「奥武蔵グリーンライン」――できた当時は、山の稜線にまで自動車を走らせることはあるまいと、たいへんに興ざめしたものだが、いま行ってみると、それほど異和感がない。ハイキングコースの隣りを自動車が通るのに馴れてしまったせいかもしれないが、自動車道路といっても、ここのは狭いし、古くなったまま放置されている。とにかくほどんど車が通らない。ときどきオートバイのツーリングが駆けてゆくくらいだ。「奥多摩自動車道路」よりずっとよい。
ネットで検索してみると、今年5月まで通行止めになっていたそうだ。けれど、再開通後も、車はほとんど来ない。日本中にハイウェイができた今では、こんな田舎道をドライブする物好きはいないのだろう。むしろ、「山上集落」の多い奥武蔵では、地元の無くてはならぬ動脈として役立っているにちがいない。
「高山不動尊」に今年何度目かの登拝をしたおり、この近くでもっと紅葉の多い山へ行ってみたくなった。地形図で広葉樹マークの多い場所を選んで、「グリーンライン」沿いに計画ルートを立てたのだが、結果的には、紅葉には遅すぎた。モミジもない車道歩きではつまらないので、正規の登山道から外れて、稜線の枯れ葉の山を踏み分けてみた。
なお、今回は2処とも「YAMAP」にアップしたので、正確なヤマ情報を得たい方は、そちらで「ギトン」を探されたい。こちらは“見る山歩き”用。
まずは、今回の「高山不動」参り。西武線西吾野駅から、ぐるっと周回した。
シルエットは行程の標高(左の目盛り)。折れ線は歩行ペース(右の目盛り)。標準の速さを 100% として、区間平均速度で表している。横軸は、歩行距離。
不動尊の参道として人が多く通る北側の尾根路ではなく、今回は南側の登路を利用してみる。こちらは「パノラマコース」という名前がついている。
道標の手前を左に入る↓。右の路のほうがきれいなので行ってしまいそうになるが、そっちへ行くと民家に闖入してしまう。
「パノラマコース」は植林の中の路で、何も見えない。パノラマがあるのはここだけだ↓。「パノラマコース」と名付けたころは幼木だった杉が、大きく成長してしまったのだ。杉の植林に、ホオ、クリ、サカキ、アセビなども混じる。
遠くのギザギザの稜線は、大持山~武甲山の列なりだろうか。もっと奥の山だろうか?
「石地蔵」で参道と合わさり、さらに昇ってゆくと、アカマツの木の間越しに「グリーンライン」の尾根が見える↓。やはり針葉樹の植林が多いが、ところどころ、稜線に紅葉のパッチが見える。この季節に杉やヒノキのなかを歩いていると、色づいた自然林を求めたくなる。
「高山不動堂」に到着。内陣の前に、おなじみの木造仏。おみくじと護摩木。料金は賽銭箱に入れてくれと書いてある。人はいない。簡素そのものだ。所願成就の御礼に来たのだが、高価な謝礼は受け付けない風情だ。おみくじにも、金運などは書いてない。
「高山不動尊 常楽院」は、古くは 36坊を擁する修験道場として隆盛を極めたという。白鳳時代 654年の創建という伝説もあるが、本尊・軍荼利(ぐんだり)明王木像(宝物殿に秘蔵)は平安中期の作と推定されるから、実際の創建はそのころであろう。それにしても古い。
鳥羽法皇の時に、常楽院住職・覚監が京都の醍醐寺三宝院から法流を受け、真言両部神道の修験(山伏)道場となった。徳川家康の加護を受けたが、1830年の火災で一山75棟ことごとく焼失。現在の不動堂は、その後幕末にかけて、地元の棟梁たちによって再建された(⇒:「旅の道しるべ」)
現在は、3坊しかないが、すぐ近傍には「高山小学校」校舎跡があるほどで、近年まで町のような山上集落をなしていたことがわかる。
内陣の前の木造仏↑。地蔵だろうか? 猿のようにも見える。来るたびに気になるが、現地にもネットにも情報は見あたらない。
↓「大イチョウ」は、やっと色づきはじめたばかりだ。
↓カエデもまだ早い。ここは南向き斜面なので、暖かいのだろう。今年 2月に来た時には、もう桜が咲いていた。(⇒:[ヤマレコ]高山不動尊と黒山三滝(1))
不動尊にいたハイカーは、団体も家族連れも皆、がやがやと車道を歩いて下りて行ってしまった。こんな天気のいい日に、もったえない。山路に入って、尾根伝いに下りることにする。
↓分岐点。直進すると、八徳に下りて車道に合流する。左は「虚空蔵山」に登るバリルート(⇒:[ヤマレコ]高山不動尊と黒山三滝(1))。右の尾根通し路へ行く。
樹林のなかの下り道がつづく。ここは、片側ヒノキ林、片側がホオノキ、シデ、イロハカエデ、エンコウカエデ、シラカシ、モミなどの自然林。
志田方面との分岐点を過ぎると、ようやく視界が開けてきた。
大窪集落↓。ここで、高山不動からの下り車道と交差する。
大窪集落をあとにする。もう陽は傾いている。
↓高麗川沿いの国道と家並みが見えてきた。白い建物は、「休暇村 奥武蔵」というリゾートホテル(旧「あじさい館」)。
道路に降りるとちゅう、赤と黄に染まったカエデが輝くようだった。写真にきれいに映らないのが残念だ。
タイムレコード 20211114 [無印は気圧高度]
西吾野駅1035 - 1049道路岐れ(本多川工房)[GPS259m] - 1140「あじさい館」分岐1201 [GPS497m] - 1204石地蔵 - 1220三滝分岐1223 [595m] - 1230高山不動尊不動堂1241 [589m] - 1244「大イチョウ」1248 [567m] - 1308車道岐れ[575m] - 1310八徳分岐1316 [583m] - 1341休憩1414 [499m] - 1445祠1500 [344m] - 1508大窪(車道交差)1514 [279m] - 1543国道出会い1545 - 1609西吾野駅[253m]。