベアボック外相も、ドイツの政策は「180度転換した」と認めた。同氏は「本日ドイツは、外交と安保政策で特に自制力を行使してきたやり方を裏に置いてきた」、「世界が変わったのなら、我々の政策も変わらねばならない」と述べた。
ドイツはこの日夜、ウクライナにスティンガーミサイルなどの兵器を提供する方針も明らかにし、これまでは認めていなかったエストニアとオランダによるドイツ製兵器のウクライナへの供与も認めた。』
冷戦脱却のための軍備縮小から、「小国を守るため」の軍備拡張へ、ドイツの大転換。社会民主党の首相が宣言しただけでなく、「緑の党」が同調していることが私たちを驚かせます。「緑の党」と言ったら、「奇跡の高度成長」をなしとげた戦後西ドイツ世代に対して、戦後処理を中途半端に終わらせた彼らの欺瞞性を激しく告発した世代の象徴のような党だからです。「親と一緒に肉を食べると吐き気がする」「アウシュビッツ以後の世界に詩など書けない」と絶叫した若者たちの党であったはずでした。おそらく日本でも、ドイツの “転換” に対しては、さまざまな意見があるでしょう。
しかし、ウクライナへの武器供与に関しては、転換してよかったと私は思います。それ以外の軍拡は…… ともかくドイツは、かなり反省して、それなりの補償もしてきましたからね。日本も真似して軍拡しようという意見が出てきたら、私は反対です。マネするなら、まず自らが侵略した歴史と事実を、政府がはっきりと認めて、全面的に、微に入り細にわたるまで公表すること。軍拡していいか悪いかは、そのあとの議論です。
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