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モーリシャス。海岸の汚染除去にボランティアで取り組む住民。


 

 




商船三井の「わかしお」は、約4000トンの燃料(重油)を積んでいたとみられている。うち1200トン近くがすでに流出したと、運航会社の商船三井は説明している。

国連の生物多様性条約によると、モーリシャスの海は、魚800種、海洋哺乳類17種、カメ2種を含む1700種の生き物のすみかとなっている。

サンゴ礁、海草、マングローブが、並外れて豊かな海をつくっている。

「これだけ豊かな生物多様性のある海は、もうほとんど地球に残っていない」と、英ブライトン大学で海洋生物学を教えるコリーナ・チョカン博士は言う。

「流出した油は海面でギラギラしているものだけではない。油の一部は水に溶けて、水面下にムースのような層をつくる。さらに海底には分厚い残留物がたまる。つまり、海洋生態系全体が影響を受ける」―――つまり、大部分は除去できない!!

深刻な影響が心配されているものの1つがサンゴ礁だ。多様な生き物が暮らすことから、サンゴ礁は海の熱帯雨林とも呼ばれる。

米海洋大気局によると、海に住む魚の約25%が、健康なサンゴ礁に頼って生きている。

サンゴ礁は海岸を嵐や浸食から守る。モーリシャスの主要産業である観光業にとって、サンゴ礁と海洋生態系は大きな柱だ。

専門家らは、こうした油の流出事故で除去できる油は、最善の努力をしても一般的に10%未満だとしている。(以上、BBC)

 


 


モーリシャス。流出した重油で汚染されたマングローブ林。

 



インド洋のモーリシャス島沖で発生した日本の貨物船の重油流出で、少なくとも10~15キロに及ぶ海岸に油が漂着したことが21日分かった。地元当局者が共同通信の取材に明らかにした。マングローブ林にも大量に流れ着いているという。海上の回収作業はほぼ終わったが海岸では難航。

マングローブ林の作業は難航している。機械や油除去剤を使うのは難しく、効果的な回収方法はないのが現状だ。(以上、共同通信)


 過去の石油流出事故では、1978年、フランス・ブルターニュ沖・大型原油輸送船座礁事故。20万トン超の原油が海中に漏れ出した。軟体動物や甲殻類などの無脊椎動物が何百万匹も死に、鳥類も2万羽が死んだとみられる。カキの養殖場も汚染された。

 2010年メキシコ湾「ディープウォーター・ホライズン」事故では、約40万トンの原油が流出。プランクトンからイルカまで何千種もの生き物が死んだ。事故の影響は現在も続いている。

 2019年、ソロモン諸島沖のサンゴ礁で油の流出が起きた。「流出した油は多くはなく、数百トン程度だった。それでも、サンゴ礁はものすごい被害を受けた」と、海洋生物学者リチャード・スタイナー教授は指摘する。

今回の三井商船の流出量は 1000~1200トン。決して小さな事故ではない。しかも、大洋の沖合ではなく、世界的に貴重なサンゴ礁マングローブ林生態系のすぐそばで起きた(船舶がふつうは近づかない自然保護区に、なぜ入りこんだのか不明だという。「わかしお」は、島に寄港する予定もなく、モーリシャス島に近づいた理由が、よくわからない)。
英語の記事を読んでいる方のほうが、情報が正確⇒:今日の英語表現

 

 日本のマスコミは、「海上の回収作業はほぼ終わった」などと伝えるが、ほっとしてはいけない。むしろこれは、絶望的なニュースだ。「海上では、もはやこれ以上は回収不可能なので断念した。流出量の 90% は、海中・海底に沈んだので、放置するほかないことが決まった」ということなのだ。

 観光立国のモーリシャスが蒙る損害は、致命的かもしれない。生態系への影響は、今後どれだけ続くかもわからない。


 

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