小説・詩ランキング

 

イスラム国ホラサン州(IS-K)がインターネット宣伝メディアに掲載した写真//ハンギョレ新聞社

 

 

 8月26日、カブール空港ゲート付近(ゲートの外)で、自爆と銃撃の多重テロ。米兵13人を含む180人以上が死亡。「イスラム国ホラサン州」が犯行声明。

 

 27日、米軍はアフガニスタン東部ナンガルハル州で「報復」ドローン攻撃、「イスラム国ホラサン州」の幹部2名を殺害したと発表。

 

 29日、米軍、カブール空港附近北側でドローン空襲、自爆テロに向かう「イスラム国ホラサン州」の車両を爆破して、テロを防いだと発表。しかし、民間人10人(うち子供5人乳児2人)が死亡。[テロリストの死体は確認できず。米軍が誤った情報に基いて無関係な市民一家を爆撃した可能性がある]

 

 同日、日米欧100か国・組織が共同声明: 「各国民とアフガニスタン人協力者の出国の安全をタリバン政府が確約した。」 声明は、タリバンが約束を履行するとの「明確な期待を持っている。」

 

 30日、カブール空港に向けて発射されたロケット弾5発を自動防御システムで迎撃したと、米当局(ワシントン)が発表。「イスラム国ホラサン州」が犯行声明。[ISが撃ったのは6発で、1発は市内に落ちた[AP通信]]

 

 同日、タリバン政府、カブール空港に通じるすべての道路を封鎖。米軍の許可したバスのみ通行可。

 

 (空港テロ攻撃と米軍の「報復」の時期・順序などについて、一部誤解して、他の方々のブログにコメントしてしまいました。お詫び申し上げます――ギトン)

 

 

 

 

 

【反タリバン過激派組織「ISホラサン州」とは何者か】――取材・文:黒井文太郎(フライデイ)

 

『8月26日、アフガニスタンのカブール空港の入口付近と近傍のホテルで、爆弾テロが発生。米兵13人を含む70人以上が殺害された。事件後、「ISホラサン州」(ISKPもしくはISIS-K)というイスラム過激派組織が犯行声明の動画を発表した。

 ISホラサン州はもともと2014年にIS幹部と元タリバン幹部が交流する中でコア人脈が誕生し、そこにパキスタン北西部の有力組織「パキスタン・タリバン運動」(TTP)などイスラム過激派諸派から多くの要員が参加して、2015年にアフガニスタン東部でパキスタン国境に位置するナンガルハル州などを拠点に旗揚げした。初代司令官はTTPの元上級幹部で、現在もTTPと関係が深く、他のパキスタン系イスラム武装組織の元構成員も含めてパキスタン系の構成員が多い。もちろんアフガニスタン人構成員も多く、少数だがウズベキスタン人などもいる。

 現在の司令官はシャハブ・ムハジールという人物で、もともとはアフガニスタンとパキスタンにかけて勢力を持つハッカニ・ネットワークの中堅司令官だったとみられるが、詳細は不明だ。

 ISの支部ということで、IS本体と同様に、その主張はかなり過激である。一時はイスラム圏全体でのIS支持運動の盛り上がりもあり、2016年の最盛期には3000~4000人ともみられる兵力を集めた。IS本隊から数十億円の資金が投じられた形跡があり、またIS本隊から数十人の要員がISホラサン州に転じた動きも報じられているが、全体的にはそれでもIS本隊との関係は限定的で、やはりTTP系人脈との関係が大きい。

 過激派「ISホラサン州」はタリバン最高指導者ではなく、ISに忠誠を誓っていることから、旧政権だけでなくタリバンとも対立した。米軍の追撃に加えてタリバンからは切り崩しが行われ、やがて戦闘員の多くがタリバンに転向したために勢力は減退。現在は1500~2000人程度と推定される。

 ただし、勢力圏としては、もはやアフガニスタンにもパキスタンにもいわゆる「聖域」的な場所はなく、完全に、アフガニスタン各地の「地下」に潜伏している。アフガニスタン旧政権、タリバン、パキスタン当局などすべての地域権力と敵対しており、武装グループとしての戦力は小さい。

 また、ISホラサン州は前述したようにタリバンと対立してはいるが、水面下ではタリバンの最強硬派であるハッカニ・ネットワークとは人脈がある。ハッカニ・ネットワークは現在のタリバン指導部の3人の副指導者の1人を領袖とする一大勢力だが、アルカイダとも、さらにはパキスタンの情報機関である「軍統合情報局」(ISI)とも深い関係がある。ISホラサン州はISIとは敵対関係にあるが、ISI管理下のパキスタン国内のイスラム組織諸派に人脈もある。

 こうした世界では、組織同士が敵対関係にあっても、人脈は複雑に絡み合っていて、その深層は外部からはなかなかわからない。そうした水面下の人脈が、ISホラサン州に意外な力を与えるかもしれない。

 いずれにせよ、政変後の混乱でISホラサン州の組織としてテロ活動のモチベーションが上がっていることは想像に難くない。』

 

 

 

 『フライデイ』の↑上の記事では、「ISホラサン州」は、テロ以外の戦闘能力はない少人数の地下組織――だとしています。もしそれだけならば、タリバンを懐柔してアフガニスタンの治安を担当させて、「ISホラサン」を抑え込めば、アフガニスタンも西欧世界もテロの危機を免れることになる。

 

 しかし、そんなにうまくいくだろうか? 鍵を握っているのは、タリバンと「ISホラサン」の“あいだ”にある組織「ハッカニ・ネットワーク」だ。↓次の記事を読むと、そのことがわかる。

 

 

 

 

 

 


イスラム国ホラサン州(IS-K)がインターネット宣伝メディアに掲載した写真//ハンギョレ新聞社

 

 

【ISホラサン州のテロ…タリバン統治、初めて試される】――チョン・ウィギル先任記者(ハンギョレ)

 『「ISホラサン州」は、イスラム主義勢力内でタリバンの最大のライバル勢力であり敵対勢力だ。イラクとシリアでカリフ国家を僭称した最大イスラム主義武装勢力「イスラム国」(IS)が猛威を振るった2015年、アフガンの支部として結成された。ISホラサン州は主にタリバンから離脱した過激な隊員で充員され、アフガンでも最も極端で暴力的なテロ武装集団として言及される。

 当初からアフガン内のタリバンのライバル勢力として発足したISホラサン州は、タリバンがカタールのドーハで米国との平和交渉を推進すると、強く非難した。タリバンが「華麗なホテル」で敵と内通し、ジハード(聖戦)を放棄しているという主張だった。彼らはここ数年間、女子学校や病院を攻撃し、さらに産婦人科病棟まで攻撃して妊婦や看護師を殺した。2019年8月、カブールの結婚式場で自爆テロを行い、63人の命を奪い、昨年11月、カブール大学でも銃撃テロを加えて20人あまりを死亡させた。

 ISホラサン州の根拠地はアフガン東部のパキスタン国境地帯のナンガルハールで、同地域の麻薬密売と関係がある。全盛期だった2016年には武装隊員が3000人にまで達したが、米国とアフガン政府軍の掃討作戦が始まるとともに、タリバンと衝突したことで、現在は500~1000人程度と推算される。

 しかし、ISホラサン州は既存のタリバン隊員の中でも経験豊富な武装隊員で構成されているうえに、非妥協的なジハードを追求する人々だ。国連の報告書によると、2020年6月に新しい指導者としてシャハブ・ムハジルが就任したことで、米国と平和交渉を推進したタリバンの穏健路線への旋回に不満を抱いた隊員の引き抜きがさらに加速したと評価している。

 タリバンとISホラサン州はアフガン東部で直接衝突したが、両勢力の間の連携性が完全に遮断されたわけではない。タリバン内の一分派である「ハッカーニ・ネットワーク」がそのつなぎ目として知られている。ハッカーニ・ネットワークは、タリバン内でも国際的なテロネットワークが強い勢力であり、早くからアルカイダとも緊密な関係を結んでいた。ハッカーニ・ネットワークはタリバンとISホラサン州との間のグレーゾーンとも分析される。

 アジア太平洋財団のテロ分析家サジャン・ゴヘル博士はBBCに対し、「2019年と2021年の間に行われたテロ攻撃の一部はISホラサン州、タリバンのハッカーニ・ネットワーク、パキスタンに基盤を置く他のテロ組織間の協力があった」と指摘した。現在カブールの治安は、ハッカーニ・ネットワークの首長であるハリル・ハッカーニ師が担っている。米国は、懸賞金500万ドルをかけてハッカーニ師を国際テロ分子として指名手配中だ。タリバンがカブールに進攻する過程で、プルチャルキ刑務所から多くの収監者が釈放されたが、その中にはISホラサン州とアルカイダの隊員もいた。

 タリバンにとっては直ちにイスラム主義武装勢力を統制することが急務として浮上した。タリバンは米国とのドーハ平和協定で「アフガンをアルカイダなど国際テロ組織のテロ発進基地として利用できないようにする」と合意した。米軍撤退を引き出した核心である同事案は、タリバンが正常な国家の政権と認められ、戦後の再建に必要な国際社会の支援を引き出す上でもカギとなる。しかし、タリバンがISホラサン州の掃討作戦を強化すれば、内部のハッカーニ・ネットワークやアルカイダなどとの関係にも影響を及ぼすことは明らかだ。これはタリバンの内外で大きな反発と軋轢へとつながる可能性がある。

 〔ISホラサン州によるテロ攻撃以後の〕こうした状況が、むしろ米国とタリバンの間に「共通分母」を見出す契機として作用するという評価も出ている。バイデン大統領が誓った報復はタリバンの協力なしには不可能であり、タリバンもこの機にアルカイダなどとの関係を遮断する大義名分にするという分析だ。これはタリバン指導部の穏健化をさらに促進し、西側との協力の輪を作る契機になり得るという、かなり楽観的な見通しだ。』

 

 

ネットユーザーはタリバン青年の西欧式服装を「タリバンのトレンドファッション」と称して嘲弄する掲示物をSNSに投稿している。

[写真 ツイッター キャプチャー//中央日報]

 

 

 ↑さいごに、「楽観的な見通しだ。」と書いているのですが、記事の内容からは、とても楽観はできないように感じられます。

 

 最近の動きとして、「軟化」「西欧化」しつつあるタリバンから、「それはイスラム原理主義に反する!」「タリバンは裏切り者になった!」と反発する“兵士”と幹部が、「ハッカニ・ネットワーク」へ、さらに「ISホラサン」へと、どんどん移動しているようです。「引き抜き」も行われているらしい。そして、じっさいに空港周辺で検問をしたり、家々を回って外国「内通者」や「反タリバン分子」の摘発をしている「タリバン兵士」は、「ハッカニ・ネットワーク」だというのです。

 

 極端に言えば、「タリバン政府」に陣取って日米欧諸国に「いい顔」をしている幹部だけが軟化した「タリバン」で、彼らの命令は下へは届かない。じっさいに統治の実権を握っているのは、「ハッカニ・ネットワーク」と「ISホラサン」だ!……と見たほうがよいのかもしれません。

 

 今後の情勢は流動的で、予断はできないかもしれませんが、‥タリバンの「確約」は、どこまであてになるのか? 警戒を緩めるわけにはいかないと思います。

 

 前回のリブログ記事で、『置き去りにされた日本人を「ISホラサン」が公開処刑?』とも書きましたが、この予想を取り下げられる状況には、まだなっていません。

 

 まさかの予想がはずれることを、心底願っています。

 

 


 

 

 よかったらギトンのブログへ⇒:
ギトンのあ~いえばこーゆー記

 こちらは自撮り写真帖⇒:
ギトンの Galerie de Tableau

 

 


米軍が置いて行った武器・装備で重武装したタリバン部隊の兵士ら。

[SNS キャプチャー//中央日報]